私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!
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前の記事「和紙は物理的、洋紙は科学的に作られる/すごい技術(40)」はこちら。
●インクジェット用紙
文具店に行ってインクジェット用の紙を買おうと思うと、多くの種類があることに気づく。どう違うのだろう。
年賀はがきにはインクジェット用紙やインクジェット写真用が販売されている。また、文具店や家電量販店でプリンターの用紙を探すと、マット紙や写真用紙、スーパーファイン紙などが販売されている。これらはどんな用紙なのだろう。
インクジェット用紙の種類を理解するには、まず塗工紙(とこうし)を知る必要がある。パルプを抄(す)いてできた紙の表面には凹凸がある。そこで、表面をツルツルにするため、塗料を塗って化粧を施す。それが塗工紙だ。こうすることで表面の凹凸がなくなる。また、塗料が印刷インキを吸収するので、印刷がきれいに仕上がる。ちなみに、塗工紙でない原紙を非塗工紙と呼ぶ。コピー用紙やノートの紙は非塗工紙である。
塗工紙製造には抄紙工程にコート工程が加えられる。そのための機械をコーターと呼ぶが、そこで塗られる材料によって塗工紙は大きく光沢を抑えたマットコート紙と光沢感のあるグロスコート紙に分けられる。グロスコート紙よりさらに光沢感を出すために表面加工を施したものには光沢紙がある。
具体的に見てみよう。スーパーファイン紙は上質な普通紙で非塗工紙だ。文字印刷はきれいにできるが、写真には難がある。マット紙はマットコート紙の略で、ツヤ消し処理した塗工紙だ。年賀はがきのインクジェット紙はこれに相当する。写真用紙は光沢紙が利用されている。年賀はがきのインクジェット写真用がこれだ。
プリンターの印刷の仕上がりは用紙で決まる。デジカメの写真をきれいに印刷しようとするなら、専用のコーティングが施されたインクジェット専用紙の光沢紙が必要だ。光沢紙には、高分子系のコートを施したものと、多孔性微粒子系のコートを施したものがある。高分子系はゼラチンを、多孔性微粒子系はシリカゲルを想像してもらえればいい。これまでは高分子系の商品が主流だったが、今後はインクののりがよく速乾性の多孔性微粒子系の用紙が主流となっていくと考えられる。