【理想の間取り】「ダイニング」はお母さんとの距離で決まる

多くの人にとって人生で一番大きな買い物である「家」。老後の過ごしやすさなど、いろいろ考えて建てたのに、しばらく暮らすと不便な部分がチラホラ...。その理由の一つは「間取りのプランニング不足にある」と現役工務店社長・窪寺伸浩さんは言います。今回は、『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』(あさ出版)から、「家と人生の関係、理想の間取り」について連載形式でお届けします。

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【ダイニング】主婦の声が届くように

家族の一日のスタートは朝食のテーブルから始まります。さわやかな気分で仕事に出かけ、学校へ向かう。毎日のスタートがこのようなものであれば、その一日の充実の度合いも違ってくるに違いありません。つまり、一日の活力は朝のスタートによって大きく左右されるのです。

「ダイニング」の計画が、いかに大切かは改めて申し上げるまでもないことでしょう。「幸福を生む一日」のスタートは朝の食事から。自然の恵みを取り入れたダイニングは、夕食の団欒を、より膨らませることにもなります。

「家族の断絶」という言葉が使われるようになって、もう随分たちました。世の親たちの誰一人として「断絶」を望む人はいないでしょう。そして、それ相応の努力は行われてきたに違いありません。しかし、どうでしょうか?

それにもかかわらず、その「断絶」の幅は広がり、傷はさらに深くなっていくように思えてならない今日この頃です。

「家族の断絶」の最も大きな理由は、意思の疎通がうまくゆかない、つまり、心が通じ合わないことにあると言っていいでしょう。なぜ通じ合わないのか?いろいろな原因があるに違いありません。しかし、その原因の一つに「住まいの構造」があることに気づく人は、まだまだ少ないようです。

例えば、親と子どもの例をとってみましょう。子どもは、時に、親の存在を鬱陶しく思うことがあります。そのくせ、親の意識を自分から離したくないという気持ちも持っています。

面と向かうと素直になれない、できれば、相手の顔を見ずに話したい時もある。真正面から注意されると、心ならずも反発したくなる。どなたでも、そんな経験はおありでしょう。もちろん、これらの心の行き違いを解決するのは「心」です。

しかし、「住まいの構造」、つまり、「間取りの仕組み」によって、それを助けることもできるのです。具体的な仕組みについては、私たちはそれを「主婦の声が届く関係」と呼んでいます。直接、面と向かわなくても話ができるようなキッチン・ダイニング・リビングの関係、しかも、完全に区切られることのない関係。

仕事に忙しい夫、それぞれ独自の世界を持ち始めた子どもたち、これらの家族一人ひとりが主婦と何らかのコミュニケーションを、常に、持ち得ることが大切なのです。

私たちは、住まいを単なる「入れ物」とは考えません。そこにほんとうの幸福が生まれなければ、それは「住まい」ではないと考えています。

私たちが「幸福を生む住まい」と申し上げる第一のポイントは、まさに、このような人と人とのコミュニケーションに充分に配慮した住まいをつくらなければならないと考えるからなのです。

私たちが具体的な設計の段階で申し上げる提案や意見は、すべてこのような考え方を第一のポイントとして念頭に置いたものであることを、ご理解いただきたいと思います。

ダイニングの収納棚に何を入れるか、それはその家庭によっていろいろなケースが考えられるでしょう。お茶の道具・コーヒーセット・アルコール類・グラス・菓子箱・家計簿、その他の小物類や趣味のものなど、ダイニングに置いておきたいものはいろいろ考えられます。

ダイニングは単に食事をする場所だけでなく、炊事以外の主婦の作業の場となることもあるからです。このようなものを収納する戸棚をどこにつくるか、どこに置くかについて、あらかじめ計画の段階で考えておくことが望ましいでしょう。

こうした細やかな配慮が、主婦の日常の精神衛生に少なからぬ影響を与えます。主婦の明るい表情は「家庭の宝」です。家族一人ひとりの悩みや不安は、主婦の明るい笑顔で癒やされ、元気づけられるのです。主婦にストレスがたまったり、健康をそこねさせては、その笑顔も曇りがちです。主婦の健康は家族全員の健康に影響します。

ダイニングはキッチンと同じように、住まいの中でも極めて重要な部分ですから、特に慎重に研究し、検討を重ねていただきたいと思います。

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【理想の間取り】「ダイニング」はお母さんとの距離で決まる 039-syoei.jpgキッチンやリビングから玄関に階段まで、あらゆる「理想の間取り」が分かります

 

窪寺伸浩(くぼでら・のぶひろ)

1961年、東京都生まれ。台湾、中国などから社寺用材の特殊材の輸入卸を行うクボデラ株式会社代表取締役社長。東京都神棚神具事業協同組合理事長。「幸福を生む住まいづくり」を提唱する環境研究グループ「ホーミースタディグループ」の中核メンバー。神棚マイスターとしても活動する。著書に「なぜ成功する人は神棚と神社を大切にするのか」(あさ出版)がある。

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『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』

(窪寺伸浩/あさ出版)

自分の年齢や家族の人数、暮らし方や重視することの変化にうまく対応する「家」とは、どうあるべき?長い人生を快適に暮らしていくための「間取り」と「素材」の決め方を、現役の工務店社長が教える「家づくり」の解説本。家族が長く、幸せに住める住まいづくりの方法が分かります。

※この記事は『いい住まいは「間取り」と「素材」で決まる』(窪寺伸浩/あさ出版)からの抜粋です。
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