全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか?

神秘の行事が行われる旧暦の10月は、全国の神様が会議をするために出雲に集う月にあたります。万九千神社の宮司・錦田剛志さんに、出雲の神秘の行事「神在祭」について伺いました。

八百万の神々が出雲に集う"神在月"

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p012_01.jpg出雲大社の西方1kmに位置する稲佐(いなさ)の浜で神々をお迎えする、出雲大社の神事「神迎神事(かみむかえしんじ)」。しめ縄が張り巡らされた神聖な祭場に、かがり火が浮かび上がります。

10月を一般的には「神無月(かんなづき)」といいますが、島根県出雲地方では、この月を「神在月(かみありづき)」と呼んでいます。

出雲市にある万九千(まんくせん)神社の錦田剛志宮司によると「この時季、一年に一度、全国の神様が出雲の神社に集まり、『神事(かくれたること)』や『幽事(かくりごと)』、つまり国家安泰や天変地異、縁結びなど目に見えない神の世界の事柄について話し合う『神議(かみはかり)』をなさるから、といわれています」。

平安時代後期(2世紀半ば)の歌学書『奥義抄(おうぎしょう)』に、「天下諸々の神が出雲に行く」と記されているのが最古の記述だとか。

では、なぜ出雲に?

これは『日本書紀』が伝える「国譲り神話」に基づく説が有力です。
「大国主神(おおくにのぬしのかみ)が天照大神(あまてらすおおみかみ)に国を譲ることになった際、今後は神事・幽事の世界を専門に治めると約束。その世界の主神となった大国主神のもとに全国の神が集まるようになりました」(錦田宮司)。このとき、大国主神は隠居用の神殿の建設を条件に和解。
これが出雲大社の創建伝承です。
また、『出雲国風土記』(733年)には、その造営や酒造りのため神が参集したとも。
「神話のふるさと」ともいわれる出雲は、古くから神々が集まる都だったのです。

神々を迎え、もてなす伝統の神事「神在祭」

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p014_01.jpg出雲大社では、「神迎神事かみむかえしんじ」で迎えられた全国の神々は境内の「十九社(じゅうくしゃ)」に宿泊。神在祭の期間中、「十九社祭」が奉仕されます。

毎年の「神在月(かみありづき)」に行われるのが「神在祭(かみありさい)」です。

「各地の神様を心よりお迎えし、神議(かみはかり)が滞りなく進むようにお供えなどでおもてなしし、お見送りします」(錦田宮司)。

出雲市内では出雲大社、万九千神社、日御碕(ひのみさき)神社、朝山神社で開催され、期間や行い方も異なります。
「出雲大社では稲佐の浜で神々を迎えますが 、万九千神社では『龍神祭」と呼び、宮司一人が斐伊川(ひいかわ)でお迎えします。
水辺に入り、龍神の好物とされる小鯛などを散供(さんく)。これは秘儀で誰も見られません」(錦田宮司)
神社それぞれの儀式で迎えられた神々はその後、神議を行います。明年の国の弊栄などを話し合い、男女の結びを含め、数多の縁もその一つ。出雲大社では、祭神・大国主神の力をいただく「縁結大祭(えんむすびたいさい)」も行われます。
そして、神々の出立の日。「神等去出祭(からさでさい)」で出雲からのお立ちの時を奉告します。万九千神社には楽しい伝承も。出雲に参集された八百万の神が最後にここに立ち寄って「直会(なおらい)」という実を催し、来年の再会を期して帰路につかれるのだそうです。
「神在祭」は、30~40年前までは「お忌(い)みさん」と呼ぶのが一般的でした。「神々の会議をじゃましないように、この期間は静かに忌み慎んで過ごす風習に由来します。散髪や爪切りも避けていたんですよ。出雲では昔から、目には見えない神々の世界を、日常のすぐ近くに感じられる行事なのです」(錦田宮司)

出雲にいまも生き続ける日本文化の心や叡智

神々が旅する伝承「神在月」には、日本人の豊かで大らかな神観念が宿っていると、錦田宮司。

「現代の日本人が忘れかけている神や自然への畏敬や感謝の念、祈りの心や礼節を取り戻す時間と空間が、この風習に濃縮されていると思います。それは、見えない縁に結ばれて生かされているという感覚や、時を超えて大切にすべき人間らしさを取り戻すことでもあるのです」

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p014_02.jpg神在祭の間、出雲大社の神楽殿では人々の幸せの縁を結ぶさまざまな祈祷の祭典「夜神楽(よかぐら)祈祷」も行われます。

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p015_01.jpg万九千神社の「神等去出祭」。梅の小枝で扉を叩き、神々に「お立ちー、お立ちー」と告げます。

ぜんざいは出雲発祥。「神在祭」が由来です

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ぜんざいの元となったのが「神在餅(じんざいもち)」。「神在祭」のときに餅と小豆を煮た小豆雑煮を作り、神前に供えたり、ふるまったりしたものです。
「じんざい」が、ずーずー弁が特徴の出雲弁で「ずんざい」に、そして「ぜんざい」になったといいます。

神在祭を執り行う出雲市の神社

※一般には非公開の神事もあるので見学前に確認を。また、むやみな撮影や神事の妨げになる行為は厳禁です。

出雲大社

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p015_02.jpg

住:島根県出雲市大社町杵築東195
電:0853-53-3100
神迎神事・神迎祭・11月6日(水)
神在祭・11月7日 (木)・11日(月)・13日(水)
龍蛇神講大祭・11月7日(木)
夜神楽祈祷・11月7日(木)~12日(火) 1
縁結大祭・11月11日(月)・13日(水)
神等去出祭・11月13日(水)
第二神等去出祭・11月22日(金)

日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p015_03.jpg住:島根県出雲市大社町日御碕455
電:0853-54-5261
神在祭・11月7日(木)~13日(水)

万九千神社(まんくせんじんじゃ)

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p015_04.jpg住:島根県出雲市斐川町併川258
電:0853-72-9412
神在祭・11月13日(水)~22日(金)
神等去出祭・11月22日(金)

朝山神社(あさやまじんじゃ)

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p015_05.jpg住:島根県出雲市朝山町1404
電:なし
神在祭・10月28日(月)~11月6日(水)

出雲観光協会

全国の神が「出雲」に集う...神々をお迎えする神秘の行事「神存祭」をご存知ですか? 1911p013_01.jpg
住:島根県出雲市大社町北荒木441-3
電:0853-53-2112
営:8:30~17:15
休:日曜(祝日の場合は翌日)

構成・取材・文/岡田知子 (BLOOM)  撮影/古川 誠  写真提供/(一社)出雲観光協会、(公社)島根県観光連盟 取材協力/(一社)出雲観光協会

 

万九千神社宮司
錦田剛志(にしきだ・つよし)さん

國學院大學卒業後、島根県立古代出雲歴史博物館の学芸員などを経て、2012年より現職。島根県神社庁参与、大社国学館や県立大学の講師も兼任。

監修書に『出雲大社 平成の大遷宮』(山陰中央新報社)、著書に『出雲大社ゆるり旅』(ポプラ社)ほか。

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神々集う出雲の國 神在月

山陰中央新報社 1,800円+税
錦田宮司が監修、古川 誠さんが撮影。「神在月」と「神在祭」を分かりやすく写真と文で紹介。

この記事は『毎日が発見』2019年11月号に掲載の情報です。

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