新型コロナウイルスに便乗するものも出てくるなど、進化し続ける「詐欺」の手口。そんな詐欺や悪徳商法に詳しいルポライター・多田文明さんの著書『だまされた!「だましのプロ」の心理戦術を見抜く本』(方丈社)から、現代の詐欺から身を守る方法を抜粋してお届けします。
サポートセンターの番号表示を装うウィルス感染しました詐欺の手口
「ビービービー」
パソコンから警告音が鳴り響き、画面には「あなたのパソコンがウィルス感染しています」「セキュリティの問題が発生しました」といった警告メッセージが表示される。
「動画サイトを見ようとしていただけなのに......」
突然の出来事に、利用者はあわてだす。
さらに「あなたのパソコンをロックする」という自動音声のアナウンスが流される。
画面を見ると、「03」から始まる大手IT企業のMS・サポートセンターの電話番号が載ってるではないか。
「ああ、よかった」そこで、電話をかけてみる。
「こちらは、MS・サポートセンターです」
片言の日本語を話す外国人の女性オペレーターが出てくる。
さすが、大手の企業である。
海外のコールセンターでの対応をしているようだ。
「どう〜しましたかあ?」
「ウィルスに感染したようで、警告音が鳴りました」
「わかりました。それではパソコンの状況を確認しますので、これから言うように操作をしてくださいよ。ウィルス感染があるかないかを調べます」
「まず、キーボードの下にある『ウィンドウズ』のマークを押しながら、アルファベットの『R』を押してください」
「はい。押しました」
すると、「ファイル名を指定して実行」の項目が出てくる。
「そこにまず、アルファベットの『A』を入れてください。次に『C』......」と指示していく。
相手の指示どおりに入力して操作していくと、最終的に遠隔操作されてしまうソフトをインストールさせられてしまうのだ。
そして、相手はこちらのパソコンをリモートコントロールしながら、マウスのポインターを勝手に動かして、画面上に赤い〇を書き込むなどして、不安感を煽ってくる。
「勝手にカーソルが動いています!」と言うと、
「安心してください。あなたのパソコンは、当社の安全なサーバーに接続しました」。
パソコンのコントロールパネルを勝手に開き、カーソルで、「停止」部分を差し示しながら、「これはウィルス感染している証拠で、パソコンが停止しています。
このままだと、パソコンが動かなくなりますよ」と言ってくる。
最終的には、1万円から3万円ほどのウィルス駆除のためのセキュリティソフトの費用の名目でクレジット払いするように言ってくる。
当然ながら、この業者は大手のMS社とは何の関係のない業者である。
番組でタレントとともに、この業者へ電話をかけて検証してみた際、相手が「ウィルスに感染している」と脅してきたので、パソコン業者に調べてもらったところ、パソコン自体には何の問題もなく、このウィルス話自体がハッタリであることがわかった。
もし警告の画面が出ても、パソコンをシャットダウンして、もう一度起動させれば元に戻ることがほとんどである。
つまり、「ウィルス感染」を話す詐欺師こそが、新種のウィルスのような存在である。
彼らのウソ話こそ、本来、駆除されなければならないものなのだ。
この業者に電話をかけても、日本人の担当者は出てこず、相手の場所を突っ込んで聞いてみると、ロンドンやパリ、インド、シンガポールなど、外国の場所を言ってくる。
それにもかかわらず、「03」から始まる番号を使って電話をかけている。
つまりIT技術が発達した現在では「03」で始まる電話番号は、全国、いや全世界どこにいても、かけることも受けることもできるようになっているのだ。
そこに詐欺師は目をつける。
「もしもし、こちらは大阪市の国民健康保険課です」着信を見ると「06」から、かかってきている。
だから地元の役所だろう。
そう考えるのは拙速だ。
「オレだけど」と、息子の声で電話がかかってきた。
息子は東京に勤めており、番号も「03」だ。
ゆえに東京に住んでいる息子からの電話だろうと思うのも早計である。
これまで見てきたように、電話番号の表示はいくらでも偽ることができるからだ。
私も詐欺業者に電話をかける際、相手が「0120」のフリーダイヤルを使用していたり、「03」の固定番号から電話がかかってきているはずなのに、相手の声に混じって繁華街の雑踏が聞こえてきて、携帯で話しているのがわかることもある。
今は転送などの手段によって、電話番号の表示をいくらでもカモフラージュできるようになっているのだ。
つまり、番号という〝目に見える形〟(見える化)にして、私たちからの信用を取りつけようとする手口が横行していることを知っておく必要がある。
詐欺をする側の手口や心理、現状、そして「電話の切り方」など身を守る術が全7章にわたって網羅