高齢者が増える一方の現代社会、さまざまな介護用品が市場に出回っています。でも「どんな意図で作ったのか」「使ってみて実際どうなのか」が分からず、購入に迷っているかたや、ユーザーの意見を知りたいかたも多いのではないでしょうか。そこで「毎日が発見」編集部がその製品を体験! 実際に使ってみてどうだったか、また製品開発者の思いなどを紹介します。今回は障害者や高齢者の方にやさしい靴下を取り上げます。
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親子2代・50年にわたって、人に肌にやさしい靴下を作り続けている工房が広島県・備後にあります。「桒原(くわはら)ニット」です。お父さんの桒原浩孝さんと息子さんの桒原展宏さんは福祉用具専門相談員の資格を持ち、障害者や高齢者の方にやさしい靴下を研究し、製造し続けています。
そのきっかけとなったのは、福祉介護施設などへ訪問した時、高齢者の方から「跡がついてしまって痛い」「足がむくむので、締め付け感がある靴下だと夜履いて眠れない」「片手で履ける靴下が欲しい」――靴下に関するさまざまな悩みを伺ったことだったといいます。そんな方々の悩みを解決できる靴下を作ろうと決意。「肌の一部となり、履いていることを忘れてしまうほど、ふんわり締め付けのないやさしい靴下」をコンセプトに始動しました。
無圧パイル靴下1,512円(税込み)。足を包み込むルーズフィット感。2重履きも可。
縦横にこんなに長く伸び、ゴムの跡も付きません。
ふんわり感を出すため糸も厳選
これまでの大量生産する機械式は廃止。手編みのような仕上がりを目指し、昭和時代、日本では当たり前のように使われていた編機を手に入れ、独自に改良しました。また肌に触れる糸にも重視し、ふんわり感が出る糸を選んで小ロットで染色。編機を用い1足1足手で時間をかけて編んでいます。
しかも要となる靴下の仕上げも、現在ではなかなかない手動式の靴下アイロンで手作業で仕上げています。それも温度や湿度、圧などいろいろなことを加味すると、手仕上げに以外はなかったからだそうです。さらに肌とともに伸びて縮む無圧感にもこだわりました。できあがった靴下は介護施設になど持参して試着してもらい、感想を聞いては改良を重ねて完成させています。
ストッパー付き靴下には摩擦係数の異なる糸を使用
靴下は、まったく圧のない無圧パイル靴下、うで・のびるサポーターなどさまざまそろえています。なかでも注目したいのが、フローリングなどで滑らないストッパー付き靴下です。同じタイプの靴下を履いている高齢者の方より「裏に付いているボツボツした突起が足の痛みになる」と聞き開発。試行錯誤し、ストッパー部分には摩擦係数の異なる糸を使用し、滑らないよう工夫したそうです。
うで・のびるサポーター2,592円(税込み・写真上)、あし・のびるサポーター4,536円(税込み)。
ストッパー付き靴下1,188円(税込み)。ストッパー部分に独自の技術を施し、もちろん無圧。
無圧パイル靴下を実際に履いたところ、肌を包み込むようなやさしさなのに、圧力を感じることのないのにフィット感。長い時間履いていても、履いていることを忘れてしまうほどのやさしさでした。その上、縦と横にものすごく伸びて温かいのも特徴。もちろん片手で脱ぎ履きできました。
桒原さんは現在も福祉介護施設などへ通って意見を聞き、みなさんに喜んでもらえる製品を作り続けています。
販売を担当している株式会社興和堂の村上隆さん。
「桒原さんの思いが詰まった靴下を、みなさんにぜひ履いていただきたいです」
※これまでの「介護アイテム」他の回はこちら。