ママ友に「喧嘩はやめて!」で、なんで私が一番イヤな思いするの・・・!?/イヤな人間関係(5)

ご近所や家族、パートナーや職場の人間関係に、もううんざり...。そんなあなたに贈りたいのが、臨床心理士の高品孝之さんの著書『イヤな人間関係から抜け出す本』(あさ出版)。「人間関係はRPG(ロールプレイングゲーム)。ルールを知り、役割をうまく演じれば対応できる」という高品さん考案のトラブル攻略法を厳選して、連載形式でお届けします。

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「法廷」ゲーム

「法廷」ゲームは、2者の争いに第3者が仲裁や調停に入ることで、3人が裁判所の原告役・被告役・裁判官役を担ってしまうゲームです。

裁判官役は、判決を下せずにカモにされ、原告役・被告役の双方から責められることになります。

※以下文中に出てくる用語について

・仕掛け人:人間関係ゲームを仕掛ける人

・カモ:仕掛けられる人

ママ友にはさまれる(視点:カモ)

ある日、ママ友の青田洋子さん(37歳)と赤木京香さん(38歳)が、口喧嘩をしていました。

それを見た金田美穂さん(38歳)が、「喧嘩はやめてください!」と喧嘩を止めました。

すると、青田さんと赤木さんは、「赤木さんが悪いのよ! 私の娘(良子)のことを悪く言ったんだから」

「失礼ね。悪くなんて言っていないわ。私は事実を伝えただけだもの」と言い争います。

金田さんは2人の仲裁に入るべく、口喧嘩になった原因を聞いてみました。

青田さんは、「今日は、習い事のピアノだったんだけど、赤木さんが良子はピアノが下手だからもっと練習したほうがいいって言ったの。赤木さんにそんなふうに言われる筋合いはないわ」と主張します。

赤木さんは赤木さんで、「うちの美香(娘)は、ピアノがうまくなりたいから1日に3時間も練習をしているの。だからもっと練習すればいいのにと言っただけよ」と悪気もなく言います。

金田さんは、「まあまあ、ピアノのプロになりたい人もいれば、趣味で弾いている人もいるんだし、赤木さんもそんなに目くじら立てなくてもいいじゃないですか」と、赤木さんを諭します。

しかし、赤木さんは金田さんの言葉に対し、「別に美香だってピアノのプロになりたいわけではないわ。自分は下手だと思っているから練習しているだけよ。下手なら練習しないと」と金田さんにも意見します。

そこに青田さんが口をはさみ、「なんで金田さんにいろいろと言われなくちゃいけないの? あなた関係ないじゃない」と金田さんを攻撃してきました。

すると、赤木さんも、「たしかに。なんで口をはさんでくるの? 金田さんがこの問題を解決してくれるの?」と続きます。

金田さんは、「いや、青田さんと赤木さんが喧嘩しているから止めなきゃいけないと思って......」と口ごもってしまいました。

「法廷」ゲームは、3者が原告役・被告役・裁判官役のような立場をとって展開されるゲームです。

この事例の場合、原告役は娘を批判された青田さん、被告役は青田さんの娘を批判した赤木さん、裁判官役は喧嘩の仲裁をした金田さんです。

被告役(場合によっては原告役)は、もともと自分に非があるのに、裁判官役をうまく操作して、自分を有利な立場に持ち込みます。

そうして、裁判官役が有罪判決を下せない状況に追い込みます。

「法廷」ゲームの仕掛け人は、自分の都合が悪い時に、兄や姉、親の権威を借りて、うまく振る舞おうとしてきた人に多く、なんとか権威ある者を味方につけて相手をやり込めようとした経験が無意識に残っているのです。

「法廷」ゲームの進行

「法廷」ゲームは、次のように進行します。

1.前提

(1)仕掛け人が悪い立場に陥る時、権威ある者(裁判官役)の助けを借りようとする

(2)仕掛け人は、権威ある者に力を借りたり、権威ある者をやり込め、自分を有利にする

(3)カモは、裁判官役を引き受けやすく、他人のことをよく考える「お人よし」に多い

(4)原告役・被告役・裁判官役の間で話し合いが行われる

2.事件(混乱)が起こる

(1)裁判官役が、原告役または被告人役どちらかの肩を持った場合、混乱が起きる

(2)客観的に正当である場合も、被告役(場合によっては原告役)のごね得になる

3.結末(最終的にどのようになるか)

(1)被告役(場合によっては原告役)が勝利や優越感を得たり、得意気になる

(2)場合によっては、原告役・被告役が共同で裁判官役を糾弾し、裁判官役が自己卑下する状態(ラケット感情)などに陥る

「法廷」ゲームから抜け出す方法

それでは、「法廷」ゲームから抜け出すためにはどうしたらいいでしょうか?


●4つのゲームの終わらせ方

(1)ミスをしない

(2)仕掛け人の否定的な気持ちに反応しない

(3)大人の対応を心掛けて事実を告げる

(4)ゲームの場から離れる


「法廷」ゲームから抜け出すためには、裁判官役にならないよう、(4)「ゲームの場から離れる」のが最も有効です。

もし、裁判官役になってしまったら、(3)「大人の対応を心掛けて事実を告げる」といいでしょう。

先ほどの事例の場合、裁判官役になってしまい、2人に攻撃された金田さんは、「2人が口喧嘩をしていたので、止めようと思っただけで、どちらかの味方につくなど、そういうことはしません」と毅然と言えばいいのです。

ほかの対処方法である(1)「ミスをしない」は、ゲームに巻き込まれた時点で、ミスをしようがしなかろうがゲームは進められていくので無理でしょう。

(2)「仕掛け人の否定的な気持ちに反応しない」は、仕掛け人が2人いる場合は難しいので、これでは対処できません。

【最初から読む】誰かの「カモ」になってしまう3つの原因

【まとめ読み】「イヤな人間関係から抜け出す本」記事リスト

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心理学の理論をもとにした10のゲーム。5章にわたって人間関係のルールとトラブル攻略法が解説されています

 

高品孝之(たかしな・たかゆき)
1960年北海道生まれ。臨床心理士。一級交流分析士。博士(教育学)。早稲田大学国文科卒業後、高校の教員になるも人間関係のトラブル解決の困難さを目の当たりにし、心理学を学ぶ。北海道大学大学院教育研究科博士後期課程を修了後、30年間、高校の現場で心理学的手法を用いて、生徒と生徒、生徒と親、親と親など、さまざまな人間関係のトラブルを解決してきた。

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『イヤな人間関係から抜け出す本』

(高品孝之/あさ出版)

他人を陥れたり、身内でごたごたしたり、人間関係のうんざりする状況…どうにかしたい! そんなときに使える心理学を基にした「トラブル回避術」を、身の回りでよくある人間関係のパターン別に解説してくれる攻略本。人間関係をゲームと捉えてうまく立ち回れば、意外とスムーズに解決するかも!

※この記事は『イヤな人間関係から抜け出す本』(高品孝之/あさ出版)からの抜粋です。
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