光の性質によって白にも黒にも。「雲」と「雨雲」の色が違うワケ/身近な科学

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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。

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赤緑青の光を均等に散乱する「ミー散乱」
水滴や氷でできた雲が〝白い〟理由

水滴や氷の粒は透明です。しかし、それからできた雲は白く空に浮かんでいます。雲が白い秘密は、「光」の性質にあります。

光の性質によって白にも黒にも。「雲」と「雨雲」の色が違うワケ/身近な科学 p176.jpg光は散乱という性質を持ちます。光が微粒子に当たると、それらを振動させ、新たに同じ波長の光を放出する性質です。微粒子が光の〝中継基地〟になるわけです。

人の見る色は赤、緑、青の光からつくられます。おもしろいことに、雲の中の水滴や氷の粒の大きさの場合、各色の光は均等に散乱されます。これをミー散乱といいます。結果として雲からの光は赤、緑、青が合わさった光、つまり白色光になるのです。もともと透明な雲はこのミー散乱のために白く見えているのです。

ところで、同じ雲でも雨雲は黒く見えます。それは雨雲が厚いためです。ミー散乱を繰り返すうちに光が減衰(げんすい)し、雨雲の下では暗くなるのです。

ミー散乱以外にも、異なる形態の散乱があります。たとえば、大気の酸素や窒素のような極微小な粒子に対しては、青い光は強く散乱し、赤の光はあまり散乱されない性質があります。これをレイリー散乱といいます。青空は青の光を大きく散乱させるこのレイリー散乱が演出しているのです。

ちなみに、夕日が赤いのもレイリー散乱の仕業(しわざ)です。夕方、太陽光は大気を通過する距離が長くなるので、青の光は散乱を繰り返して減衰し、赤の光だけが目に届くからです。

 

次の記事「5色?それとも7色? 雨粒の「プリズム」が生み出す虹の色合い/身近な科学(49)」はこちら。

 

涌井貞美(わくい さだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。著書は、『図解 身近な科学 信じられない本当の話』『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(以上KADOKAWA)、『Excelでわかるディープラーニング超入門』『ディープラーニングがわかる数学入門』(以上、技術評論社)、『「物理・化学」の法則・原理・公式がまとめてわかる事典』(ベレ出版)、『図解・ベイズ統計「超」入門』(SBクリエイティブ)など多数。

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『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』

(涌井貞美/KADOKAWA)

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この記事は書籍『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』からの抜粋です。

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