「大阪のおばちゃん」が詐欺師に負けた!?いつの間にか振り込まされてしまう「還付金詐欺のカラクリ」

新型コロナウイルスに便乗するものも出てくるなど、進化し続ける「詐欺」の手口。そんな詐欺や悪徳商法に詳しいルポライター・多田文明さんの著書『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(方丈社)から、現代の詐欺から身を守る方法を抜粋してお届けします。

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〝大阪のおばちゃん〟が集中して狙われた還付金詐欺の手口のカラクリ

「医療費2万円ほどを、払い過ぎていますね。もうお手続きはなさいましたか?」

市役所職員になりすました男からの電話がかかってくる。

「いいえ」

「それは大変です。お手続きは今日までになりますので、この期間を過ぎますと払い過ぎた医療費は受け取れなくなってしまいますよ」

「そうなんですか!どうすればいいですか?」

「今なら、銀行で直接お手続きをしていいただければ間に合います。いかがいたしますか?」

「手続き、お願いします」

これは「金を戻すから」とウソをついて、逆に金をだまし取る〝還付金詐欺〞と言われる手口である。

ここでは、「今日中に手続きをしないと、お金が受け取れなくなる」と、期限を切って焦らせる手法が使われていると思うかもしれない。

もちろん、それもある。

だが、ここではもうひとつの巧みなだましの心理テクニックが使われている。

おわかりになるだろうか。

それは、役所をかたる人間から「ああしろ」「こうしろ」と一方的に言われれば詐欺かもしれないと疑えるが、金を受け取りたいと思う気持ちにさせた上で、被害者から「どうしたら、お金を受け取れるのか?」と尋ねるように仕向けている点だ。

自ら聞くという行動を取らせているゆえに、本人はなかなかだまされていることに気づけない。

「どうすればよいのか?」と、相手に質問をするように誘導させながらウソの内容を伝える手法は、詐欺のテクニックのひとつだ。

話好きでツッコミの強い人ほど、この形でだまされがちになる。

2016年、これまで「大阪のおばちゃんは振り込め詐欺にはだまされない」と言われ続けてきた大阪などの関西圏で、振り込め詐欺の被害が続出した。

とくに被害が大きかったのは還付金詐欺である。

まさに、おしゃべり好きでツッコミが得意な関西の中高年の女性がターゲットにされてしまったのもうなずける。

「わかりました。ご希望であれば、早急にお手続きに入りましょう。普段お使いの銀行はどちらになりますか?」

「A銀行です」

「少々お待ちください......。それでは〇〇にATMがあります。そちらにカードを持って向かってください。こちらもA銀行の職員に電話をして向わせて、直接に操作方法をお教えします。待ち合わせのために、念のため携帯電話をお持ちください」

「わかりました」

今は、銀行の窓口があるATMでは還付金詐欺への監視の目が厳しくなっている。

そこで、できるだけ警戒の薄いショッピングセンターや無人のATMへ向かうように詐欺師らは指示する。

高齢者が急いで家を出て、指示されたATMの前で待っていると、銀行員から電話がかかる。

「A銀行の者です。すみません。急用で行けなくなりましたので、手続き方法をお電話でご案内します。申し訳ありません」

急に状況が変わったと言い訳をして、電話での操作方法を指示してくる。

もちろん、そもそも銀行員は行くつもりなどなく、あくまでもATMへ誘導させて電話での指示をするための方便だ。

ここにも、多くの人がだまされるポイントがある。

これは後に述べよう。

銀行職員を装った男は次のような指示を開始する。

「それでは、最初にあなた様のカード情報を確認しますので、取引開始のボタンを押してください」

高齢者はATMにカードを挿入し、ボタンを押す。

「はい。押しました」

「次に、残高というボタンを押して、暗唱番号を4桁入力してください」

高齢者は指示されたまま暗証番号を押す。

「今、数字は何個で出ていますか?」

「1・2・3......六つですね」

つまり、ここでこの口座に10万円単位の金が入っていることを詐欺師は知ることになる。

「左は円マークになっていますので、二つ目の数字から三つ読み上げていただけますか」

「654」

「はい、ありがとうございます。お客様の確認が取れました」

ここで詐欺師は、残高が65万円ほどあることを把握すると、たたみかける。

「それでは、次にお振り込み口座の登録になりますので『お振り込みのボタン』を押してください」

「はい、押しました」

「それではまず、こちらから振り込む先の口座をお伝えしますので、ボタンを押してください。お振り込みをする金融機関は〇〇銀行になります」

「はい」

「続いて支店は〇〇支店です......」

こうしてひととおりの口座情報を入力させたあと、振り込み金額の画面で次のような指示をする。

「それでは、お客様の受理番号(お客様番号)を650と入れてください。続けて351。確認番号として1を押してください」

「はい、押しました」

「確認画面が出てきましたでしょうか。ここでも確認のボタンを押してください」

これが還付金詐欺の手口の本丸だ。

本来、「振り込み」は、相手に金を振り込むものだが、さも高齢者に振り込みをするボタンのように思わせながら、先のような手順を踏んでいく。

しかもやつぎばやに指示をしてくるものだから、高齢者は表示された画面をしっかりと確認する間もなく操作させられてしまう。

そして、63万3511円を詐欺師の口座に振り込まされてしまうのだ。

この手口では、「振り込み」というものが、誰から誰におこなうのか、わかりづらい点を巧みに突いている。

たとえば待ち合わせで「駅の改札の右にいる」と言っても、本人の立っている方向が改札を背にして右なのか、改札を前にして右なのか、そこをはっきりさせないと混雑した改札口では双方が行き違いになって、なかなか会えないことになる。

そうした相対的な関係を利用してのだまし方なのだ。

詐欺師にとって、もっとも重要なのは相手の残高を把握すること。

それを悟られないようにするために、この他にも「左から数字を読んでください」と言い、読み上げた数字の一部を「個人番号」などと言いかえて入力させてくることもある。

こうした手口で被害が広がったのだ。

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114-H1-damasareta.jpg詐欺をする側の手口や心理、現状、そして「電話の切り方」など身を守る術が全7章にわたって網羅

 

多田文明(ただ・ふみあき)
1965年北海道生まれ。ルポライター。「キャッチセールス評論家」「悪徳商法評論家」「悪質商法コラムニスト」「潜入ルポライター」などとも称される。主な著書は「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)、「電話にでたらこうなった!」(ミリオン出版)など。

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『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』

(多田文明/方丈社)

「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」など、時代は変われど減らない詐欺犯罪。最新の手口や詐欺師の心理など、著者が実際にだまされてみてわかった「だましのプロ」から身を守るノウハウが詰まっています。

※この記事は『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(多田文明/方丈社)からの抜粋です。

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