1000年以上手が入っていない「奈良・春日大社」紅葉散歩のススメ

いよいよ木々が茜色に染まる季節がやってきます。今回は歴史深い奈良の紅葉景色をご紹介。全国3000もの森を、自身の足で歩いてきた三浦豊さんが、数ある名所の中から、極上の場所を案内してくれました。
この地に都があった時代から連綿と続く、静かで美しい万葉です。

※紅葉の見ごろは、必ずお出かけの前にご確認ください

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水谷神社周辺と春日山原始林

飛鳥時代から生き続け、奈良の水を守ってきた手つかずの森

奈良公園の東、御蓋山(みかさやま)の麓に鎮座する春日大社。水谷神社はその北側にある小さな神社です。250haもの広大な春日山原始林はさらに東側。古くは春日大社の神山で、信仰の場でもありました。

椋(むく)、欅(けやき)、紅葉、松...。

錦の織物のように多種の樹木が交差する森には、1000年以上もの間ほとんど手が入っていません。

それは、この霊域を守るため、平安時代の承和8(841)年に禁伐令が敷かれたため。以来、樹木は人の力を借りず、日差しを求めて枝を伸ばし、自分の居場所を守ってきたのです。

目を下にやれば、地面にしがみつくように拳状の根も。雨風に打たれて倒れないよう、形を変えて生き抜いてきたのでしょう。

木が守られているということは、水が存在するということ。この地に湧き、水谷川に流れる水は、麓で暮らす人々を潤す生活用水でもありました。藤原氏ゆかりの藤の木が、春に美しく咲き誇るのもそのため。水谷神社の名もまた、森がたたえる豊かな水が由来です。

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野趣あふれる木々に生命力が宿る。

散策を楽しめる春日山原始林は古都奈良の文化財。春日大社の東にある御蓋山は、春日大社の神様が降り立たれたという神山で、豊臣秀吉の命で1万本の杉が植栽された以外、自然のままの景色が残る。

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樹高12mのイブキの大木。(写真内左)も見どころの水谷神社。

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水谷神社に隣接する茅葺(かやぶき)の水谷茶屋。屋根と地面に降り積もる紅葉が美しい。

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銀杏(いちょう)に包まれる春日大社の二之鳥居を入ってすぐの祓戸(はらえど)神社。

春日大社と水谷神社

春日大社は平城京の守護と国民の繁栄を祈願し、768年に創建。4柱の御祭神をまつり、神様が鹿に乗って降臨したと伝えられる。水谷神社の創建は平安時代中期。子宝の神として信仰を集めている。

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春日大社(水谷神社は境内にあります)

住:奈良県奈良市春日野町160
電:0742-22-7788
時:6:30~17:30(3~10月)、7:00~17:00(11~2月)
休:なし
※他祭典などにより拝観できない日もあります。
料:無料(国宝殿、萬葉植物園は拝観料あり)
交:JR奈良駅から、奈良交通バス、春日大社本殿行き利用「春日大社本殿」下車すぐ。

取材・文/飯田充代 写真/春日大社、奈良観光協会、奈良公園管理事務所 マップ/小林美和子

 

三浦 豊(みうら・ゆたか)先生

1977年、京 都市生まれ。日本大学芸術学部 卒業後、庭師となる。日本中の森を巡り始めたのは2004年。 樹木の素晴らしさに目覚め、現在は"森の案内人"としてその魅力を伝えるため活動中。

この記事は『毎日が発見』2019年10月号に掲載の情報です。

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