紙と紙の間で化学反応発生! ノーカーボン紙/すごい技術

紙と紙の間で化学反応発生! ノーカーボン紙/すごい技術 pixta_29358302_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?

身近なモノに秘められた"感動もの"の技術をわかりやすく解説します!

※この記事は『身のまわりのすごい技術大百科(KADOKAWA)からの抜粋です。

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前の記事「インクジェット用紙は「化粧」によって種類が異なる/すごい技術(41)」はこちら。

 

ノーカーボン紙

複写式の領収書や納品書を受け取ると、ノーカーボン紙が利用されていることが多い。手が汚れず便利な紙だ。

ノーカーボン紙は生活のさまざまなシーンで利用されている。銀行の振込用紙や宅配便の伝票など、控(ひか)えが必要な場所で活躍している。

ノーカーボン紙があるなら、当然カーボン紙もある。例えば宅配便の伝票で、自社用控えにこれが利用されている。1面の裏にカーボン(炭の粉)を塗り、筆圧で2面の紙に印字する方式だ。このしくみからわかるように安価だが、触ると手が汚れる場合がある。

カーボン紙で手が汚れるという問題を解消する製品がノーカーボン紙だ。1953年に米国で発明された製品だが、どのようなしくみなのだろう。

ノーカーボン紙にはミクロン単位の大きさのマイクロカプセルが利用されている。ペンの筆圧が加えられると、1面の裏面に塗布してあるカプセルが壊れ、中に入っている無色の発色剤が染み出す。すると、2面表に塗ってある顕色剤と化学反応し、色が現れる。これが控えの紙の文字になる。

この発色のしくみから、「消せるボールペン」で調べたロイコ染料と顕色剤の組み合わせが思い起こされる。実際、マイクロカプセルに入っている発色剤はロイコ染料の一種なのだ。ただし、「消せるボールペン」のインクとは異なり、ノーカーボン紙の場合は普通の温度では変化しない性質のものを利用する。ゴムでこすって消えては困るからだ。

関連記事:「摩擦熱で無色になる! 消せるボールペンのからくり/すごい技術(32)」

 

紙と紙の間で化学反応発生! ノーカーボン紙/すごい技術 gijutsu_p381.jpgノーカーボン紙と同様の印字のしくみは、熱転写用紙にも活用されている。熱転写用紙はFAXやレシートの用紙に利用されているが、プリンターヘッドの熱パターンがそのまま転写される用紙である。紙表面に発色剤と顕色剤を混合しておき、熱でこれらふたつを化学反応させるしくみだ。

カーボンを使っていないという意味で、ここで調べたノーカーボン紙とは異なる方式のノーカーボン紙も存在する。パイロットが実用化したプラスチックカーボン紙だ。プラスチック層にインクを含ませた構造を採用し、手が汚れないように工夫されている。

 

「すごい技術」その他の記事はこちら。

 

涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。著書に『身のまわりのすごい技術大百科(KADOKAWA)ほか。

涌井貞美(わくい・さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。著書に『身のまわりのすごい技術大百科(KADOKAWA)ほか。


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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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