いま、本当にしたいことは何? 心がスッキリすると人生を軌道修正できる/家族を救う片づけ

「今日こそ片づけよう」そう一大決心して部屋の片づけを始める人は多いはず。しかしなかなかスムーズに進まない...。もしかするとあなたが片づけられない理由は、片付け技術ではなく「心」の方にあるのかもしれません。

人気の空間心理カウンセラーが書き下ろした不思議な片づけ物語は、読むだけであなたの心を「片づけられる人」に変えるかも! 可愛い毒舌フェニックスによる「心も片づく魔法」にあなたもかかってみませんか?

※この記事は『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(伊藤 勇司/KADOKAWA)からの抜粋です。

前の記事「自分の心を解き放つ。 素直な言葉が片づけ人生をスタートさせます/家族を救う片づけ(2)」はこちら。

 

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今大切にしたい自分の心が、喜びの未来へ向けての羅針盤になる

「あっ、いけない、もうそろそろ家を出ないと」
 気がつけば、かなりの時間が過ぎていた。
「ピヨちゃん、ごめんね。私今から行かなくちゃならないところがあるの。お留守番できるかな?」

慌ててボランティアの集まりに出かける準備をしながら、ピヨちゃんとの会話で久しぶりに清々していた気持ちがまた沈んでいくのが感じられた。

私は子どもの頃から動物が大好きで、常々不幸な動物を減らす手伝いをしたいと思っていたところ、ふとしたきっかけから猫の保護活動をしている団体の主宰者の人と知り合い、手伝うようになったのが4か月ほど前だったろうか。

事故にあったり虐待される恐れのある野良猫を保護したり、これ以上不幸な子が増えないように避妊去勢手術をして地域猫として面倒を見たり、保健所から引き出した子の里親が見つかるまで世話をしたりと、活動はハードで、かつ理不尽でつらい現実に直面することもあったが、一匹でも多くの子を救えているという実感が私を後押ししてくれていた。

でも、本当に大変なのは、そこに携わる人と人との関わりだった。
ボランティアにはいろいろなタイプの人がいた。団体の主宰者である女性はとにかく猫の幸せが第一という熱い想いを持った人で、自分の寝食も忘れて猫に人生を捧げている。

そして私も含めたスタッフは全員女性で、主婦や働く独身女性、年齢も20代から60代と幅広く、主宰者の彼女の考えに共感した猫好きであることを除けば属性も性格も、またボランティア活動に対する熱量もまったくバラバラだった。

とはいえ真面目で繊細な人が多いので、一つ意見の食い違いが生じるといつの間にか揉めごとになってしまったり、ぶすぶすとくすぶった火種があちらこちらに飛び火して派閥をつくったりと、活動以外の部分で疲れることが多いのが現実だった。

もともとはみな、共通の目的で集まっているはずなのにと思うとやりきれないが、争いに巻き込まれることのないように淡々と活動に参加するのが精いっぱい。
そんな状態なので、最近ではボランティアのことを考えると頭痛がするようになっていた。特に今日は実質的な活動ではなく、猫を保護しているシェルターで2週間に一度行う報告会なので、余計に足取りが重くなる。また何か問題が勃発(ぼっぱつ)しそうだ。

「ユウコ、俺様も一緒に行っていいか?」
暗い顔で物思いにふけっている私を見ながら、ピヨちゃんはそう切り出してきた。
「えっ!? 無理よ。話し合いとはいえ猫がいっぱいいるところでやるんだよ」

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予想外の言葉に驚いた私を気にすることなく、ピヨちゃんはまくし立てる。
「大丈夫、カバンの中に入って隠れてるから!」

確かに、行き帰りは車だし、カバンの中にすっぽり入るし、心で会話ができるだけで、見た目はヒヨコみたいなもの。万が一ほかの人に見られたとしても、ごまかせる。でも、さっきポン太一匹にビビってたくせに、本当に大丈夫なのかな......。
「決まりだね!」
私の心配が聞こえているだろうに、ピヨちゃんは笑顔でそう伝えてきた。

 

「行ってきまーす」
家にいる息子に対して、聞こえるように大きな声でそう言って家を出るが、返事が返ってくる様子はない。それでも今はそんなこともあまり気にならず、いつになく新鮮な気持ちで車に乗り込んだ。

車を出発させた私は、お気に入りの音楽を流し始めた。
「ユウコ、これはなんだ?」
ピヨちゃんが物珍しそうに聞いてくる。
「これはね、歌っていうんだよ。悲しい気持ちも、うれしい気持ちも、いろんな気持ちをメロディーに乗せて表現するのが歌なの。好きな歌を聴いている時は、幸せな気持ちになれるんだよね......」

思い返してみると、私は小さい頃から歌が大好きだった。歌手になるのが夢で、学生時代はバンドを組んでボーカルをやっていたこともある。
「ふーん。じゃあ、ユウコの今の気持ちは歌でどう表せるんだ?」
思わぬ質問に、私はハッとさせられた。

「私の気持ちを歌で表す」。昔はよく考えていたはずなのに、大人になってからの私はそんな発想で音楽を聴いたことがなかったからだ。
ここ最近は特に、日々流されるままに生きているだけで、自分の今の気持ちについて考えることすらなかったかもしれない。
戸惑う私を見ながら、ピヨちゃんは不思議がっている。

「なんで今の自分の気持ちをすぐに表せないんだ? ユウコが困ってる意味がわからないよ! 俺様の今の気持ちは、とってもワクワク! だって、行ったことがない場所に行けるし、どんなところなのか楽しみすぎるよね~!! あ、そうだ、ワクワクする歌を流してよ!」

無邪気に言いたい放題のピヨちゃんに、私は少しイラッとした。
「ちょっとは空気読んでよ! もう! 私が今からの集まりに行きたくないと思っていること知ってるんでしょ! そんな時に、ワクワクする歌なんかリクエストして、おかしいでしょ!」

思わず怒鳴る私に、ピヨちゃんは気にすることなく言葉を返してきた。
「おかしいのは、ユウコの方だ!
自分の気持ちを乗せるのが歌だよね? 俺様はユウコと知らない場所に行けることにワクワクして、今とても楽しい気持ちだからそう言ったんだ!
なのに、なんでその気持ちをおかしいって言われなきゃいけないんだよ!」

そのピヨちゃんの言葉に、私は再びハッとした。
言われてみれば、確かにそうかもしれない。ピヨちゃんは、初めて経験することに対してただワクワクしていただけ。
「今の私の、素直な気持ち、か......」
改めてそれを考えてみると、私は一枚のCDに手を伸ばしていた。

「これが、今の私の気持ちの歌かな。今、一番好きな歌なんだよね」

フェニックス_046_01.jpg私が選んだ歌は、最近観て感動したミュージカル映画のサントラ盤に収録されたものだ。ふだんはつい映画代ももったいないと思ってしまう私が、久しぶりに映画館に観に行き、感動のあまりサントラCDまで買ってしまったのだった。
「これって、ユウコのどういう気持ちを表した歌なんだ?」
ピヨちゃんは音楽を聴きながら、子どものように聞いてくる。
「これはね、私は、私のままで輝けるんだっていう強い気持ちを表した歌なんだよ」
そう話しながら、気がつけば私は歌を口ずさんでいた。

「歌って、いいもんだね!」

口ずさんでいる私を見て、ピヨちゃんもうれしそうに言う。
そう言われると私も次第に気分が上がってきて、ノリノリで歌っているうちに、車はあっという間に目的地へとたどり着く。
「あ、もう着いちゃった。今、いいところだったのになぁ......」

曲が盛り上がっていた最中に着いたことで、少し残念な気持ちになっていた私。それを見て、ピヨちゃんはまた不思議そうに眺めながら、唐突な質問をしてきた。
「おいユウコ、ここに着いてうれしくないのか?」

うれしいわけがない。何を的外れなことをと思っていたら......。
「さっき車の中で、私は、私のままで輝けるんだっていう強い気持ちがあるのが、ユウコの今の気持ちだって言ってたよな。ここは、ユウコが輝ける場所だから来てるんじゃないのか?」

そう言われて、私は言葉を失った。
車の中で歌を歌って、今では私の気持ちはとても晴れやかになっていた。その状態で改めて考えると、私は一体ここへ、何をしに来ているのかがわからなくなっていた。
「ユウコは今、どうしたいんだ?」
ピヨちゃんにそう質問されて出た答えは、即答だった。
「もっと歌を歌いたい気分」
車の中で歌っている間は晴れやかな気持ちでいられたのに、これから行く集まりのことを考えただけで、元通りに落ちてしまう。
「そっか、歌を歌いたいんだな。じゃあ、今から行く集まりで思いっきり歌を歌いなよ! 車の中の時のように、歌いながらユウコの輝きを表現したら楽しいよね」
「そんなこと、真面目な話をしている中でできるわけないでしょ!!」

言いたい放題のピヨちゃんの言葉に、私は瞬発的にツッコミを入れていた。
「なんだよ! じゃあ、どこだったら、それができるんだよ!」
反射的に言い返した私に、ピヨちゃんはプリプリしている。
「えっ、それができる場所は、カラオケ屋さんぐらい、かなぁ......」
思わずそう答えると......、
「じゃあ、今からカラオケ屋ってところに行った方が絶対楽しいよね! 俺様をそこに連れて行け!」
と、ピヨちゃんは目を輝かせて、私にそう言った。
「ボランティアの集まりに行くのをやめて、カラオケ屋に行くって......。みんなに悪いし、ありえない......。でも、そういうのも、面白い、かも......」
理屈で考えたら、良くないことだ。でも、そうした方が私の心が喜ぶことは、間違いないことだった。その時、

「あれ? ユウコさん?」
窓の外に、主宰者の女性の姿があった。ちょうど彼女も着いたところらしく、私の車を見て声をかけてくれたのだった。その姿を見て、とっさに車を降りそうになったが、ピヨちゃんの顔を見て考え直した。
「ごめんなさい、ちょっと急用を思い出したので、今日は帰ります! 来週のお世話当番には必ず来ますから! 本当にごめんなさい!」

こうして私とピヨちゃんは、方向転換して、カラオケ屋さんに向かうことにした。今までの私の常識では、ありえない決断。そしてここから何かが変わり始めていた。

 

 

空間心理カウンセラー・伊藤勇司さんのまとめ&解説】

「悩みの渦」から抜け出す方法とは?

ユウコさんは道中のピヨちゃんとのやり取りの中で、「今の自分の気持ち」に向き合うきっかけが生まれました。そして、その自分の感情を改めて客観視した結果、ボランティアの集まりをドタキャンして、カラオケ屋さんに行くという決断をします。

このユウコさんの突拍子もないとも言える行動の中に、日々の中で抱えているストレスや、悩みの渦から抜け出すためのヒントが隠されています。

部屋が片づかない人を心理学的に見ると、ユウコさんのように人間関係に悩みを持っているケースは少なくありません。そのストレス解消として、衝動的に物を買ったり、本来は必要ではないことにお金を使うようになり、その積み重ねが、片づかない状態を生み出す要因にもなっているのです。ここを踏まえた上で、改めてピヨちゃんと、ユウコさんのやり取りに注目していきましょう。

ユウコさんには、会話を通して「素直な気持ちを言語化している状態」が生まれています。この何げないやり取りを心理学的な角度から見ていくと、「カタルシス効果」が起きていることがわかります。

カタルシス効果とは、心の内に秘めた様々な感情(不安・恐れ・怒り・悲しみ)を、「実際に言葉にして表現することで」、安堵感や安心感を得て、心のバランスが整っていく現象のこと。

ユウコさんはボランティア活動での人間関係に違和感を感じながらも、その心の内を吐き出すことができない状態が続くことでストレスが増大していました。でもピヨちゃんという存在と接し、心で感じていたことを素直に言葉に出すことができたことが、心のバランスを取り戻していくきっかけになっているのです。

片づかない状態をどうにかしようと思っているときほど、片づけることだけに意識が向きやすいものです。そんな時は、心で感じていることを単純に言葉に出すことをするだけでも、心がスッキリし、結果的に片づけなど前に進むための行動を自然に起こしやすい心理状態が生まれます。

ピヨちゃんのように利害関係がない相手がいれば、素直な心の内を吐き出しやすいものですね。そんな相手が見つからない場合は、今の心境に合った歌を歌うだけでも、同じようにカタルシス効果が得られるので、実はカラオケは片づけ心理学的にも、とてもおすすめなのです。

心の内を話すこと、カラオケで歌うことにはカタルシス効果だけでなく、「情動発散」という面からも効果が期待できます。
人は本能的な欲求が抑えられることで脳にストレスがかかると、自律神経に影響が出ます。こうなると心身のバランスを崩したり、ひどい時には病気を引き起こすことにもなるのです。

この自律神経を正常に働かせるためには、日々の中でストレスケアを心がけることが大切です。そのために最も効果的な方法が「情動発散」なのです。ユウコさんのように心の内をピヨちゃんに話したり、カラオケに行ったり、ダンスしたり、思いっきり走ったり、あるいは静かにクラシック音楽を聴いたり、観葉植物を眺めてみたり、瞑想(めいそう)したり、アロマの匂いを嗅ぐだけでも、情動発散の効果が生まれます。

カラオケ屋に行くと決めたユウコさんは、とても清々しく楽しそうな心境になりました。ここですでに、「心が楽になっているという状態が生まれている」ことは明らかです。そしてカラオケ屋に行くと、さらに「快適感情」が拡大されていく。

こんなふうに、些細なことでいいので、心に充実感を味わえている状態をつくることこそが、人生を好転させるための原動力を生み出していくのです。
 

僕は空間心理カウンセラーとして関わる中で、この時のユウコさんのようなシンプルな発想の転換がきっかけで、人生が好転していく事例を数多く見てきました。

ある主婦の方は、「毎年年末の大掃除をちゃんとできなくて、いつも良い年越しができないの」と悩んでいました。
その方に、
「年末に、本当はどうしたいのですか?」
とお聞きすると、
「できれば家族でゆっくり旅行に行きたいです」
とおっしゃいます。
「じゃあ、今年は大掃除をやらないと決めて、家族で旅行に行かれたらどうでしょうか? 悶々としながら年越しするよりも、家族全員で楽しまれたら良いエネルギーで年越しができて、そのぶん年始から頑張ろうと思えると思うのですが、いかがですか?」
とお話しすると、それもそうかもしれないと思われたようで、実際にその年の年末は大掃除をやらずに家族旅行に出かけられました。

すると、その旅行がものすごく楽しかったようで、今までにない年始のスタートができたとご報告いただきました。
また、これには想定外の副産物もあったようです。その方の息子さんは、原因不明の発作を持っていたのですが、それがこの旅行を機にパタリと止まったともご報告いただきました。
結果として家族そろって活力が生まれ、みんなで年始に掃除をやると、あっという間に終わったそうです。
「大掃除は年末に」というのも、あくまでも世間一般の風潮なだけであり、絶対にやらなければならないということではありません

前に進まない時ほど、壮大な結果をつくることを目的に行動しがちになりますが、そんな時こそ、「今、自分が最もいい感情でいるためには?」と、改めて問い直してみることが、現状を好転させる大きなきっかけになったりするのです。

ユウコさんが「カラオケに行く」という単純な行動をしたように、身近で今すぐにやれることの中にこそ、人生をより良い方向に軌道修正するきっかけは隠れているのです。

 

そこで今の心境を客観視できる、こんな質問に答えてみてください。

Q. 今やっていることは、どんな感情に結びついていますか?

(例)●行きたくない集まりに行く → 不安感が増える
   ●音楽を聴く → 楽しい気持ちが生まれる

 

Q. 今すぐできることで、情動発散につながることはなんですか?

(例)●ピヨちゃんに心の内を正直に話す
   ●今の心境に合った大好きな歌を聴く

 

次の記事「取るに足らないような「小さな行動」が大きな変化につながる「偉大な一歩」に!/家族を救う片づけ(4)」はこちら。

 

伊藤 勇司 (いとう・ゆうじ)

片づけ心理研究家。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。引っ越し業で働きながら、心理学を学ぶ中で「部屋と心の相関性」に着目し、現場で見た1000 軒以上の家とそこに住む家族や人との関わりを独自に研究。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008 年に独立。主な著書に『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(KADOKAWA)、『部屋は自分の心を映す鏡でした。』( 日本文芸社)、『片づけは「捨てない」ほうがうまくいく』( 飛鳥新社)、『座敷わらしに好かれる部屋、貧乏神に取りつかれる部屋』(WAVE 出版)、『空間心理カウンセラーの「いいこと」が次々起こる片づけの法則』(三笠書房)等。


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『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』

(伊藤 勇司/KADOKAWA)

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この記事は書籍『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片付け』からの抜粋です

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