「すぐ返すからさぁ」終わりなき親子の借金・・・原因は親かも!?/イヤな人間関係(8)

ご近所や家族、パートナーや職場の人間関係に、もううんざり...。そんなあなたに贈りたいのが、臨床心理士の高品孝之さんの著書『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)。「人間関係はRPG(ロールプレイングゲーム)。ルールを知り、役割をうまく演じれば対応できる」という高品さん考案のトラブル攻略法を厳選して、連載形式でお届けします。

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「泥棒に追い銭」ゲーム

「泥棒に追い銭」ゲームは、お金を貸してほしいと頼まれると断ることができず、周りの人たちがいくら説得しても、繰り返しお金を貸してしまうゲームです。

お金を貸す人は貸しても貸さなくても、嫌な思いにとらわれてしまいます。

このゲームは、仕掛け人がお金を貸すため、仕掛け人がカモのように見えます。

※以下文中に出てくる用語について

・仕掛け人:人間関係ゲームを仕掛ける人

・カモ:仕掛けられる人

息子にお金を貸し続ける母親(視点:仕掛け人)

高田美香さん(65歳)は、息子の武史さん(30歳)がお金を借りにくる度に、断ることができずに貸してしまいます。

美香さんは3年前に夫を亡くし、今は年金暮らしをしていて、お金がそんなにあるわけではありません。

夫と2人で老後のためにコツコツと働いて、やっと貯めたわずかばかりの貯金があるだけです。

息子はそのお金を目当てにやってきます。

息子は「すぐに返す」と口では言いますが、一度も返してもらったことはありません。

家に来る度に、2~3万円を渡しており、すでに貸したお金は100万円近くになってしまっていました。

親戚からは、「いいようにたかられているなあ。武史は最初から返すつもりなどないよ。

本人のためにもならないし、もう絶対貸してはだめだよ」とアドバイスを受けますが、それでも、美香さんは武史さんの困った顔を見ると、つい貸してしまいます。

「泥棒に追い銭」ゲームの特徴は、仕掛け人が、お金を貸しても貸さなくても嫌な気分に駆られることです。

お金を貸してしまうと、「また、貸してしまった。本当に返してくれるのだろうか」というイライラした気分になり、貸さなかった場合は、「自分は悪いことをしているのじゃないだろうか」という罪悪感に駆られます。

この罪悪感から、お金を何度も渡してしまうのです。

仕掛け人は、自分の中にある、物事を楽しんだりする「子どもの心」を放棄した人に多いです。

美香さんは、夫と2人で汗水流して働き、美香さん自身が楽しいと思えるうきうきした生活を送ってきませんでした。

そのため、子どものように楽しんでみたいという思いが心のどこかに残っていて、それを他人(息子)に満たしてもらおうと、このゲームを行っているのです。

美香さんは、もっと人生をエンジョイしたかった思いを、武史さんを通じて果たしているというわけです。

ただ、迷惑を感じているのも事実です。

「泥棒に追い銭」ゲームの進行

「泥棒に追い銭」ゲームは、次のように進行します。

1.前提

(1)「金銭に困っている」と頼み込んでくる人(カモ)がいる

(2)仕掛け人は、昔、楽しむことを犠牲にしたり、放棄した人に多い

(3)カモは、お金を借りに来る人に多い

2.事件(混乱)が起こる

家族や周りの人たちから非難される・取り立てに追い詰められる

3.結末(最終的にどのようになるか)

(1)仕掛け人が、何度もお金をとられていると怒る

(2)仕掛け人が自己嫌悪に陥る。借金の尻ぬぐいをさせられることもある

【次ページ:「泥棒に追い銭」ゲームから抜け出す方法】

 

高品孝之(たかしな・たかゆき)
1960年北海道生まれ。臨床心理士。一級交流分析士。博士(教育学)。早稲田大学国文科卒業後、高校の教員になるも人間関係のトラブル解決の困難さを目の当たりにし、心理学を学ぶ。北海道大学大学院教育研究科博士後期課程を修了後、30年間、高校の現場で心理学的手法を用いて、生徒と生徒、生徒と親、親と親など、さまざまな人間関係のトラブルを解決してきた。

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『イヤな人間関係から抜け出す本』

(高品孝之/あさ出版)

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※この記事は『イヤな人間関係から抜け出す本』(高品孝之/あさ出版)からの抜粋です。
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