上手に気遣いしながら、つい「いい人」になって、ツラくなってしまっている人いませんか? そこで、カウンセリング歴25年、8万件を超える臨床経験のカリスマ心理カウンセラーの最新作『「ひとりで頑張る自分」を休ませる本』(大嶋信頼/大和書房)のエッセンスを、連載形式でお届け。脳科学と心理学に基づいた「自分中心」になる生き方で、周囲も自分も輝かせる秘訣をご紹介します。
報われない人生を、これからも選びますか?
ある女性が「人と親密になれない」という悩みでカウンセリングにいらっしゃいました。
お話を聞いてみると、職場でも同期の人はどんどん出世しているのに、彼女だけはいつまでも同じポジションで出世できずにいます。
そして、仕事で困っている人がいたら、その人の仕事を助けてあげているのに「ちっとも感謝されないし、手柄をすべて持っていかれてしまう」という状況になっていました。
自分の抱えている仕事はあるのだけれど、周りの人が仕事を頼んでくると「断れない」と思ってしまって、自分の仕事よりも相手に頼まれたことを優先してしまう。
自分を犠牲にしてまでみんなのために頑張っているのに「あれ? みんな先に帰っちゃった!」と職場で疎外感を抱くようになったそうです。
みんなは飲みに行っているのに、なぜか自分だけ誘われないでポツンと一人で仕事をし続けることも多いといいます。
プライベートでも、付き合っている恋人に一生懸命に尽くしているのに、「なんでそんなに冷たい態度になるの?」と思うほど、いきなり不機嫌になられる。
こんなに気を遣っているのに自分でも不思議になるほど。
他の人がいると恋人は笑顔になるのに、自分といると表情が能面のようになって、ちっとも笑顔を見せてくれなくなるし、どんどん気持ちが離れていってしまう。
そして、関係が長続きしない。
彼女が、そうしたつらい心境を友達に相談すると「あんたは『いい人』過ぎるんだって。そんなのやめちゃいなよ!」とアドバイスされます。
だから「もういい人はやめだ!」と決心して職場に向かっても、やっぱり困っている人がいると「助けてあげなきゃ!」というお助けモードになって、また元に戻ってしまうのです。
「いい人」は、「いい人」になればなるほど損をしたり、周りと違う扱いを受けてしまったり、嫌われてしまったりします。
でも、「いい人」をやめてしまったら、みんな自分から離れてしまう怖さがあるからやめられません。
「『いい人』をやめたら嫌われてしまうと思っているから、不安でやめられない」と自分で思っていますが、実際は本能的と言っていいほど、瞬時に「いい人」になってしまって、自分でコントロールできないのです。
「『いい人』にならない」と固く決意をしても、相手のなんらかの反応や態度で一瞬にして「いい人」に戻ってしまう。
だから「これは自分ではどうすることもできないものなのかも......」と悩んでしまうんです。
周りの人を傷つけているわけでもなく、間違っていることをやっているわけでもありません。
だから、「まあ、いいか!」とそのままにしてしまうのですが、「いい人」は確実に人間関係にも自分の人生にも、「損」を招いてしまいます。
それでも「いい人」は、「他人を困らせているわけじゃないからいいか!」と諦めてしまうんです。
冒頭の女性は、自分の意志で「いい人」をやめるのはなかなか難しいものがありました。
ただ、私とのカウンセリングをきっかけに「いつの間にか『いい人』をやらなくなっていた!」と変わることができました。
すると、職場の雰囲気が変わって、みんなのチームワークがアップし、生産効率が上がりました。
そして、恋人からもいつも冷たい態度を取られて悲しい思いをしていたのに、「あれ?わがままをちょっと言っても相手が追いかけてきてくれる!」と気付いてびっくりしました。
「自分が『いい人』になってあんなに気を遣っていた時は、こんなことは考えられなかった!」
と驚くほど相手が優しくなりました。
友人関係も「いい人」をやめたら、彼女を不快にさせるような人は離れていき、本当に分かり合える人が近寄ってきました。
そういう時、「『いい人』になっているせいで、友人関係で足を引っ張られていたんだ!」ということが感じられるようになります。
なぜなら、ものすごく自由に身も心も動けるようになっていて、楽しめるように変化したから。
もし、この女性が「いい人」のままだったら?
きっと今でも自分を犠牲にして、職場の人のために他人の仕事をやり続け、不機嫌な恋人のためにあくせく尽くして、不快にさせる友人のために必死に頑張り続けていたことでしょう。
これを読んでいただいているあなたも、もしかしたら当てはまるものがあるかもしれません。
嫌われることは怖いですか?
人のために何かしないと落ち着きませんか?
それはどれも思い込みです。
そんなものがなくても、あなたはすでに愛される価値のある人間です。
「そんなわけない。人に気を遣わなくていいなんてありえないでしょ?」
そんな疑問を持つ人もいることでしょう。
ですが、今回の毎日が発見ネットでの連載を通じて、きっと理解していただけるはずです。
先ほどの「いい人」だった女性は、「いい人を演じないほうが物事って本当にうまく回るんですね!」と笑顔で話してくださいました。
「いい人」をやめたくてもなかなかやめられなかったのが、その仕組みを知って、ちょっとしたコツを掴むことで「いつの間にか『いい人』を演じなくなった!」と言えるようになれます。
そして、どんどん自由になって、自分と一緒に周りの人たちも自由に生きていけるように変わることができるんです。
第3章「自己肯定感をジャマする万能感を捨てる」、第6章「『嫌われる』が怖くなくなる」など、「いい人」をやめたくてもやめられない人のための「目からなうろこ」のメソッドで、心が晴れる一冊です