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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
細菌同士が語らう「クオラムセンシング」
細菌は示し合わせて行動する
細菌には目もなければ口もありません。しかし、そんな細菌でも仲間と連絡が取れます。1つの細胞からできている細菌はどのように仲間と語らうのでしょうか。その1つがクオラムセンシングです。
点在しているとき、細菌は互いに意思を通じ合わせることはありません。しかし、ある一定の密度以上に増殖すると、急に集団行動をとることがあります。クオラムとは「定足(ていそく)数」の意味。定足数を超えると集団行動を始める、というのがクオラムセンシングです。
たとえば、病原性大腸菌が腸内に入り込むとき、数粒ならば何も問題はありません。しかし、増殖して一定密度を超えると一斉に毒素を出し、私たちを苦しめます。
目や口のない細菌が互いの存在密度を知るには化学物質が利用されます。互いに放出する化学物質の濃度を検知し、それが一定量になると細菌は活性化するのです。
近年、この化学物質をコントロールし、細菌の能力を引き出したり、毒性を抑えたりする研究が盛んになっています。
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