「世界の中心は自分」が招いたのは決定的な社会性の欠如だった/発達障害の仕事術

「世界の中心は自分」が招いたのは決定的な社会性の欠如だった/発達障害の仕事術 pixta_12270985_S.jpg仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。しかし、その解決策を具体的に示した本は少ないのが現状です。

本書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハック集。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!

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前の記事「超ホワイト職場の業務に歯が立たない...最初の職場からの敗走/発達障害の仕事術(3)」はこちら。

 

生意気だった─部族をナメていた

僕はこの本の中で「部族に順応せよ」という比喩を繰り返し述べていきます。とにかく、職場の文化を尊重し、従順に振る舞うことが大事だというお話です。しかし、新卒の頃の僕の考え方はこれと全く逆のものでした。

そんなものはくだらない。利益にもならない。順応や従属なんていうのは情けない人間のやることだ。

もちろん、ここまで明確に言語化されてはいませんでしたが、そういう風に考えていたと思います。だったらベンチャー行け、って話ですよね。もしくは、営業の数字だけが正義の会社に飛び込めばいい。これは全くそのとおりで、何故そうしなかったのかいまだに後悔があります。そういうタイプの会社の内定だって持っていたというのに。

10 代から 20 代の初めまで、僕は「我を貫く」ことをモットーに人生を生きてきました。気に入らない教師や上司にはとことん逆らいましたし、人間関係も我を殺すくらいなら全て放棄してきました。

その結果、人間関係から放逐され孤独を味わうこともよくありましたが、その場合は「極力学校に行かない」「バイトはさっさと辞める」という最高の解決策がありました。授業なんか受けなくても、自分で勉強すればそれほど困ることもありませんでした(そもそも高校まで受験に一切関心を持っていなかったので、入った高校のレベルもとても低かった。高校選びは「家から近い」という理由だけでした)。

最初に入った大学では見事に人間関係に殺されましたが、これも「退学して別の大学に通いなおす」という逃げが全てを解決してくれました。そして、入りなおした大学はそのような生き方こそ正しいという校風を持っており、僕のこの性向は大学卒業時に最も高まっていたと思います(もちろん、僕はあの校風が大好きなのですが......)。

社会性を身につけるチャンスは、今思えばそれなりにはあったと思います。アルバイトだってかなりの数を経験していました。しかし、アルバイトは所詮アルバイトだったんです。

気に入らない先輩や上司がいれば喧嘩を吹っかけて辞めればいいだけのことでしたし、いくつも職場をホッピングすればそのうちに我を殺さなくていいところに当たります。無限にホッピング可能なアルバイトでは、僕は社会性を身につけるどころか反社会性を果てしなく強化しただけでした。

「退屈さと面白みのなさに耐える」ということもまるで身についていませんでした。当たり前ですよね。退屈で面白くなければすぐに逃げ出して次に行く人生だったんですから。

礼儀や挨拶といった基本的なものも、まるでできていませんでした。そんなものを求められたら即座に胸倉を掴みにかかるような人間でした。

ここまで書いてきて、本当に恥ずかしいですね。しかし、言語化することにはそれなりの意味があるような気がします。そういうわけで、僕は新卒で就職した後、部族の掟によってグチャグチャに叩き潰されました。再び僕は逃げ出したわけです。

この頃の僕は、他人への共感性が限りなくゼロだったと思います。他人の立場なんてものを考えたことは一度もなかったかもしれない。「あの人にはあの人の苦労があるだろう」なんてことを考え始めたのは、自分自身で会社経営を行い、部下を雇う立場になってからです。自分の正しさだけが世界の全てでした。

 

次の記事「もう逃げられない...30歳目前、人生は破たんに向かっていた/発達障害の仕事術(5)」はこちら。

借金玉(しゃっきんだま)

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。
色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。

「世界の中心は自分」が招いたのは決定的な社会性の欠如だった/発達障害の仕事術 otoko.jpg
『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』
(借金玉/KADOKAWA)
社会生活がうまくいかず苦しむ「大人の発達障害者」が増えていると言われる現代日本。発達障害によって30歳を前に人生をほぼ破たんさせかけた著者が、試行錯誤で編み出した「発達障害者のため」の今日から使えるライフハックを多数紹介! 仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。

 
この記事は書籍『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』からの抜粋です
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