「睡眠障害対処12の指針」眠りの質を上げるためにやって良いこと、悪いこと

友人や家族と遊んでいても、仕事が気になって楽しめない...休日に、心と体をちゃんと回復できていますか?そんな「毎日忙しい!」と感じるあなたに、精神科医・西多昌規さんの著書『休む技術』(大和書房)から、日常のパフォーマンスが上がる「上手に休むコツ」を連載形式でお届け。きちんと休めば、仕事もプライベートもさらに楽しめるようになります!

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まずは、快眠の基本を押さえましょう

仕事で言えば、「業務規定」を変えれば、たしかに少しは休む時間が増えるかもしれません。とは言え、日本全体の労働条件の好転を待っているだけでは埒があきません。自分で睡眠の量と質の維持を意識することはやはり大切です。

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ここでは、厚生労働省の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会」が作成した「睡眠障害対処12の指針」を元に、快眠の基本について、考えてみましょう。

基本と書いたのは、ここで語られているのが特に衝撃的な方法などではなく、地道な基本作業だからです。12の指針の中でもコントロールしやすいのは、日常生活習慣に関わることです。

食事、運動、入浴、嗜好品など、当たり前の注意が並びます。しかし、大事なのは、こうした日常的な習慣やクセなのです。

朝を明るく、夜を暗く過ごすことは、速やかな入眠には欠かせません。朝の光は睡眠のホルモンであるメラトニンの分泌を促進し、体内時計を調整します。逆に、夜の光は夜の睡眠を浅くします。

寝る前のパソコン、タブレット、スマートフォンなどから照射される「ブルーライト」は、要注意です。

アルコールやタバコ、コーヒー・紅茶を控えることも大切です。アルコールは、寝付きにはいいのですが、夜中から明け方にかけての睡眠を浅くします。カフェインによる覚醒効果はバカにできません。「コーヒーなんて関係ない」と思っていても、深いノンレム睡眠がカフェインの覚醒効果によって減っている可能性もあります。就床前4時間のカフェイン摂取は避けたほうがいいでしょう。

夜に体温を少し上げると深い睡眠を増やす効果があることも研究で示されています。ぬるめのお風呂にはリラックス効果がありますし、生姜や唐辛子なども体温を上げる効果が期待できます。寝る直前に食べて胃に物を入れたのでは、胃や腸も休むことはできません。

「時計遺伝子」は規則正しい食事と運動で発動する

運動と食事も、体内時計の正しいリズムづくりには欠かせません。体内時計にいちばん影響を与えるのは光ですが、光以外の要素、たとえば規則正しい食事や適度な運動も体内時計の調整に重要な役割を担っています。

体内時計をつかさどる時計遺伝子は、脳だけでなく胃や腸、肝臓、骨などすべての細胞の中にあることがわかっています。食事によって胃腸が受ける刺激や、運動で骨や筋肉に負荷がかかることなどが、からだの内部に働きかけ、適切な時間調整をおこなっているのです。

「睡眠障害対処12の指針」には、ほかにも睡眠薬の使い方などが書かれていますが、基本事項は今、お話ししたとおりです。しかし、睡眠不足症候群ならば、睡眠時間の確保が自然な対処法です。ベッドに入る時間をいきなり早くしても眠れませんが、ほんの30分早めるくらいならば、やってみられるのではないでしょうか。

しかも、毎日でなくてもいいのです。

できるところから取り組んでいくぐらいの姿勢が、睡眠と上手に付き合うコツでしょう。なんといってもわたしたちは、まさに死ぬまで睡眠と縁を切ることは不可能なのですから。

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「睡眠障害対処12の指針」眠りの質を上げるためにやって良いこと、悪いこと 055-syoei-yasumu.jpg科学的根拠と臨床経験を基に、過ごし方や取り方など「休み」について、5章にわたって徹底解説

 

西多昌規(にしだ・まさき)

1970年、石川県生まれ。精神科医、医学博士。早稲田大学スポーツ科学部学術院准教授。東京医科歯科大学卒業。精神科専門医、睡眠医療認定医。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。主な著書に『精神科医が教える「集中力」のレッスン』『感情に振り回されない技術』(ともに大和書房)などがある。

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『休む技術』

(西多昌規/大和書房)

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※この記事は『休む技術』(西多昌規/大和書房)からの抜粋です。

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