2020年6月1日から改正労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」が施行されました。経営者はもちろん、従業員もパワハラ防止対策に取り組まなければならないという法律ですが、一体何に気を付ければよいのでしょうか。そこで、パワハラ防止法のすべてがわかる『最新パワハラ対策完全ガイド』(和田隆/方丈社)から、そもそも「パワハラ」とは何か、そして最新の対策や対処法などをご紹介します。
パワハラ"後"の対応
もしパワハラを起こしてしまったら、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、パワハラ発生後の対応について解説します。
パワハラとは、自分が持つパワーを不当に使って、相手にダメージを与えたということです。
与えた側の対応としては、次の2つが挙げられます。
①ダメージコントロール
②再発防止へのアプローチ
まず、「ダメージコントロール」とは、実際に被害が発生してしまった後に、その影響を最小限に抑えるための事後処置をすることです。
ダメージを与えた側、すなわちパワハラをしてしまった側は、どんな対処をしていくべきでしょうか。
第1は、相手に部分謝罪することです。
パワハラ行為は、感情的になっているときに起こることがほとんどです。
たとえこちら側にも言い分があったとしても、行き過ぎた部分はあったはずです。
「感情的な言い方になって申し訳なかった」「あなたの話を聞かずに一方的に責めてしまったのは行き過ぎだった。申し訳ない」など、少なくともその点は認めて謝罪をすることで、被害者のダメージをそれ以上大きくすることは避けられます。
パワハラ問題の解決の大きな壁の一つが、お互いの感情的な対立です。
まずは感情の対立をこれ以上深めないためにも、冷静になって謝罪をすることが大事です。
第2は、時間を空けること、場所を変えることです。
部分謝罪は、問題が起こってから間を置かずに早く行うに越したことはありませんが、まだお互いの気持ちがくすぶり続けているときに、そこにあまり時間をかけすぎると、感情の揺り戻しが起こって再び怒りのエネルギーをぶつけてしまう恐れがあります。
そこで、「いったん時間を空ける」という方法をとります。
怒りのエネルギーは、時間を置くと必ず沈静化に向かいます。
話を続ける必要があるときは、「ここでの話はいったん終えて、あらためて時間をもらえないだろうか。明日の午後1時はどう?」などと提案してみるとよいでしょう。
場所も変えることをおすすめします。
問題が発生した場所で話し合いを行うと、臨場感があって、そのときの感情がよみがえりやすくなります。
冷静さを取り戻すためにも、その場からいったん離れることが大切です。
直接話す状況ではないときは、メール等で謝罪の意思を示しておくことはできます。
ただし、書いてすぐには送らないでください。
必ず時間をおいてから読み直し、内容や文章をよく確認してから送信するようにします。
書いているときはわからなくても、時間がたってから読んでみると、「言い方がキツイ」「文章にトゲがある」「論理が飛躍していて何を言っているのかわからない」などと気づくことがあります。
感情が高ぶっているときは、脳の理性的機能が低下し、自分が感情的になっていることにすら気づかないものです。
それを解決してくれるのは、時間です。
時間を空けることで感情が静まり、冷静な自分を取り戻すことができます。
メールを送るのは、それからで十分です。
第3は、出来事と気持ちを整理することです。
パワハラを起こしたときは、感情的になっています。
このときのものの見方は客観性を失い、出来事を主観的にとらえてしまっています。
「アイツのせいで、こんなことになっているんじゃないか」「もともとは部下のほうに問題があったからだ」と、一方的に相手を責めるほうに偏りがちです。
そこで、起きた出来事を冷静に振り返り、自分の気持ちを整理していく必要があります。
頭の中であれこれと考えを巡らせるだけでは、なかなか客観的にはなれません。
「人に話す」「紙に書き出す」などを通して、頭の中にあることを外にアウトプットします。
「言葉にする」という行為自体が、客観的にものを見るためのステップになります。
こうして感情的な自分から、理性的判断ができる自分へとシフトしていけるのです。
以上の3つが、当面の「ダメージコントロール」として、すべきことです。
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