眠れない、だるい...といった年齢とともに増える体の不調。「薬膳なら解消できます」と言うのは、テレビで活躍しながら国際薬膳師の顔も持つ麻木久仁子さん。そんな麻木さんの著書『生命力を足すレシピ』(文響社)から、「薬膳の基本」や疲れにくくなる「薬膳レシピ」をご紹介。今日の献立にひと工夫を。
あなたは一年中、同じ肉じゃがを食べていませんか?
「え?同じじゃダメなの?」と思われた方はすみません。
ダメというわけではないのです。
春も秋も同じものを食べるより、春には春の、秋には秋の肉じゃががあるということをお伝えしたいのです。
なぜなら私たち人間は、あくまで自然の中で生きているから。
みなさんがご家庭でよく召し上がっている肉じゃがなどの定番料理を、季節ごとに効果的に食べる方法をご紹介します。
「口に入るものはすべて薬」ですから、ふつうの肉じゃがにももちろん意味があります。
ただ、さらにそれをカスタマイズすることで、季節ごとの「邪気」をはねのけるという効能をプラスすることができます。
基本の材料を変更するものは「変える」、新たに加えるものは「足す」マークで示しています。
レシピで使われている食材を適宜入れ替えてアレンジし、ご自身の体調に合ったレシピに発展させるためにお役立てください。
じつは胃腸の強い味方「肉じゃが」
ホクホク感がおいしいじゃがいもは、生命力を補ってくれる代表食材。
しかも消化が良いので、疲れた胃腸にも優しいのです。
そのじゃがいもの最高の相棒が、じつはたまねぎ。
たまねぎは「理気類(りきるい)」といって、生命力を体中に巡らせてくれる食材。
ガソリンとエンジンのような、切っても切れない関係で成り立つ料理、それが肉じゃがなのです。
●基本のレシピ
【材料】
2人分
【食材】
・牛薄切り肉...100g
・しらたき...100g
・じゃがいも...2個(200g)
・たまねぎ...1/2個(100g)
【調味料】
・太白ごま油...大さじ1酒
・酒...100ml
・砂糖...大さじ1
・みりん...大さじ2
・しょうゆ...大さじ2
【作り方】
① 牛肉としらたきは食べやすい大きさに切る。じゃがいもは皮をむき、一口大に切る。
② たまねぎは薄切りにする。鍋に油を入れて中火で熱し、じゃがいもを炒める。牛肉・たまねぎ・しらたきを入れ、酒を回しかける。
③ 沸騰したら、砂糖・みりんを加えて密閉できる蓋をし、弱めの中火で10分煮る。
④ しょうゆを入れて蓋をし、弱火で10分くらい煮る。蓋を取り、火を強め、照りが出るまで鍋をゆすりながら煮詰める。あれば、筋を切ってゆで、細切りにした絹さやをのせる。
●春夏秋冬のレシピ
※春・夏・冬の肉じゃがは、しらたきを入れていません。そのかわり、作り方③で水50mlを足してください。
<春>鶏肉じゃが
変える:牛薄切り肉→鶏もも肉(1cm大に切る)
足す:グリンピース80g(1分塩ゆでする)
春は、冬の間締め切っていた体の窓を開いて、グーッと伸びをするような季節。
鶏肉には生命力を補う力があり、グリンピースには、閉じ込めていたものをスムーズに巡らせる回転力があります。
塩ゆでしておけば、最後に加えてサッと煮るだけ。
<夏>とうもろこし肉じゃが
変える:牛薄切り肉→豚薄切り肉
足す:とうもろこし粒80g(ゆでて芯から外す)
日本の夏はじめじめ、蒸し蒸し。
そんな夏の体のむくみをとってくれるとうもろこしを、たっぷり入れました。
この季節は缶ではなく、生からゆでて。
自然な甘みと豊かな香りから、旬の生命力を感じます。
最後に加えてひと混ぜするだけでOKです。
<秋>白ごま肉じゃが
変える:牛薄切り肉→豚薄切り肉
足す:白ごま大さじ1、白ごまペースト(市販)大さじ1
冬に向かって乾燥していく秋。
外の影響を最も受けるデリケートな臓=肺を潤してくれるのが、白ごまです。
皮膚の乾燥にも◎。
仕上げにふって。豚肉も、体に潤いを与えてくれるので、秋におすすめの食材です。
白ごまペーストは③で砂糖・みりんと一緒に入れてください。
<冬>きくらげ肉じゃが
変える:黒きくらげ50g(水で戻した状態で。一口大に切る)
足す:黒こしょう適量
冬の色である「黒」をたっぷり使った肉じゃがです。
プリプリ食感がおいしい黒きくらげは、肺を潤し、胃腸の調子を整えてくれます。
②で牛肉・たまねぎ・しらたきと一緒に炒めましょう。
黒こしょうは体を温め、食欲を増進させる作用が。
煮る前に加えてください。
症状別や季節に合わせた70の薬膳レシピを集めた料理本。食材図鑑など薬膳の基本が身に付きます