【おむすび】結(橋本環奈)が震災を語り始める..."面白さ"優先の定番手法を使わず、震災描写を「事前予告」する理由

来週はいよいよ震災が描かれるが、制作統括の種々のインタビューによると、かなり手間をかけた綿密な取材を経ての内容になっているらしい。

現在と過去を並行して描く構成において、正直、物語の盛り上がりだけを考えるなら、平和な日常パートを侵食する形で今週終盤に突然過去の記憶を流れ込ませるほうが衝撃も大きく、吸引力が強いだろう。また、そもそも第一話で荒廃した町や、立ち上がる姿をあらかじめ見せ、視聴者を引き付けた上で現代の平凡な日々に移行するのも1つの定番だ。

しかし、本作ではそうした刺激の強い作り方をせず、週またぎのクリフハンガー的手法を用いず、ゆっくりと結が過去を語り始める流れにしている。さらに、制作統括が種々のインタビューで懇切丁寧に、来週から阪神淡路大震災が描かれることを伝えている。

これは物語の強さや面白さよりも、多数の取材を重ねたからこその被災者の心情への配慮が優先されているためだろう。実際、回想シーンでカレンダーの数字が震災に近づいていることや、不穏な風などの描写ですでに震災経験者は過去を思い出し、恐怖を抱き、少しずつ心の準備を始めている様子もSNSで見られる。

細やかな配慮のもとに内容も予告した上で描かれる震災描写がいったいどんなものになるのか。次週は本作の脚本家・制作陣の思いやスタンスが明確に見える内容になりそうだ。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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