年間130万もの人が亡くなる日本では、膨大な遺品が悩みのタネになることも。最近ではそんな遺品を再生させる「遺品再生ビジネス」が話題になっています。多死社会・日本ではいったいどんなサービスが行われているのでしょうか。
家族の遺品がフィリピンに?
今年10月に放送された「クローズアップ現代+」(NHK)では、遺品の意外な活用アイデアについて特集。番組では一軒家につめこまれた遺品の整理に悩む、とある年配の姉妹が紹介されました。
姉妹が依頼を頼んだ遺品整理業者は、まず遺品を廃棄するものと中古として販売できるものに仕分け。特に母親が大切にしていた和箪笥は高値で取引できると判断され、これらの中古品は急成長をとげるフィリピンのマニラで中古品として販売されます。
実はフィリピンでは、新品より中古の日本製の方が人気があることも明かされました。日本人が長年使ったものなら、丈夫で品質がいいものだという付加価値がつくよう。またフィリピンでは遺品を大切に引き継ぐ文化があるため、よりニーズが拡大しているそうです。姉妹の和箪笥は平均月収が4万6,000円のフィリピンで、約3万1,800円の値段に。他にも絵画が約1,500円といった値段で取引されていました。
この新たな遺品の整理方法に、ネット上では「家族が大切に使ってきたものを、他の人が引き継いで大切に使ってくれるのはすごくありがたいことだよね」「結構衝撃的かも」「他人事じゃないし、とても興味深くて見入っちゃった」といった声が。
専門家によると、家1軒から出る遺品の量は平均3トン。遺品や中古品を再利用するリユース市場の規模は、最新のデータで3.1兆円にのぼることも紹介されています。
映画「アントキノイノチ」にも登場した「遺品整理士」とは?
盛り上がりをみせる"遺品ビジネス"ですが、一方では「高額な料金の請求」「処分予定外のものが処分されてしまう」といったトラブルも増加。そこで注目を集めているのが「遺品整理士」です。
遺品整理士は遺品整理業で働く青年の姿を描いた映画「アントキノイノチ」にも登場。「遺品整理」を行う上で必要な手順や、法規制などの知識を正しく身につけるための資格となっています。また家族に寄り添った"供養"という観点で、遺品を取り扱うための知識を学ぶことも可能。現在は国のガイドラインがない"遺品整理業界"を変えようと、「遺品整理士」の資格所有者へ仕事を優先的に発注するための働きかけもおこなわれています。
大事な家族の思い出がつまった品も多いからこそ、遺品はきちんと整理できるといいですよね。
文/藤江由美