片付かないあなた。自分の気持ちより他人の気持ちを優先していない?/家族を救う片づけ

「今日こそ片づけよう」そう一大決心して部屋の片づけを始める人は多いはず。しかしなかなかスムーズに進まない...。もしかするとあなたが片づけられない理由は、片付け技術ではなく「心」の方にあるのかもしれません。

人気の空間心理カウンセラーが書き下ろした不思議な片づけ物語は、読むだけであなたの心を「片づけられる人」に変えるかも! 可愛い毒舌フェニックスによる「心も片づく魔法」にあなたもかかってみませんか?

※この記事は『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(伊藤 勇司/KADOKAWA)からの抜粋です。

前の記事「明るい未来が見えない? 冷蔵庫を見直すと「変化のカギ」が手に入る/家族を救う片づけ(1)」はこちら。

 

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「心の声が丸聞こえ」のフェニックスとのやり取り

「ふう、やっと生きた心地がする。猫がいるならいるって、早く言えよ!」
ヒヨコを狙うポン太を慌てて捕まえ、娘の部屋に入れて扉を閉めてきた。目の前のダイニングテーブルの上で安心したようにヨチヨチと歩いている「自称フェニックス」(ピヨちゃん)を前にして、私はこの状況について考えた。

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(冷蔵庫の卵から生まれるとか、しゃべるとか......ありえないよね。私は夢を見ているのかな。......そっか、これは夢なんだ!)

取り急ぎ、夢だと考えると楽なので、そうすることにした。
(それにしてもこのヒヨコ、フェニックスとか言ってるけど、猫は苦手なんだね。そういえば鳥って、生まれた瞬間に見たものを親と思う習性があるんじゃなかったっけ。もしかしてこのヒヨコちゃん、私のことを親だと思ってる!? もしそうだったら、このままうちで飼ってあげてもいいかも♪)

そう心の中で妄想をしていた次の瞬間。

「そんなわけないだろ!」

と、ヒヨコがこちらをにらみつけながら言い放った。
(えっ!? 何なに!? 私、思ったことが口から出てた!?)
心を見透かされたようなヒヨコの発言に動揺しながら、私はまた心の中でそんな言葉を漏らした。

「だから、丸聞こえなんだよ! 心の声が全部こっちに聞こえてるの! っていうか、これ夢だと思ってる? 現実だよ、ゲンジツ。それよりフェニックス様に向かってペット扱いするなんて、どういう神経してるのかなあ? 人間ごときに懐くとか、絶対にありえないし!」

今、私は絶対に声に出してはいなかった。心の中で思っていただけだ。
なのに、ヒヨコは私の心を確実に見透かしていた。その状況がのみ込めずに、私はしばらく呆然とする。
「俺様って、人間と心でやり取りできるんだよね」
そんな私を見かねたのか、今度はヒヨコから私に語りかけてきた。
「ちなみに僕が声に出してしゃべってると思っているかもしれないけど、違うよ。あんたの心に直接話しかけてるんだからね。ほら、このくちばし、動いてないでしょ?
おマヌケな人間どもの言葉は世界中バラバラだけど、心はどんな人間も一緒だからね。通訳いらないの。便利だろ?この能力があることが、フェニックスが世界中で伝説的に愛されてる理由かもしれないな。フェニックスだけど、心をワシづかみ。あ、我ながらうまいなあ」

おもむろに語りだしたはいいが、そこから自分の言葉に陶酔し始めたヒヨコを見て、私は無意識にデコピンを放っていた。
(ピンッ!)
「イタたたたぁ......!? コラ! フェニックス様に向かって、何するんだ!!」
「いや、なんか、ちんちくりんなくせして、やたら態度でかいなと思って......。だからちょっとイタズラしたくなっただけだよ......」

心を読まれているのなら隠しようがないと思った私は、素直にそう伝えた。ついでに自分のおでこも軽くはじいてみる。うーん、この感触、ヒヨコの言う通り、夢じゃないみたいだ。

「なかなかいい度胸してるよな......。俺様が知ってるかぎりでは、フェニックスにデコピンをしたのはあんただけだよ。まさに史上初、今世紀最大のスキャンダルだね。世界中の俺様のファンが、黙っちゃ......」
(ピンッ!)

いちいち大袈裟(おおげさ)で、聞いてもいないのによくしゃべるヒヨコを見ながら、私はまた無意識にデコピンを放っていた。
「イテてててぇ......コラっ! 二度も! なんてことするんだよ! お前は伝説のフェニックス様に対して、恐れ多いとは思わないのか!?」
「そだね~」
どうせ隠しごとができないとわかったからか、気がつけば自然と「素の私」が出始めている。
「そだね~、じゃねーよ!」

さっきまでご満悦だったヒヨコは、息を荒らげて怒り狂っていた。
「はぁはぁ......。落ち着け、俺。フェニックスともあろう者が、少し取り乱してしまった。いや、もうほんと、こんな失礼な人間には出会ったことがないよ。そう考えるとある意味、奇跡的な出会いかもしれないな。そうだ、ところであんたの名前はなんていうんだ?」

少し疲れて我に返ったのか、ヒヨコは呼吸を整えながら、私に名前を聞いてきた。
片付かないあなた。自分の気持ちより他人の気持ちを優先していない?/家族を救う片づけ フェニックス_024_02.jpg「......ユウコだけど」
「そうか、ユウコか! よし、ユウコ喜べ! お前を今から、フェニックス様の下僕に任命する!!」
「えっ、絶対無理!(ピンッ!)」
そう言葉で返しながら、私は反射的にまたデコピンを放っていた。
「いったいな~もう!! そこは、『そだね~』でしょうが!フェニックスの下僕デビューができる貴重な機会を無駄する人間には、またまた初めて出会ったよ! 世界中にあるフェニックスファンクラブを敵にまわ......」

私は、毎度同じパターンで話すヒヨコの言葉を遮り、こう言った。
「ハイハイ、伝説のフェニックスだってことはわかったから、私は〝ピヨちゃん〟って呼んでいい? フェニックスって呼びにくいし」

そう言われたヒヨコは、
「フェ、フェニックス様に向かって、ピヨちゃんとは、どういうことだ......!?」
と否定しつつも、意外とまんざらでもない表情を浮かべている。毒舌ぶってるけど、やっぱり見かけ通りのかわいいところがあるようだ。

「さっきはデコピンしてごめん。でも、下僕もありえないから。どうせなら、友達でいいんじゃない?」
そう私が切り出したことに対して、意外にもピヨちゃんは素直に了承した。
「ま、まあ、わかった。そういうことにしてやろう......。じゃあ、喜べ! 今日からユウコは、俺様の友達第1号だ!」

ピヨちゃんの上から目線な言葉は完全に無視しながらも、素直な心でやり合える存在ができたことに、私はどこかで喜びを感じていた。

片付かないあなた。自分の気持ちより他人の気持ちを優先していない?/家族を救う片づけ フェニックス_031_01.jpg 

考えてみると、こんなにも無邪気な自分を出せたのは何年ぶりだろう。少なくとも、結婚して子どもが生まれてからはそんな自分になった記憶がない。日々、子どものことや家事のこと、仕事のことなんかを無我夢中でやってきたから、自分のことを振り返ることすらなかった気がする。

思ったことをそのまま伝えて、感じたままを表現する。
この短い時間の中で行われた、ピヨちゃんとの不思議だけどシンプルなやり取りに、私は心に風を吹き込まれるような、なんとも言えない心地よさを感じ始めていた。
(ピヨちゃんと話していると、なんだか楽しい気持ちになれる。私もピヨちゃんみたいに、言いたいことをズバズバ言えたら、どんなに楽だろうな......。私には、絶対に無理だけど......)

ピヨちゃんとのやり取りに夢中になっていた時は忘れていたが、ふと自分の置かれている現実に戻ると、また心に暗い雲がかかる。そういえば今日はボランティアの集まりがあることを思い出した。

「ユウコは、心で思っていることを、はっきりと言葉に出せたらうれしいんだな?」
暗い表情を見せた私を見ながら、ピヨちゃんも急に真剣な眼差しで話し始めた。
「よし、わかった! 友達が困っているのを見て、黙って見ているわけにはいかない。俺様がユウコを全力で応援してあげよう!」

そう言いながら、まっすぐに私を見つめるピヨちゃんの瞳を見た瞬間、思いがけないことに急に涙が込み上げてきた。
(え、なんで泣けてきちゃうの?)
と自分でびっくりしながらも、一度涙が流れ落ちると、堰(せき)を切ったように涙が次々とあふれてきた。
「ユ、ユウコ、泣いてる!? 僕、なんか悪いことでも言ったか?」

私の悩みなんて、一つ一つはちっぽけなこと。そう思って誰にも話せず、ひとり悶々(もんもん)としていた。そんな私に、本心から「全力で応援するよ」と言ってくれる気持ちが、素直にうれしかったのだと気づいた。

泣いている私を見ながら、ピヨちゃんもどうしていいかわからないのか、ピョコピョコと右往左往しているのが涙の向こうに見え隠れする。
(幸せを呼ぶフェニックス、か......)
私はよく聞くフェニックスの言い伝えを思い出した。
(私、もしかしたらこの行き詰まった状況を変えられそうな気がする。これから幸せになれるのかも......)
根拠はないが、心の中に自然とそんな気持ちが湧いてきた。すると、
「当たり前だろ! 幸せを呼ぶフェニックスと友達なんだから!」

ピヨちゃんには、その言葉もしっかりと聞こえていた。心が通じ合うとは、こういうことをいうのか。これは今まで味わったことがない感覚だった。

片付かないあなた。自分の気持ちより他人の気持ちを優先していない?/家族を救う片づけ フェニックス_035_01.jpg私の身に突然起こった、フェニックスとの出会い。ここから何かが変わる。そう確信しながら少しだけ前向きになれた私。でも、まだこの時の私は、これから起きる想定外の出来事を予測することはできないでいた。

 

 

空間心理カウンセラー・伊藤勇司さんのまとめ&解説】

心を解き放つことから、片づく人生はスタートする

心で会話することができる「ピヨちゃん」と友達になったユウコさんは、ピヨちゃんとのやり取りの中で「心のままに自分を表現する」ことで、気がつけば心のバランスを取り戻せるような感覚になりました。

僕は空間心理カウンセラーという仕事を通して、実はこのプロセスこそが「片づけの最初の一歩である」ということを深く実感をしています。因果応報という言葉がありますが、結果が生まれるには、それなりの原因があります。片づかない状態という結果もまた、なんらかの原因があるからこそ生まれている現象。その因果関係を心理的にひも解いていくと、心の葛藤が原因となって、片づかない状況が生まれているケースが少なくありません。

ですから片づけができないと悩む方は、まず直接的な片づけに取り組む前に「心の葛藤を言葉に表す」ことから始めることをおすすめします。

そうすることで気持ちが楽になって前向きな行動をしたくなり、結果的に自主的に片づけるようになるケースも非常に多いのです。

僕は部屋が片づかなくなる方々を様々な角度から考察してきましたが、部屋が片づかなくなる時の心理として、ある共通項があることに気づきました。それが、
「自分の気持ちよりも、他人の気持ちを優先している時ほど片づかなくなる」
ということです。

自分の心がおざなりになって、素直な自分に向き合えなくなっている時。まさに今回の主人公であるユウコさんのように、家族のことや目の前の問題で頭がいっぱいになって、「自分」のために生きていない人ほど、片づかなくなる傾向にあります。

「はじめに」で、冷蔵庫を「心のクセをひも解く場所」としましたが、ここまでの話を通して、その言葉の意味がおぼろげながらでも見えてきたのではないでしょうか。

そうです。冷蔵庫という場所は、日々の心の葛藤やストレスによる決断や、無意識に繰り返している習慣が表れやすい場所。ですから、冷蔵庫の中身を確認してみるだけで、心の整理ができる可能性がある場所なのです。

もし、あなたに心当たりがあるなら、今から冷蔵庫を開けて、中身をくまなく確認してみてださい。物を捨てなくていいし、掃除する必要もありません。何も変える必要はありません。

冷蔵庫の中身を確認しながら、日々の自分の行動を振り返ってみてください。フェニックスは生まれてはこないかもしれませんが、それだけでもきっと、あなたの中で何かの気づきが生まれてくるはずです。

ユウコさんはピヨちゃんが何げなく投げかけてくれた、

「全力で応援してあげるよ!」
という言葉に、涙が止まりませんでした。
自分なりに一生懸命に生きているのに、何をやってもうまくいかない状況が続いていた中で、唯一ピヨちゃんは一緒に寄り添って乗り越えようとしてくれていると感じられたからでしょう。ひとりだけで背負っていると感じていた心の重い荷物を、ふと下ろすことができたのかもしれません。

「心を解き放つことから、片づく人生はスタートする」
すべての物事の好転のきっかけは、心を解き放つことからスタートします。特別な何かをする必要はなく、自分の素直な心に触れて、その心を表現していくことが大切。

まずはそのことを心に留めていただきながら、ここからの物語を一緒に味わっていきましょう。

 

次の記事「いま、本当にしたいことは何? 心がスッキリすると人生を軌道修正できる/家族を救う片づけ(3)」はこちら。

 

 

伊藤 勇司 (いとう・ゆうじ)

片づけ心理研究家。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。引っ越し業で働きながら、心理学を学ぶ中で「部屋と心の相関性」に着目し、現場で見た1000 軒以上の家とそこに住む家族や人との関わりを独自に研究。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008 年に独立。主な著書に『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』(KADOKAWA)、『部屋は自分の心を映す鏡でした。』( 日本文芸社)、『片づけは「捨てない」ほうがうまくいく』( 飛鳥新社)、『座敷わらしに好かれる部屋、貧乏神に取りつかれる部屋』(WAVE 出版)、『空間心理カウンセラーの「いいこと」が次々起こる片づけの法則』(三笠書房)等。


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『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片づけ』

(伊藤 勇司/KADOKAWA)

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この記事は書籍『毒舌フェニックスが教える 家族を救う片付け』からの抜粋です

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