高齢者が増える一方の現代社会、さまざまな介護用品が市場に出回っています。でも「どんな意図で作ったのか」「使ってみて実際どうなのか」が分からず、購入に迷っているかたや、ユーザーの意見を知りたいかたも多いのではないでしょうか。
そこで「毎日が発見」編集部がオススメしたい介護グッズをピックアップし、製品開発者の思いなどを紹介します。今回は転倒での骨折を軽減する「ヒッププロテクターパンツ」を取り上げます。
ご両親の骨折をきっかけにヒッププロテクター入りパンツを開発
転倒から大腿骨頸部を骨折して、寝たきりになるケースが多いのを御存じでしょうか？ 東京消防庁の日常生活事故のデータ（平成22年）によると、救急搬送されたシニア世代の80％が転倒・転落なのです。このような転倒での骨折を軽減するために開発されたのが「ヒッププロテクターパンツ」です。大手下着メーカーのデザイナーや医療機器メーカーの研究開発職などをしていた松本富子さんが、ご両親の骨折を機にパンツやスカートなどを考案しました。同じ目線で考えられるよう、介護ヘルパー2級の資格も所有しています。
ピーチパンツ（プロテクター付） S～LL／9,980円＋税
ゆったりとした履き心地を追求
製作にあたって、まずは東京都立産業技術センターに依頼し、大腿骨頸部骨折軽減用製品の共同開発を開始。骨折防止に衝撃を吸収するヒッププロテクターを入れることにしました。
骨折防止に衝撃を吸収するヒッププロテクター。発泡ポリエチレン製
これまでは実用性が重視されるあまり、デザインが軽視される傾向にありました。そこで今回はデザインにもこだわり、「シニア女性の意識調査」を実施。おしゃれ感とゆったりとした履き心地のよさを求めていることが分かり、「美と機能」をテーマに作ることしました。女性の体形は加齢とともに変化していくので、70~80代女性の数千件ものお尻のデータをとって研究。これまでの下着デザイナーの経験を生かして、ヒッププロテクターの機能を兼ね備えながらも、美しいヒップラインにも追求しました。
ピーチパンツ。転倒時の尻への衝撃を軽減するヒッププロテクター入りで、ヒップラインも美しく見えるよう工夫。
ヒッププロテクターはサイド に2カ所。パンツの内側のポケットに入れる のでスカートやズボン にラインが出にくい
生地は経編み機で作り、おなかやお尻をやさしく包み込むよう縦横自由によく伸び、通気性のいいものにしました。さらにヒップアップ効果が出る裁縫をほどこし、お尻が美しくきれいに見えるように切り替えを作ってショート丈に。ウエスト部分には体にやさしい細幅ストレッチレースを採用しました。
ヒッププロテクターも素材選びからスタート
現在、ヒッププロテクターもさまざまなものが販売されていますが、硬い、歩きづらい、蒸れるなどの問題がありました。そこで素材選びから開始し、軽くて劣化しにくい発泡ポリエチレンを採用。同じ素材でも形状、硬さ、厚さの違いで衝撃吸収度が変わるため、丁寧に試験を繰り返してプロテクターの位置や体にフィットする形状を決め、重さは25gと軽量にしました。その後は、モニターに試着してもらうことで何度も改良を重ねました。
巻きスカートタイプのピーチスカートにも注目
そのほかにも三分丈の「ピーチアイパンツ」、巻きスカートタイプの「ピーチスカート」も展開。この2つには動きやすさを重視し、通常のものより少しやわらかいソフトタイプのヒッププロテクターを使用しているのが特徴です。ピーチスカートはポケットにヒッププロテクターを入れるスタイルで、腰の上から簡単に着用できるので、ウォーキングやリハビリ、外出時に気軽に装着することができます。
ピーチアイパンツは動きやすい三分丈。裾にはレースを施している
簡単に身につけられ、エプロン代わりにもなるピーチスカート
履き心地もよく、ヒップアップ効果のあるパンツやスカートを活用して、少しでも予防しましょう。
（写真下）ピーチアイパンツ（プロテクター付）S～L／8,250円＋税。（同右）ピーチスカート（プロテクター付）M～L／9,800円＋税
代表の松本富子さん。「転倒して寝たきりにならないよう、このパンツを活用して欲しいです」
