誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
褒めるのではなく、事実を伝えるだけ
照れくささはあれど、誰でも褒められるのは単純に嬉しいもの。
しかし、いざ誰かを褒めようとすると、わざとらしく聞こえないか、おべっかみたいに思われるんじゃないかと、褒めることに躊躇してしまうことがあります。
以前、「女性が髪型を変えたのには気づくけれど、それを口に出すのはなんだかセクハラみたいに取られないかと、いろいろ考えちゃうんですよね......」と、心配している男性がいました。
しかし、相当イメージチェンジをしたのに全くスルーされてしまうと、当人は寂しい気持ちになるものです。
「似合う」や「素敵だね」などが言いにくいのであれば、まずは褒めるという評価はせずに、事実だけを伝えることからはじめてみましょう。
たとえば、「だいぶ短くされたんですね〜」「イメージがかなり変わりますね〜」これなら言うほうも気が楽ですよね。
言われたほうも、気づいてくれたことに対して悪い気はしませんから、相手のやさしい気遣いが伝わってきます。
そして、言った後の相手の反応を見て、話を繋げてくるようであれば「とても似合ってますね」と伝えれば、自然な流れで褒めることができます。
また、「どうしてそう思うのか」という理由を伝えるのも一つの方法です。
「いつも素敵ですね」だけだと、「どこでそう思ったのかな?」と気になるものです。
そのような場合は、「ネクタイとシャツの色の組み合わせが上品ですね」「小物にこだわっていらして素敵ですね」と具体的に伝えることで、相手もおべっかには感じません。
目上の人には、「教えてください」のニュアンスで
相手が上司や目上の人の場合、良かれと思って褒めてみても、どこか上からものを言っているように聞こえてしまうことがあります。
そのようなときは、「お話がとてもわかりやすいのですが、何かコツがあるのでしょうか」「資料がいつもわかりやすくて勉強になります」など、「教えてください」というメッセージを込めると、印象よく伝えることができます。
「どうしたら○○さんみたいになれるのでしょうか」
「○○さんがいらっしゃると明るい雰囲気になります」
「先ほどのお話、とても引き込まれました」
「たくさん大変なご経験もされたのでしょうか」
このような言い方も、一つの褒め言葉です。
ただし、目上の人やお客様に経験談を聞かせてもらったとき、「参考になります」はNGです。
参考は上から評価する言葉です。
「参考程度か」と軽く受け取られたと感じる人もいるので注意しましょう。
部下には、「感謝の言葉」を必ず添えて
一方、上司が部下を褒める際、特にまだ経験が浅い部下の場合は、褒めるところがない......などと感じる人も多くいるかもしれません。
そんなときは、「できている事実」に注目して、口に出してあげるだけで「見ていてくれている」と部下のモチベーションは上がります。
たとえば、「いつも納期を守ってくれるよね」「机の上が整頓されているね」「会議でのあの発言よかったよ」などの一言は部下を勇気づけます。
事実を伝えるだけならば、変に無理して褒めているようには聞こえません。
ただ、「いつも納期を守ってすごいよね」というように、「すごい」という「評価する言葉」が加わると、「大してすごいことではないのに褒めるなんて、よっぽど他に褒めるところがないんだな」と斜に構える人もいます。
その人のとびぬけて優れていることを探さなくて大丈夫。
事実を口に出したり、また「いつも助かるよ」と感謝の気持ちを伝えるだけでも褒めていることと同じ効果はあるのです。
CAを退職した後、当時の後輩だったHちゃんにこんなことを言われました。
「私が新人の頃、三上さんに"Hちゃんはいつも一所懸命で、見てると元気が出るよ"と言われたのが私すごく嬉しかったんです。もう5年も前の話ですけど、その言葉に今でも励まされます」
正直、私は言ったことを忘れていましたが、ちょっとした言葉がその人に大きな影響を与えるんだなと、そのとき感じました。
「うまく褒めなければいけない」というプレッシャーで、伝えることそのものを躊躇してしまうのはもったいない。
「褒め」は、「事実」や「感謝」の言葉が基本です。
いいなと思ったことを伝えることが、「あなたを気にかけています」というメッセージになり、相手を喜ばせることに繋がっていくのです。
【最初から読む】気遣いできないと評価がゼロも!?気遣いで変わる理由
元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します