【理想の間取り】「寝室」は通気性の良さと小物用の戸棚を第一に考える

多くの人にとって人生で一番大きな買い物である「家」。老後の過ごしやすさなど、いろいろ考えて建てたのに、しばらく暮らすと不便な部分がチラホラ...。その理由の一つは「間取りのプランニング不足にある」と現役工務店社長・窪寺伸浩さんは言います。今回は、『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』(あさ出版)から、「家と人生の関係、理想の間取り」について連載形式でお届けします。

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人生の3分の1を過ごす【寝室】

「寝室」は「休息の場」「憩いの場」であり、明日への活力を蓄える大切な場所です。住宅は本来、寝るためにつくられたといってもいいでしょう。外敵や自然の脅威から身を守り、何ものにも邪魔されず、ゆっくり眠ることが家の目的でした。文明社会の現在でもそれに変わりはありません。

では、健康に良く、明日への活力を養う寝室には、どんな条件が必要なのでしょうか?

朝早くから活気のある住まいは、繁栄を約束されたと言ってもいいでしょう。「早起きは三文の徳」と言うように、精神に与える効果、肉体に与える効果、ともに、お金に代えられない大きな利益をもたらします。まだ寝床にもぐっている子どもたちは、眠い頭の奥に母親の炊事の音を聞くと、ホッと安心するものです。

「おかあさんは、きょうも元気に働き出した」
「おとうさんも、もう起きたかな?」

このような安心感が両親への感謝の気持ちにつながり、その家の幸福を生み出していくのです。夫婦が気持よく目覚めることのできる寝室こそ、「幸福を生む寝室」と言うことができるでしょう。

人間は寝ていても空気を吸っています。もし3分間、空気のない状態に置かれたら、人間は確実に死を迎えます。つまり、寝室における通気性は極めて重要な条件です。人間の活力の源は、純度の高い空気です。眠っていても、心臓は一刻も停止することなく、体の隅々まで酸素によって浄化された血液を送り続けています。順調な心臓の動きは安眠の条件なのです。

ところで「健康法」というと、すぐに「食事療法と適切な運動」と思われる方が一般に多いようです。たしかに、正しい食事療法と適度な運動は、肥満を防ぎ、心臓への負担を軽くします。しかし、このような健康法を実行したとしても、密閉された寝室で、酸素が薄くなった空気と自分が吐き出した炭酸ガスを吸って眠っているとしたら、せっかくの健康法もまったく意味がなくなってしまいます。しかも、これが毎日繰り返されるのです。

このような状態が何年も続けば、その人の体力や体質によっては、何らかの好ましからざる症状が出てくるのも当然のことでしょう。

アルミサッシの登場が、このような通気性の悪い、密閉された寝室をつくってしまうことになりました。

かつての木製の建具の場合は、空気の入れ替えが自然に行われ、寝室の空気を常に新鮮に保っていたのです。たしかに、冬の冷たい隙間風はなくなりました。しかし、それと引き替えに、寝室の新鮮な空気をなくしてしまったのです。人生の3分の1を過ごす寝室です。健康と長命は寝室でつくられます。その通気性には充分に配慮して、計画を立てなければなりません。

夫婦の寝室は、夫婦だけの世界です。誰にも遠慮することなく充分にくつろぐためには、密室である必要があります。窓はもちろん、扉にも鍵をつけ、不測の事態に備えなければなりません。また、地震に対しても、充分気を配ってください。例えば、壁の額や棚や家具の上に置いた物が落ちて来ても安全であるような配慮、家具などが倒れないような配慮も必要です。特に寝室の電灯器具は、大きい物、重い物は避けるべきでしょう。

夫婦だけの部屋には夫婦だけの身近に置く品物があると思います。また、他の人には見せたくない物もあるでしょう。そのようなものから下着類に至るまで、寝室関係の小物すべてを収納できる戸棚は、ぜひ付けることをおすすめします。夫婦がいつまでも仲良く愛し合うことは、最高の幸福です。そのためには愛し合える環境が必要です。いつも整理され、気分の良い寝室であることも、大切な条件です。

さて、室内の壁や天井などのデザインが、人間の心理に与える影響もまた無視できません。刺激を避け、神経を癒やす、寝室にふさわしいデザインや色や柄を選んでください。しかし、寝室は完全な個室でもありますから、趣味や趣向を存分に発揮されてもよい場所です。年齢に応じて室内の装飾を考えてください。

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【理想の間取り】「寝室」は通気性の良さと小物用の戸棚を第一に考える 039-syoei.jpgキッチンやリビングから玄関に階段まで、あらゆる「理想の間取り」が分かります

 

窪寺伸浩(くぼでら・のぶひろ)

1961年、東京都生まれ。台湾、中国などから社寺用材の特殊材の輸入卸を行うクボデラ株式会社代表取締役社長。東京都神棚神具事業協同組合理事長。「幸福を生む住まいづくり」を提唱する環境研究グループ「ホーミースタディグループ」の中核メンバー。神棚マイスターとしても活動する。著書に「なぜ成功する人は神棚と神社を大切にするのか」(あさ出版)がある。

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『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』

(窪寺伸浩/あさ出版)

自分の年齢や家族の人数、暮らし方や重視することの変化にうまく対応する「家」とは、どうあるべき?長い人生を快適に暮らしていくための「間取り」と「素材」の決め方を、現役の工務店社長が教える「家づくり」の解説本。家族が長く、幸せに住める住まいづくりの方法が分かります。

※この記事は『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』(窪寺伸浩/あさ出版)からの抜粋です。
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