「年を取ると時間が早い」「写真の自分の顔に違和感がある」など、私たちの暮らしの中で感じるちょっとした不思議、実は科学で解明されているものも多いそうです。そこで、世界600万人が支持したニューヨークタイムズベストセラー『いきなりサイエンス 日常のその疑問、科学が「すぐに」解決します』(文響社)から厳選し、誰かに伝えたくなる「科学の雑学」を連載形式でお届けします。
「え、こんな顔?」写真うつりと実物がちがうワケ
「この写真にうつっているのは俺なんかじゃない!なんでこんなにカッコ悪いんだ?鏡と全然ちがうじゃないか」
写真を見ると、ときどきこういうことが起きる。なぜ多くの人が鏡にうつった自分は好きなのに、写真にうつった自分が嫌いなのだろうか?
これには、いくつか要因がある。中でも、一番大きく関わってくるのが「単純接触効果」だ。
対象がなんであれ、心理学的に、ヒトは目にする回数が少ないものより、多いものを好む傾向にある。この効果は言葉や絵、音、写真、幾何学的な図形でさえも実証されている。
さらには、この効果はヒト以外の種でも見られる。実験では、なんとサルからニワトリにいたるまで、くり返し与えられた刺激のほうを好むという結果が出ているのだ。
どんな人であれ、自分の顔を鏡や窓にうつったイメージで確認することが多い。つまり、あなたの中の「実物」のイメージは鏡や窓にうつったものと言えよう。
ただし、鏡にうつるあなたのイメージは、第三者があなたを見るイメージとはちがう。なぜならすべてが左右反転しているからだ。
写真にうつるあなたは、鏡でいつも見ているイメージではなく、第三者があなたを見ているイメージだ。だから、写真を見た瞬間、あなたの脳はいつもとは見慣れない自分を目の当たりにして、「何かがおかしい」「イケてない」と考える。
たとえば、こんな実験がある。被験者に自分の顔写真を2枚(A「鏡にうつった顔を撮った写真」とB「カメラで撮った顔写真」。どちらか教えずに)見せ、どちらが好きか尋ねる。
その結果、被験者自身は「A(鏡にうつった顔)のほうが好き」と答えた人が圧倒的だった。ところが被験者の友人は「B(カメラで撮った顔)のほうが好き」と答えた割合が高かったというのである。ということは、もしかすると、恋人や知り合いに鏡にうつった自分の姿を見せたら「イケてない」と思われるかもしれない。
鏡のまえだと、あなたは姿勢や髪型、笑いかたを好きなように変えられる。だが、写真だとそんなことはできない。だから、写真にうつった自分が好きになれないということもあるかもしれない。人は実際よりも自分が魅力的だと思いたがる傾向にある。
また、写真は平面だが鏡で見る自分は立体だ。2Dのイラストと3Dのイラストを見たとき、同じイラストでも受ける印象がまったくちがうことも、写真と実物の印象を大きく変える一因となっている。
いずれにせよ、写真は写真だ。あなたが思っているほどその写真うつりは悪くないかもしれない。仮に悪かろうと、実物のあなたはきっともっとイケてるはずだ。自信を持っていこうじゃないか。
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