誰もが抱える仕事や人間関係の悩み。キャビンアテンダントでの経験から人材教育の講師に転じた三上ナナエさんは「全ては気遣いでうまくいく」と言います。そこで、三上さんの著書『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』(すばる舎)から、自分の魅力をアップし、対人関係もスムーズにする気遣いスキルを連載でお届け。自信をつけて「相手から信頼される気遣い」を身につけてみてはいかがでしょうか。
理解しているか不安になるもの
自分では聴いているつもりなのに「ちょっと、ちゃんと聴いてる?」と家族や友人に言われたことはないでしょうか。
こちらとしては聴いているつもりでも、そう言われたことがある人は、ビジネスシーンでも少なからず同じことをやっている可能性があるので注意が必要です。
相手が自分の話を聴いていないように見えると、話しているほうは腹が立ちます。
それは、話を聴くのに値しないと軽く見られたかのように感じるからです。
また、「聴いていますよ」というメッセージがないと、「話を理解してくれただろうか」「伝えたとおりにちゃんとやってくれるだろうか」と相手は不安になるものです。
そうならないために、聴いているということを伝える必要があるのです。
「3つのポイント」を押さえておこう
ポイントは、大きく3つあります。
・顔を見て
・うなずきながら
・相づちを打つ
「話を聴くときは、相手の目をしっかり見て」と言われたことはありませんか?
確かに目をしっかり見ることは「あなたの話に集中しています」というメッセージになります。
しかし、ジーッと凝視しすぎると相手も疲れてしまいます。
目を見続けるのは5秒くらいに留め、鼻やのどのあたりを見ると、相手も安心して話すことができます。
「うなずき」は、動作で気持ちを伝えます。
しかし、これもただすればいいというわけではなく、相手の話の内容によってスピードを変える必要があります。
たとえば、苦情応対をする場面で細かく早くうなずいてしまうと、「ちゃんと聴いてるの?」「バカにしてるの?」と、さらにお客様の怒りに油を注いでしまうことがあります。
相手の思いを受け止める深刻な話には「深く、ゆっくり」うなずくことで、"きちんと理解しようと思っています"という気持ちが伝わります。
「相づち」は、「聴いています」というサインを言葉でしっかり伝えることが大事です。
「はい」
「そうなんですか」
「ええ」
「なるほど」
などを合間に挟むことで、相手が話しやすいリズムをつくってあげるのです。
相づちのポイントは、「3回以上連続して同じ言葉を使わない」こと。
それは、機械的に言っているように聞こえてしまうからです。
また、声のトーンやスピードをその都度変えることで、会話に自然な流れを出すのがコツです。
会議の席でも同じように「サイン」を出す
一対一では気をつけていても、相手が複数になると、「聴いていますサイン」を出し忘れる人は多くいます。
会議などで誰かが発言しているときに、無表情で怒っているように見える人っていませんか?
話す側は、誰がどんな態度で聴いているのかをはっきり見ています。
無表情な人が目に入ると、「あの人は私の言ったことをおかしいと思っているのかな」と不安がよぎります。
意見に反対だと安易にうなずけない、と考える人もいますが、基本的に「うなずき」は「聴いています」というサインです。
賛成、反対にかかわらず、「うなずく」ことで、まずは「聴いている」ことを話している人に伝えましょう。
そうするだけで、会議の場での発言がより円滑に、活発になっていくでしょう。
CAも同じです。
乗務前に「ブリーフィング」といって、その便の保安やサービス業務の確認事項の打合せを行います。
チーフパーサーが中心になり進行しますが、CAは話をしている人を見てうなずき、相づちを返し、メモをしっかり取りながら参加します。
それらの動作がないと真剣に聴いているように見えないため、チーフパーサーはもちろん、まわりが不安になります。
安全を守る仕事をする上で、メンバーを不安にさせる態度は御法度です。
まわりが反応することで、その場に一体感が生まれ、良い雰囲気がつくり出されます。
その結果、一番大事な安全性も確保できるのだと思います。
「聴いていますサイン」は、メッセージを受け取っていることを伝えると同時に、相手を大事に思っていることを伝える一つの気遣いです。
「無反応」で終わらせないよう、一対一でも、大勢の場合でも気をつけたいものです。
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元ANAのCAで4500回のフライトを経験した著者が会話や見た目などシーンごとに使える37の気遣いのコツを全5章で解説します