総理大臣、選挙、憲法改正など話題の尽きない日本の政治。とはいえ、話が大きすぎてよく分からないという人も少なくないでしょう。そこで、カリスマ塾講師・馬屋原吉博さんの著書『今さら聞けない 政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(すばる舎)から、「わかりやすい政治用語の基本」の一部を抜粋してお届け。基本を知ると、今の世の中がよくわかります。
憲法改正について国会ができるのは発議まで
簡単には改正できない規定
憲法は非常に強い力を持ったルールですから、簡単な手続きで内容がコロコロ変わるようではいけません。
憲法は変えようと思っても、なかなか変えられないように作られています。
昨今、憲法改正に関する議論がだいぶ進んできましたので、ここで「憲法の変え方」について、少し詳しくなっておきましょう。
改正について規定しているのは、日本国憲法第96条です。
その96条の1文目には、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と書かれています。
「憲法を変えたい」と考える人がいた場合、その人はまず国会に「憲法改正原案」を提出しなければなりません。
これを実現させるには、基本的に衆議院では100名、参議院では50名の賛成を得る必要があります。
そうして提出された「原案」は、衆議院・参議院それぞれに常設されている「憲法審査会」で審議されます。
まだ一度も発議されたことはない
憲法審査会は、衆議院は50人、参議院は45人の国会議員で構成されていますが、ここでそれぞれ過半数の賛成を得られると、その「改正案」は衆議院・参議院の本会議に提出されます。
憲法にあるとおり、本会議での議決には「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」が必要です。
このハードルは非常に厳しく、日本国憲法が1947年に施行されて以来、発議がなされたことはありません。
発議とは「憲法を変えませんか?」という国民への提案
憲法を変えるのはあくまで国民!
国会が憲法改正の発議をしたからといって、憲法が改正されるわけではありません。
発議は、あくまで「憲法を改正しませんか?」という国民への提案にすぎません。
最高法規である憲法を改正できるのは国民だけです。
日本国憲法第96条は、「この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」と規定しています。
「何の過半数なのか」は規定されていません。
2007年、第1次安倍内閣のときに、国民投票の具体的な方法を規定する「国民投票法」が制定され、この部分は「有効投票の過半数」と決められました。
有効投票とは、投票された票の数から白紙票などの無効票の数を引いたものです。
つまり、「18歳以上の選挙権を持つ人すべての過半数」ではなく、正しく投票した人の過半数が賛成すればいい、ということになります。
国民投票は憲法改正のときだけ
国会が憲法改正の発議をすると、60日以上180日以内の間に国民投票が行われ、そこで「有効投票の過半数」の国民が賛成すれば、改正が決まります。
最後の手続きとして、天皇が国民の名において公布します。
2016年にイギリスが国民投票でEU離脱を決めたように、世界には、国の行く末を左右する大切なことを国民投票で決めていく国もあります。
ただ、日本では、あくまで国民投票は憲法改正の発議がなされた際にのみ行われることとなっています。
国民投票で「有効投票の過半数」の賛成を得てようやく改正
全8章にわたってカリスマ塾講師が政治に関するさまざまな用語をわかりやすい図解で解説しています