「食後にお皿をまとめる」「落し物を自分の物にしない」「見えないところで努力する」――。日本で長らく育ってきた方であればきっと普通のことだと感じるでしょう。でも、外国人からしてみると、実は想像できないほど不思議な行動だそうです。「幸せに生きるコツは日本で見つけた」という、来日30年を超えるアメリカ人女性が気付いたのは、この行動や考え方は世界に誇れるということ。外国人から見た、「日本人の本当のすごさ」についてお届けします。
※この記事は『日本人がいつまでも誇りにしたい39のこと』(ルース・マリー・ジャーマン/あさ出版)からの抜粋です。
想像力が「思いやり」になる国
ニューヨーク、デリー、ホノルルなどの、どこの都市へ行っても、大きなクラクションの音が頻繁に聞こえてきます。ところが、東京は街のなかをゆっくり散歩していても、クラクションの音があまり聞こえません。
以前、「ビッ」という短いクラクションの音を日本で聞きました。
青信号なのに20秒ほど待っても動かない前の車に対して、「信号が変わっているよ」と声掛けするような、後ろの車からのちょっとした音でした。
日本のどこへ行っても、クラクションといえばこのくらいです。警告、クレームではなく、合図とか、気づかせるためのサイン、のように聞こえます。
クラクションが少ないのは、日本人が、独特の「想像力」を備えているからです。まず人に迷惑をかけないようにと考える。そして、何が人の迷惑になるか、それをしないためにはどんな振る舞いが良いかを、それぞれが想像する――これが日本人のルールです。
人に迷惑をかけないためには、我慢(他人への忍耐)強さも必要になります。この我慢強さを通して、日本は集団調和がじつにとりやすい環境となり、独特の団結力が維持できているのでしょう。
団結力といっても、日本では、スポーツのチームのような勝利を勝ち取るためのハードなチームワークではなく、全国どこでも見られる「平凡な思いやり」のことです。
私は、日本人の我慢強さと、思いやりの美しさを実感しています。アメリカ人は一般的に、我慢が苦手です。気持ちが高まると、総合的な視点で深く考えずに、感情的に行動を起こしてしまいがちです。
行動力や実行力として評価されることもありますが、判断ミスに結びつくシーンもたびたびあります。
ボスの判断に我慢できず、すぐに転職する。相手の浮気に我慢できず離婚する。学校の教育方針に納得できず、子どもを転校させてしまう。時には、長すぎる牧師の話に我慢できず、教会を変える。前の車が、自分が正しいと思うようなタイミングで走り出さなければ、クラクションを大きく鳴らすのです。
すぐに「白・黒」を判断して、即動き出すのはアメリカ流だと思います。しかし日本人は、いったんまわりに対しての影響を考えます。「いまクラクションを鳴らすと、歩行者がビックリするかもしれない」「前の車は高齢者かもしれない」そんなふうに、相手や状況に対して想像力を働かせ、ちょっと様子を見る習慣があるのです。
この習慣が、転職の際に慎重なシミュレーションをしたり、仕事ではクライアントの利益を考えたり、部下の能力と仕事量を考慮したりするなど、さまざま面で役立っているようです。
以前、会議に入る前に同僚が「キレないでいこうね」と声をかけてくれました。すぐキレるのが、私の短所でもあります。
ダイナマイトの導火線が短すぎて、クラクションをすぐに鳴らしてしまいがちなところを直して、日本人のように信管を長く延ばし、余裕をもつことが、仕事の面でもより良い結果を生むのだと考えています。
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39の「日本人の特長」がつづられた本書は、読むだけで何だかうれしくなります