DVやハラスメント、性犯罪に娘のいじめ...「女性が巻き込まれやすいトラブル」は数多くあります。でも、そうした悩みを解決したくても、「誰かに相談したら逆に悪化するかも...」とどうしていいかわからない人も多いと言います。そこで、弁護士の上谷さくらさんと岸本学さんの著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より、女性の味方になってくれる「法律」についてご紹介。ぜひ、ご自身やお子さんがトラブルの参考にしてください。
【事例①】
駅のエスカレーターで、女子高生のスカートの下にスマホを差し入れている男がいた。
【ANSWER】
駅のエスカレーターは、公共の場ですので、どこの条例でも犯罪となります。
都道府県によって規制が違う
盗撮そのものを取り締まる法律はありません。
ただし、各都道府県の条例によって規制されています。
そのため、規制される内容は都道府県ごとに異なります。
たとえば、会社の事務室で、社長が女性社員のスカートの中を盗撮した場合、東京や愛知では処罰されますが、ある県では罪に問えません。
「誰かの家」などの私的スペースでの盗撮は、条例によって規制されていないことがあるからです。
「公共の場」であれば、どこの条例でも罪に問えるでしょう。
処罰も、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都、愛知県など)」や、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金(鹿児島県、秋田県など)」など、都道府県によって罪の重さが違います。
条例で規制の対象になっていない場合でも、軽犯罪法を適用できる可能性があります。
ただし、軽犯罪法は、場所が風呂場など「通常衣服をつけないでいるような場所」に限定されているうえ、罰則が「拘留・科料」しかありません。
条例に比べてかなり軽いといえます。
状況によっては刑法の「建造物侵入罪」にあてはまる場合もあります。
たとえば、男性が会社内の女性トイレで盗撮した場合、正当な理由がないのに女性トイレに入ったことを罪に問うものです。
ただし、この場合の被害者は、建物の管理者です。
盗撮された女性は刑事事件の被害者とはなりません。
罰金と科料の違い
罰金も科料も、お金を支払わせる刑事罰です。
罰金と科料の違いは、金額の大きさです。
罰金は1万円以上(刑法第15条)、科料は1000円以上1万円未満です(刑法第17条)。
科料は、比較的軽い罪の罰則ということになります。
ただ、たとえ1万円未満でも、納付しなければ、罰金と同じペナルティが科されます。
財産を差し押さえられたり、刑務所に入って一定の作業をしたりしなければなりません。
【事例②】
会社の更衣室のロッカーで、小さなボタンのようなカメラを見つけた。警察に届けたところ、私の着替える様子が撮影されていた。
【ANSWER】
会社の更衣室は公共の場ではなく、私的なエリアです。そのため、地域によっては条例でも罪になりません。ただし、刑法の「建造物侵入罪」にはなります。会社の女性更衣室に正当な理由なく侵入しているからです。しかし、建造物侵入罪の被害者は建物の管理者ですので、会社の社長が侵入して盗撮した場合、盗撮した社長が被害者という矛盾が生じます。
【事例③】
学校のトイレの個室に入り、なにげなく上を見たら自撮り棒が出ていて、トイレの様子を盗撮されていた。
【ANSWER】
生徒が撮っていた場合、加害者も被害者も、ともに生徒ということになります。この場合、条例違反に該当する場合でも学校によって対応が大きく変わることが考えられます。残念ながら、生徒どうしの盗撮は増加傾向にあります。不審なことを感じたら、先生や親に相談しましょう。また、個室に入ったら自撮り棒が覗いていないか、エチケットボックスなどに変なものがないかを確認する習慣をつけましょう。
写真を消されたら証拠がなくなる?
盗撮した相手がその場で動画・画像を消去しても、警察で復元できます。
その後の流れは、ほかの刑事事件と同じです。
加害者が逮捕されるか、任意同行されるかして捜査がなされ、証拠が集まれば立件されます。
示談が成立すれば不起訴になることもあります。
気づくわけない!進化する盗撮
盗撮機器は、巧妙なつくりになっているものも多く、ひと目でカメラと気づきにくいものばかりです。
また、日に日に進化しています。
通販サイトですぐ購入することもできてしまいます。
なるべく情報を集めておくようにしましょう。
【あなたを守る法律】
東京都迷惑防止条例 第5条 粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止
1 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
②次のいずれかに掲げる場所、または乗り物における人の通常衣服で隠されている下着または身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、もしくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部、または一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗り物、学校、事務所、タクシーその他不特定、または多数の者が利用し、または出入りする場所、または乗り物
ほかにも書籍では、恋愛・くらし・しごと・結婚など6つの章だてで、女性に起こりうる様々なトラブルに「どう法的に対処すべきか」が解説されていますので、興味がある方はチェックしてみてくださいね。
六法やDV防止法、ストーカー規制法...。女性の一生に寄り添う大切な法律が、6章にわたって解説されています。