2020年6月1日から改正労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」が施行されました。経営者はもちろん、従業員もパワハラ防止対策に取り組まなければならないという法律ですが、一体何に気を付ければよいのでしょうか。そこで、パワハラ防止法のすべてがわかる『最新パワハラ対策完全ガイド』(和田隆/方丈社)から、そもそも「パワハラ」とは何か、そして最新の対策や対処法などをご紹介します。
第三者による「早期発見」「早期解決」を
パワハラ問題は、第三者がコミットすることで「早期発見・早期解決」につながります。
第三者のサポートをまとめると、次の3つのステップになります。
①気づく
観察力と感性を発揮して、いつもと違う様子の人に気づきましょう。
日ごろから周囲の人に関心を持ち、声をかけたり、相談に乗ったりするようにします。
②つなぐ
パワハラを目撃したり、被害者から相談を受けた場合は、被害者に相談窓口に行くようすすめましょう。
被害者が動けない場合は、事情を聞いて代わりに通報します。
③支援する
問題解決のために、当事者に対してできる支援を行いましょう。
たとえば、「当事者の相談に乗る」「行為者にフィードバックする」「被害者の代弁者になる」「お互いの仲介者になる」などです。
いずれの場合も、当事者からの信頼を得ているのが前提です。
また、当事者の許可を得ずに、勝手に動きをとることは控えましょう。
パワハラ対応「こんなとき、どうしますか?」
では、実際にパワハラを見たとき、どう行動すればいいのか、一つのケースで簡単にシミュレーションしてみましょう。
【例】あなたが働いているフロアで、他部署のAさんが、上司から人格否定を伴う激しい叱責を受けているのを目撃しました。
また別の日には、同じ上司がAさんに対して、雇用不安を与えるような言葉を発し、Aさんが表情をこわばらせているのがわかりました。
このときあなたは、どんな対応をしますか。
(当てはまる項目に印。複数回答可)
□被害者(Aさん)の相談に乗る
□行為者(Aさんの上司)に注意する
□社内の相談窓口(人事部、職場のハラスメント相談担当者など)に連絡する
□直属の上司に報告して、一緒に対応を検討する
□他部署のことなので介入しない
さて、チェックは入りましたか?
入ったとすれば、どの項目に入りましたか?
正解はありません。
人それぞれ、置かれた立場や相手との関係性がありますから、どの対応が一番よいというのはないのです。
最後の項目「他部署のことなので介入しない」以外なら、どれでも構いません。
「他部署のことだから」と、他人事として何もかかわらない、何も動かないのだけは避けましょう。
Aさんの上司に注意するのは、かなりハードルが高いかもしれません。
自分の立場や力量に応じて、自分にできることだけをすればよいのです。
パワハラを放置すると、ますます問題が根深くなり、解決が遠ざかります。
今できることを即実行するのが、解決への近道です。
第三者のタスク
パワハラは、当事者だけでは解決が難しい問題ですが、そこに第三者が介入することで、対応がスムーズになったり、問題解決のスピードが増したりします。
「自分には関係がないから」「ほかの部門の話だから」と避けて通るのではなく、第三者としてやるべきことがあることを認識してください。
パワハラのない職場は、一人ひとりがパワハラについて関心を持ち、積極的にかかわろうとする意識から生まれるのです。
第三者には、次の3つのタスクが求められます。
1.変化への気づきでパワハラを「見える化」する
2.「サポート」で当事者の問題解決力を上げる
3.「ベストな対応」より「迅速な対応」を意識する
ハラスメントの対応で優先すべきことは「迅速な対応」です。
どちらが正しいのか、何がベストな対応なのか、詳しい状況はどんなものか、ほかに押さえておくべき事柄は何か、などを追求しはじめると、その分対応が遅れ、その間も当事者は苦しみ続けます。
まずはスピードを優先し、一刻も早く被害者が苦しみから抜け出せるようにサポートしてください。
そのプロセスで、明らかになってきたことがあれば、軌道修正を図ればよいのです。
いざ対応となると、迷いや不安が生じることもあると思いますので、職場の相談窓口、外部のホットラインなどの相談資源を積極的に活用することをおすすめします。
【最初から読む】6月から始まった「パワハラ防止法」、どんなものかご存知ですか?
これからの時代、「働く人の常識」になるパワハラ対策を全7章で解説。厚生労働省のガイドライン全文も付録されています