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※この記事は『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(涌井貞美/KADOKAWA)からの抜粋です。
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アフリカにいた「ミトコンドリア・イブ」
人類は皆(みな)、兄弟だった
酸素を用いた高効率のエネルギー交換ができなかった原初の生命は、酸素を活用できる細菌[好気性(こうきせい)細菌]を細胞内に取り込みエネルギーをもらい、代わりに必要なタンパク質を渡して共生し始めたと考えられています。この好気性細菌の末裔(まつえい)は、私たちの細胞内にあるミトコンドリアとして生きています。
ミトコンドリアも少ないながらDNAを持っていて、細胞が分裂するとき一緒に分裂します。
おもしろいのが、人の生殖細胞におけるミトコンドリアのDNA伝達の仕方です。生殖細胞の核の場合、父親の精子と母親の卵子のDNAは半分ずつくっつき、子のDNAになります。ところがミトコンドリアの場合、精子のミトコンドリアのDNAは子に伝わらず、母親の卵子の中のミトコンドリアDNAだけが子に継承(けいしょう)されます。ミトコンドリアのDNAは母系(ぼけい)にしか引き継がれないのです。
人の母方の先祖をどんどんたどっていくと、理論的には一人の女性に行き着くことになります。この女性のことをミトコンドリア・イブと呼んでいます。極論(きょくろん)すれば、「人類は皆、兄弟」とも考えられるのです。
この共通の祖先は、15万年ほど前のアフリカに住んでいたと考えられています。
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