毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「違和感の正体」について。あなたはどのように観ましたか?
※本記事にはネタバレが含まれています。
【前回】「才能」に悩みもがくヒロインたち...シンプルな展開に込められた「現代的なメッセージ」
足立紳・櫻井剛脚本×趣里主演の109作目のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』の第4週「ワテ、香川に行くで」が放送された。
今週は先週に続き、水曜にクライマックスを持って来て、最終回のように盛り上げた末に、木曜から大きくテンポもトーンも変わる構成が用いられた。
『舞いあがれ!』(2022年度下半期)も水曜にクライマックスが来る構成が多かったが、近年のBK(NHK大阪放送局)の流行りなのか。少なからず戸惑いを感じる視聴者がいたようだが。
梅丸少女歌劇団(USK)で賃金カット&人員削減が進められる中、大和礼子(蒼井優)は新人団員の解雇の撤回や待遇改善を求め、ストライキを敢行。
ストライキに加わったスズ子(趣里)たち団員は山寺に立てこもり、歌と踊りの稽古に励む。
この「桃色争議」が報道されると、世論が味方し始め、山寺の住職たちも応援。礼子はスズ子に、両親に反対されて家を飛び出した自分を大熊社長(升毅)が受け入れ、親代わりになって踊りを続けさせてくれたことを話す。
ストライキについて知った団員の親たちが山寺に押しかけ、大騒ぎになるが、住職の提案のもと共に食事をし、娘たちのストライキを応援するように。スズ子が「うちの親、おかしいんです」と言うように、団員たちに話しかけまくり、差し入れを配りまくるツヤ(水川あさみ)と梅吉(柳葉敏郎)のハイテンションぶりが、こんなときには救いになる。
そんな中、団員たちの要求が全て受け入れられたと告げられる。しかし、それは礼子と橘(翼和希)が騒動の責任をとって退団する条件と引き換えのものだった。
スズ子たちは激しく怒り、泣き、反発するが、会社が出した結論が覆されることはなく、礼子と橘は劇団を去って行く。
そこから解雇された新人団員たちや賃金カットで去った桜庭(片山友希)が復帰。新生USKは、礼子の置き土産である一糸乱れぬ見事なラインダンスを披露する。
その後、礼子が勝ち取ってくれた休暇をどう過ごすか団員たちが話す頃、ツヤのもとに香川にいる妹のタカ(西村亜矢子)から手紙が届いた。実家の手袋工場の得意先の法事に、スズ子に出席してほしいという。
スズ子と弟の六郎(黒崎煌代)は共に香川へ行き、地元の有力者・治郎丸和一(石倉三郎)を訪ねる。治郎丸家では和一の息子・菊三郎の法事が行われていた。数々の違和感の中、スズ子に詰問されたタカは、菊三郎がスズ子の実の父だと打ち明ける。
スズ子が病気になった際、ツヤが「あの子だけは死なせるわけにいかない」と梅吉に話していたこと、六郎が自分たちは本当の姉弟じゃないと勘繰っていたことなど、これまで薄ら感じていた違和感の正体がここで明らかになったわけだ。
それにしても今週はいろいろな違和感があった。
礼子と大熊の親子のような関係は美しいが、礼子をめぐる橘と股野(森永悠希)の三角関係は必要があったか。まして先週、それに気づいた白川(清水くるみ)がみんなの前でわざわざ言葉にする必要はあったか。
気丈に振る舞っていた礼子が漏らした本音「悔しいなあ、辞めたくない、辞めたくないなあ」の表情に惹きつけられ、その後のUSKのラインダンスに感動する。しかし、それが史実だとしても、はたしてストライキを「お客様にも会社にも迷惑をかけた」として責任をとることを苦味を伴う美しい決断のように描くのはいかがなものか。
礼子無双を経て、スズ子が突然USKの中心人物になっているのはなぜなのか。その礼子が勝ち取ってくれた休暇について、ベラベラ笑いながら話す後輩たちはどうなのか。
そしてその後の急な展開は......
既報となっている『ブギウギ』がロケで一部破損した国の重要文化財に指定されている滋賀県東近江市の百済寺が、今週の舞台として登場したこともあるが、何やら物語自体、ブツ切りの印象もあった今週。この違和感が杞憂であることを願ってやまない。