「裁判」には「事件番号を教えて!」ニセ弁護士からの架空請求詐欺師を撃退する究極の質問

新型コロナウイルスに便乗するものも出てくるなど、進化し続ける「詐欺」の手口。そんな詐欺や悪徳商法に詳しいルポライター・多田文明さんの著書『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(方丈社)から、現代の詐欺から身を守る方法を抜粋してお届けします。

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「掛け算型」詐欺を一発で退散させる究極の「質問」とは?

詐欺では、相手にどのような話を展開するべきなのか、あらかじめ決まっており、マニュアルによる準備ができている。

つまり、詐欺組織は効率よく掛け算でだますための車を持っており、被害者がひとたび詐欺の車に乗せられてしまうと、身ぐるみはがされるまで降りられなくなってしまう。

車から降りるためには、運転手である詐欺師に「止めてください」と話しかけてブレーキを踏んでもらわなければならない。

「それはひと筋縄にはいかないな」。そう考えることだろう。

確かにそのとおりだ。

だが、彼らに話をやめさせるためのコツはある。

どうすれば、彼らにブレーキを踏ませて私たちを車から降ろす行動をとらせることができるのか。

「未納金が178万円があり、裁判になっています」

今、大手IT企業をかたって、電話番号だけでメッセージを送信できるSMS(ショートメッセージ)を使った架空請求詐欺が横行している。

そこで、テレビ番組で芸人とともに架空請求業者へ電話をかけてみると、某IT企業の法務部なるところから、先のような折り返し電話がかかってきた。

「え〜、そうなんですか!」

あわてる素振りを見せる芸人に、電話口の男は「弁護士を紹介しましょう」と言ってきた。

紹介された弁護士の名前を調べたが、そんな人は存在しない。

ニセ弁護士とはわかっていたが、番組ではあえて手の内に乗ってみることにした。

指定された事務所に電話をかけると、ニセ弁護士は「あなたには未納金の発生があり、裁判所に訴状が提出されている。

それを止めるためには供託金を納めなければならない」と言い出した。

「おいくらでしょうか?」

「53万4000円になります」

話にリアル感を持たせるために、細かい数字を提示してくるのも手だ。

「支払い方法は?」と尋ねると、「銀行のATMから裁判所の口座に振り込んでください」というのだ。

ここまでは、架空請求詐欺の流れでよく見られるものだった。

だが、ここからが違っていた。

振り込み先の口座名を尋ねると「〇〇会社、支店名、〇〇支店になります」と答える。

私は横で話を聞いていて驚いた。

それは、振り込み先が実在の企業名になっていたからだ。

通常、送金先は詐欺犯らによって売買された個人口座になっていることが多い。

それゆえ、詐欺の口座だと気がつけば警察や銀行に連絡すればすぐに凍結してもらえて、後に返金される可能性もある。

しかし、それが実在する企業の支店の口座となるとそうはいかない。

これは、どういうことなのか?

ニセ弁護士は振り込み先の口座を伝えると「ここからが大事になります。しっかりとメモしてください」と言う。

「まず依頼人の名義変更をしてください。この方は裁判所の事務官の名前になります。番号は『※※※※』、カタカナで『〇〇〇〇』の名前で入力してください」

実は、ここにカラクリがあったのだ。

調べてみると、相手が伝えてきた口座は仮想通貨の交換業者のものだった。

つまり詐欺犯が「事務官の名前に変更してください」と言ったのは、仮想通貨に登録してある人の口座に金を振り込ませるための口実だった。

もし、このまま入金してしまうとビットコインなどの仮想通貨に交換されてしまい、さらに海外口座などの別口座に送金されれば、もはや金の行方はわからなくなってしまう。

当然ながら、この手口でいったん金を払うと「カモリスト」に名前が載ってしまい、次々に詐欺の電話がかかってきて、掛け算式に金をだまし取られることになる。

そこで、二度と電話がかかってこないようにするために、芸人に疑いの言葉をぶつけてもらった。

「あなたの弁護士事務所の住所を教えてください」

「今回の裁判の事件番号は何番ですか?」としっかりとした口調で尋ねてもらうと、相手は答えに窮した。

詐欺だとバレたと思ったようで、一方的に電話を切ったのである。

ここに、だまされないための鍵がある。

もし相手に詐欺電話をやめさせようとする時には「詐欺だと疑われて、警察に駆け込まれる可能性がある」と思わせることである。

そのために、相手の身元を確認する。

詐欺ゆえに、自分の身元は偽ろうとする。

「料金未納がある」と主張してくるならば、その未納先の会社や担当部署、裁判の事件番号までしっかりと尋ねて、事実を確認する。

もともとウソの話なので答えられない。

ここでも、引き算型の対策で提案した「ネガティブ思考」が有効になる。

詐欺師は悪知恵に長けているわけだが、頭が良過ぎるのも厄介なことで、こちらのネガティブ発言に対して悪知恵のある人ほど先読みしてしまいがちなのである。

「このまま話をすれば詐欺だという確証を持たれて、警察に通報されかねないな。すると、捜査の手が入り、逮捕されるかもしれない......」と、どんどんマイナス思考に陥り、話を急停止して私たちを詐欺車から放りだしてくれる。

詐欺師はこちらの思惑を読みながら話を先に進めるわけだが、それを逆手にとって話をやめさせるわけだ。

彼らのアキレス腱は「警察の捜査による逮捕。そして詐欺組織の壊滅」である。

こうなると詐欺ができなくなり、金を詐取できない。

それに行きつかせるような話をするのが、だましの話にブレーキを効かせるコツなのである。

ただし、これだけで終わりにしてはいけない。

大事なのは電話を切ったあとの事後処理だ。

信頼のおける知人や専門家に相談して、意見を仰ぎ、今後の対策を考えておく。

というのも、掛け算型の詐欺ではその後に形を変えて詐欺の電話がかかってくる恐れがあるからだ。

案外、これをおろそかにしている人が多い。

詐欺師がだますための事前マニュアルを準備しているとすれば、私たちもだまされないための詐欺電話への対応マニュアルを準備しておく必要がある。

緊急時には誰に相談するべきなのかを決めておき、さらに消費者ホットライン「188」や「110」や警察の相談専用ダイヤル「#9110」といった、番号にワンタッチで電話をかけられるようにしておくことも必要だ。

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114-H1-damasareta.jpg詐欺をする側の手口や心理、現状、そして「電話の切り方」など身を守る術が全7章にわたって網羅

 

多田文明(ただ・ふみあき)
1965年北海道生まれ。ルポライター。「キャッチセールス評論家」「悪徳商法評論家」「悪質商法コラムニスト」「潜入ルポライター」などとも称される。主な著書は「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)、「電話にでたらこうなった!」(ミリオン出版)など。

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『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』

(多田文明/方丈社)

「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」など、時代は変われど減らない詐欺犯罪。最新の手口や詐欺師の心理など、著者が実際にだまされてみてわかった「だましのプロ」から身を守るノウハウが詰まっています。

※この記事は『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(多田文明/方丈社)からの抜粋です。

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