外国の乱獲? それとも地球温暖化? 私たちの食卓にも影響する「サンマ不漁」の原因は...⁉

この秋は、サンマの価格が高騰しました。店頭での小売価格は、1匹あたり300~400円、ときにはそれ以上のものも。ほんの数年前までは1匹100円前後だったサンマ。価格高騰の原因は、ここ数年続く「サンマ不漁」です。なぜ近年、サンマの漁獲量が減っているのでしょうか? 水産資源管理を研究する勝川俊雄先生は「日本近海に来るサンマの量(来遊量)そのものが減っているからです」と、理由を説明します。

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サンマの来遊量自体が減っています

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国立研究開発法人 水産研究・教育機構『令和2 年度 北西太平洋サンマ漁況予報』より作成
※来遊量は、漁期前分布量調査(6 ~7月)で推定された2003~2019 年の海区別サンマ分布量より算出
※中国は2012 年、バヌアツは2013 年よりサンマの漁業国に加わる

日本近海へのサンマの来遊量は、上のグラフの通り、多少波がありながらも全体としては減少傾向にあります。中国や台湾による漁獲量は、割合として少なく、資源減少の主要因とは言えません。注目したいのは、各国の漁獲量と来遊量の割合です。「通常、サンマのような海の表層で回遊する寿命の短い魚は、全体の30%を毎年獲っても乱獲になりません」(勝川先生)。200万tの来遊量があった時代なら問題ありませんでしたが、2017年のように来遊量が約99万tしかない状況になると、漁獲にブレーキをかける必要が出てきます。


上の表を見てみましょう。

サンマの日本近海への推定来遊量と、日本や中国による漁獲量を棒グラフで示したものです。

全体としてサンマの来遊量は減少傾向であることが分かります。

調査の結果、今年の来遊量も昨年をさらに下回ると見られていて、「要因は特定されていませんが、サンマの数が減っていることは間違いありません」(勝川先生)サンマの数が減っていることについて、中国、台湾による乱獲や地球温暖化の影響という言葉をニュースなどで耳にします。

これらがサンマ減少の主要因なのでしょうか。

まず中国、台湾による乱獲についてですが、もう一度上の表を見てみましょう。

例えば2018年は、約235万tの来遊量がありながら、各国による漁獲量は約44万tで、中国の漁獲量は、そのうち9万t程度。

「中国、台湾による乱獲をサンマ減少の主要因とするのは無理があることが分かります」(勝川先生)

サンマの来遊量減少は地球温暖化の影響かもしれません。


サンマの来遊ルートがずれてきています

サンマは北太平洋に広く分布し、その群れの一部が秋になると千島列島付近から日本沿岸に沿って南下し産卵に向かいます。そのため昔からサンマは日本では秋の味覚として親しまれてきました。しかし近年日本沿岸の海域の水温上昇などにより、サンマの来遊ルートにずれが見られます。サンマの漁場が日本から離れたところにできるようになったため、漁獲量の減少に加え漁船の燃料費増などの問題もあり、サンマの価格が上がっています。

2011_P093_01.jpg国立研究開発法人 水産研究・教育機構『令和2 年度 北西太平洋サンマ漁況予報』より作成


上の地図を見てみましょう。

近年、日本沿岸から離れたところにサンマの来遊ルートが移りつつあることが分かります。

北海道の東の海域の水温が上昇傾向にあるため、温かい海水が苦手なサンマは、それを避けて来遊するようになっているのです。

「ただ、サンマ不漁の理由としては小さい。やはりサンマの来遊量自体が減っていることが大きな理由でしょう」と、勝川先生。

「魚は長期的に見ると種類ごとに増えたり減ったりを繰り返していて、サンマはいま減少傾向にある時期です」。

来遊量が減ると、上の表のように来遊量に対する漁獲量の割合が増えてきます。

そうなると、サンマを守るために漁を制限する必要が出てきます。

そのためにサンマなどの漁獲量を管理する国際機関、北太平洋漁業委員会(NPFC)があります。

NPFCは19年に、サンマの漁獲枠を全体で約55万tに設定しました。

この55万tというのは過去20年で2度しか達成されていないほどの多さ。

適正とは言えません。

「今後、この全体の漁獲枠を適正水準にまで下げ、さらにそれを国別に分ける、という作業が必要です」(勝川先生)。

全体の漁獲枠を下げ、国別漁獲枠が定められると、食卓からサンマが完全に消えるという事態は防げそうです。

ただ、その分、数が少なく高価になります。

「今後は、サンマを食べる文化をどう守っていくかにも目を向けなければなりません」と、勝川先生。

高価だからとサンマを避け続ければ、漁を行う人がいなくなってしまいます。

下の表を見てみましょう。


サンマは不漁でもマイワシは豊漁!?

サンマの漁獲量はグラフのように右肩下がりですが、逆に近年漁獲量が増えているのがマイワシです。2010年には約20.7万tだったサンマの漁獲量が2019年には約4.6万tと大きく減っているのに対し、マイワシは2010年には約7万tだったのが2019年には約53.5万tと、漁獲量がこの10年で7倍以上になりました。価格は、水産庁の「水産物流通調査」によると2010年にはキロあたり111円だったのが2019年には43円と、半額以下になっています。

2011_P093_02.jpg農林水産省『令和元年漁業・養殖業生産統計』より作成


サンマの代わりに近年マイワシが豊漁で、価格も下がっています。

普段はマイワシを食べ、秋にはサンマを買い支える。

今後はそのような食べ方が必要かもしれませんね。

※この記事は10月8日時点の情報を基にしています。

取材・文/仁井慎治 地図/小林美和子

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<教えてくれた人>
東京海洋大学 産学・地域連携推進機構 准教授
勝川俊雄(かつかわ・としお)先生
1972年生まれ、東京都出身。東京大学農学生命科学研究科修士課程修了。三重大学生物資源学部准教授などを経て、現職。専門は水産資源学。著書に『魚が食べられなくなる日』(小学館新書)など。

この記事は『毎日が発見』2020年11月号に掲載の情報です。

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