妻の両親と養子関係を結ぶことで成り立つ"婿養子"は、現在の日本では珍しい結婚の仕方。しかしその分、いざ離婚となった時に普通とは少し違う悩みが浮上することも。7月に放送されたラジオ「テレフォン人生相談」(ニッポン放送)では、妻から離婚調停を起こされている婿養子の男性が悩みを明かしています。
そもそも"婿養子"ってどういう形式?
相談者は婿養子として結婚してから10年以上経つものの、ここ数年で妻との仲が悪化したため離婚調停を起こされてしまった男性。家庭環境の良くない家で育った男性は離婚によって「見捨てられる」という不安を抱き、離婚したくないと感じているそう。この相談に弁護士の大迫恵美子先生は、「もともとあなたがここに"入ってきた人"なので、いられなくなっちゃうと出ていくしかない立場になっちゃた」とコメントしていました。
そもそも"婿養子"とは、男性が女性の姓を名乗ることに加えて、男性が女性の両親と養子縁組をした状態のこと。通常の"婿入り"で必要になるのは婚姻届け1枚ですが、婿養子では婚姻届けに加えて養子縁組届が必要になります。そうすることで男性も妻の両親の子どもという扱いになるため、相続権が発生。自身の両親だけでなく、妻の両親に扶養義務が生じるのも普通の"婿入り"との違いになっています。ただし現在の法律では、明確に「婿養子」という定義があるわけではないので、お互いにきちんとすり合わせを行うことが重要ですよ。
"婿養子"の離婚はめんどくさい?
通常の結婚とは異なる形をとった"婿養子"の男性が離婚する際には、一般的な離婚とは違う悩みが生まれる場合も。
まず多いのが手続きに関するお悩み。ネット上では「ただ離婚届を書くだけではなく、離縁の手続きをしなきゃなのがめんどくさい」「夫と別れたのに養子関係だけ解消されていないのが本当に嫌。早く手続きをしてほしい」といった声が上げられています。
また大きなネックになるのが、相続問題。2014年には「テレフォン人生相談」(ニッポン放送)に、遺産狙いの婿養子が離婚後もそのまま養子関係を結んだままだという相談が寄せられました。相談者の女性と元夫の離婚は成立したにもかかわらず、元夫は養子縁組の解消を拒否。女性は自分の父親に何かがあった際に、元夫にも相続権が発生してしまうことを心配していました。
弁護士によると、養子縁組が結ばれた状態のままでは元夫にも相続権が発生してしまうそう。養子縁組は相談者の父親と元夫が交わしたものなので、この場合は相談者の父がきちんと解消の申し立てを行うことが大切。相手が拒否するのなら裁判になる可能性が高いですが、それでもきちんと対処すべきだとアドバイスしています。
普通の離婚とは少し違う"婿養子"の離婚。弁護士などときちんと話し合い、正しい方法をとることが大切ですね。
文/藤江由美