仕事や子育てもひと段落したけど、新しく何かにチャレンジすることをためらってはいませんか?そんな人に向けて、『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』(大野正人/文響社)から、誰もが知る偉人たちの大失敗エピソードをお届け。歴史に名を残す偉人の驚くべき逸話が、あなたの人生の「新しい発見」を後押ししてくれるはずです。
コンプレックスをかかえる
【人物】オードリー・ヘプバーン
【出身地】ベルギー
【どんなことをした人?】女優
永遠の妖精オードリー・ヘプバーン。女優として、数々の映画に出演した後は、世界中のめぐまれない子どもたちのために活動しました。オードリーの活動は多くの人の心を打ち、これによって助けられた命もたくさんあります。
まさに天使のような美しさとやさしさで、世界中から愛されたオードリー。そんなかのじょに、失敗なんてあったのでしょうか?
なんと、オードリーは「自分のことを美しいと思ったことなんてない」と言っています。
やせすぎた体、四角い顔、大きな鼻、高い身長、小さなむね、大きな足......。こんなにたくさん悪い部分があるのだから、自分が美しいわけがない。永遠の妖精は、どうやら本気でそのように思っていたようです。
じつは、オードリーがわかかった時代、女性らしさといえば、丸みのあるやわらかい顔、スッと細く通った鼻、身長はそれほど高くなく、ふくよかな体、大きなむね......。このような人が「女性らしい」と言われ、人気者だったのです。
たとえば、上の絵の中にあるポスターには、マリリン・モンローという女優がえがかれています。かのじょのような体や顔が、当時は一番うけていたのです。
そんな人気女優たちとは、正反対の外見をした自分......。このような、自分が他の人よりおとっていると感じる部分のことを「コンプレックス」と言います。
オードリーは、みんなの感覚では信じられないかもしれませんが、自分の美しい顔や体をじまんに思うどころか、大きなコンプレックスだと感じ、なやんでいたのです。
コンプレックスが大きくなると、どうしても、心が暗くなっていきます。それでは、とてもじゃないけど、カメラの前や、たくさんのお客さんの前で、良いえんぎなんかできません。
では、オードリーはいったいどうやって、このコンプレックスからぬけ出したのでしょう。
コンプレックスをかかえたオードリーは、どうしたのか。いっぱい食べて太ろうとした?かみをのばして顔の形をかくした?
いいえ、そんなことはしませんでした。オードリーは、自分の美しくない部分を、美しいと感じてもらえるよう、努力したのです。
細い体でもきれいに見える服を着こなし、目にハデなメイクをすることで、顔の形や鼻の大きさが目立たないようにするなど、女優として、つねに自分の見せ方に気をつけました。
オードリーは言います。「女らしさは、体で表現しなくても作ることができます。たとえば、木からリンゴを取るしぐさとか、車からおりるしぐさとかでね」
そう、美しさは、顔が良ければ、スタイルが良ければなど、ひとつのじょうけんだけで作られるものではありません。オードリーは、たくさんの地道な努力によって、自分ならではの美しさ、女性らしさを作り上げ、世界中の人にみとめさせたのです。そして「ふくよかな女性が美しい」という当時の「当たり前」すら、変えてしまったのです。
あなたも自分の顔や体、性格など、何かコンプレックスをかかえているかもしれません。もし、それを直したいと思うのなら、その部分から目をそらさず、一度、じっくりと見つめてみましょう。
たとえば、「顔がかわいくない」というコンプレックスのうらがわには、「かわいいと思われたい」という思いがかくされています。でも、「かわいい」は、決して顔だけで作られるものではありません。ファッション、メイク、体つき、しぐさ、心のもちかた、言葉づかい、これらすべてが「かわいい」に関係しています。
このように考えていくと、「顔がかわいくないから、かわいくなれない」というわけではないことに気がつきます。そして、オードリーのように地道な努力で、他の「かわいい」を手に入れていけば、あなただけの、でも、だれもがみとめてくれる「かわいい」を作ることができるのです。
地道な努力で手に入れたものがふえると、自分の好きな部分もふえていきます。そして、ある日、これまで自分をなやませていたコンプレックスに対して、こう思うようになります。
「ま、いっか。それも自分」
これは、どんなコンプレックスでも同じ。コンプレックスは、成長のチャンスです。「ま、いっか」と思える日まで、がんばりましょう。
イラスト/死後くん
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