男と女を超えた関係。離婚は幸せの入り口でもある/大人の男と女のつきあい方

pixta_38599797_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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「男と女」を超えた新しい人間関係もある

私はそういう生き方を選ばなかったが、結婚せずに、あるいは離婚して一人で暮らすのも悪くはないと思う。完璧な相性の相手とめぐり合えればいいが、しょせんは他人同士。一緒に暮らすのは容易ではない。

お互いにイヤな部分を感じていても、それが許せる範囲にとどまっていればいいが、どうにも見過ごせない性癖や相容(あいい)れない考えの持ち主だったりすれば、そんな共同生活は幸福とはいえない。子どももいらない、終生の伴侶もいらないというなら、身軽な一人暮らしを送る人生もいい。

日本の離婚件数は年を追って増加傾向にあるが、そういう選択をする人が多くなったという一面も見逃せない。
「結婚は一度でたくさん。これからは"再独身"だ」
最近でこそ「バツイチ」「バツニ」などという表現が生まれ、離婚経験者の形容も軽くなったが、ひと昔前まで、離婚はまるで人生の落伍者(らくごしゃ)のような扱いをされた。とくに女性に対しては辛辣(しんらつ)で、離婚して実家に帰ってくると「出戻り」などと、ずいぶんひどいいわれ方もして肩身も狭かった。だが、いまの時代、私は離婚を必ずしもマイナスにとらえる必要はないと思っている。

イギリスの百貨店チェーン『デベナズム』が、離婚を祝うパーティーが人気になったのに便乗して、「結婚祝い」ならぬ「離婚祝い」のサービスを始めたという。日本でも「離婚式」をプロデュースする人が登場して、結構はやっているそうだ。とにかく離婚のとらえ方が変わってきたのは確かである。

そもそも、結婚は手段であって目的ではない。知り合った男女が、一人で生きるよりも幸せになることを望んで選ぶ一形態にすぎない。マラソンの完走はそれなりに評価されていいことだが、それは完走することが大きな目的の一つであるからだ。だが、結婚生活の完走、それ自体に大きな価値があるわけではない。走りながら得たものに価値があるのだ。

誰でもはじめは完走を目指してスタートするのだが、予想に反して精神的、肉体的な消耗戦が待ち構えている。お互いの無理解、感情の一方通行、そこから生まれる争いや無関心が二人の生活を支配することもある。顔に×印を描いて離婚会見に臨んだ明石家さんまさんは「結婚はゴールではない!スタート!しかも途中から障害物競走に変わる」といった。そんな障害物だらけの結婚であれば、途中棄権したほうがいいのかもしれない。

「もっと早く別れればよかった」
私の事務所に数年間勤め、編集の仕事で大きな成果を上げてくれた女性がそういった。彼女は国家公務員の男性と結婚して三人の子どもをもうけたが、10年ほど前に彼女が三人の子どもを引きとって離婚した。

もともとシャープな頭脳の持ち主で仕事はできる。加えて、性格も明るく社交的でまわりの人間からも好かれる。対して、彼女の夫は真面目で誠実であることは間違いないのだが、どちらかというともの静かで口下手。立て板に水のような彼女とは正反対の性格だった。相手が自分にないものを持っているということは、心惹かれる大きな要素ではあるが、うまくいかなくなれば、かえって二人の不和を助長する要素でもある。

結婚10年後、彼女から提案して協議離婚した。
「人間なんて勝手なもので、彼のもの静かな雰囲気に知的なものを感じて惹かれたはずなのに、ある日『この人、頭が悪いからしゃべらないんだ」『私に興味がないから、コミュニケーションしたくないんだ』と感じはじめる。10年も一緒に暮らして彼の子どもを三人も生んだのに、日を追って彼との距離が遠のいていったんです」

いままで気にもならなかった彼のちょっとしたしぐさが、癇(かん)に障るようになる。
口臭や体臭も鼻につく。下着に触るのもイヤになる。
「これでは、一緒に暮らしつづけるのは無理と判断したんです」
だが、二人は絶縁状態になったわけではない。月に一回は親子五人で食事をするし、子どもたちは元夫の実家に自由に出入りしているという。

「男と女の関係でなくなったぶん、何だか戦友のような連帯感が生まれてきましたね。戦争に行ったことはないけれど......。離れて暮らしはじめると、逆に彼に対する嫌悪感がどんどん薄れていきました。バカじゃないか、なんて思わなくなりました」

現在、彼女には恋人がいる。13歳年下である。一方、元夫にも15歳年下の恋人がいる。お互いに恋人を紹介し合ったこともあるが、相手の恋人に対して、まったく嫉妬心を感じなかったそうだ。二人とも、結婚は一度だけでいいと決めている。

「愉しいうちはそれでいい。イヤになったら離れればいい。愛だ、恋だと騒がないこの軽さが心地いいんです。夫も同感のようです。ヘンな話、離婚してからのほうがお互いの理解が深まった気がしますね。私たちにとって、離婚が幸せへの入り口だったんです」

終生の伴侶にはなれなかったが、二人には男と女を超えた新しい人間関係が芽生えたようだ。心のすれ違いを感じながら二人で結婚を完走するよりは、はるかにいい選択ではないか。途中棄権しても、その間の経験がムダになるわけではない。それを踏まえて、お互いに結婚を選ばない現在の恋愛の形もいい。

「軽い関係」の深い味というものもある。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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