「続けるほどに奥深さを知ります」女優・中田喜子さんが語る「俳句の魅力」

女優の中田喜子さんが「いま夢中になっていること」を紹介してきたこの連載は今回が最終回。テーマには、始めて5年がたち、ますます思いを深くしているという俳句を選びました。自作の季語を使った春の一句とともにお届けします。

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続けるほどに奥深さを知る「俳句」

中田さんに自作の句を披露していただくのは、これで3回目。

いまの季節にふさわしいものをとお願いし、教えてくださったのがこちらの句です。


とき発車(はっしゃ) 旅憂(たびうれわ)しき 花追風(はなおいて)

ときは新潟へ向かう新幹線。期待と不安を胸に桜の名所を訪ねる旅に発想を飛ばしました。列車が走る際に生まれる風と、桜が風に舞う情景を合わせ"花追風"を使っています。


"花追風(はなおいて)"というやさしい響きの言葉が使われています。

「私が作った季語です。追風という言葉から、桜の花が日本列島を北上していく光景が浮かんで、そう、桜前線ですね。そのイメージから自然に"花追風"が出てきました」

ふと自分の中に生まれた言葉。

それが俳句の先生に"まさしく季語だ"と評価されたのだそうです。

人生の中で一つでも季語を作れたら大したもの。

明治から昭和時代にわたって活躍した俳人・高浜虚子もそう語っているそうですから、中田さんの発想の豊かさが伝わってきます。

「俳句は私にとって美しい日本語を発見する試み。雑誌名『毎日が発見』ではないですが、日々の積み重ねです。俳句がお好きな方には"花追風"をぜひ使ってほしいです」

美しい日本語を発見するためにしていることはありますか?

「よく辞書を読んでいます。珍しい言葉に出合ったら使ってみたいなと思いますし、その由来を調べてみることも。でも、難しい言葉におぼれるのはよくないですね。追いかけても追いかけても、まだまだ理想にたどり着けません。だからこそ引かれるのかもしれません」 

初心忘るべからずという思いからか、『新版20週俳句入門』も読み返しました。

入門書をもう一度読み返しました

「続けるほどに奥深さを知ります」女優・中田喜子さんが語る「俳句の魅力」 2003p107_04.jpg愛読する藤田湘子著『新版 20週 俳句入門』(KADOKAWA)。しおりも愛用のもの。

「続けるほどに奥深さを知ります」女優・中田喜子さんが語る「俳句の魅力」 2003p107_03.jpg金色の地に桜柄がちりばめられたしおりは、俳句気分を盛り上げてくれる小物。きもの同様、3月にぴったり。

「俳誌『鷹(たか)』を創刊した俳人・藤田湘子(しょうし)さんの本で、俳句の約束ごとや言葉の使い方が解説されています。例えば"秋深し"とすれば、文脈は終止しますし(切れ字)、"秋深く"とすれば後に言葉が続く。そんなことも分かりやすく書いてあり、あらためて勉強になりました。藤田さんの句も好きです。一つ紹介するなら、"筍や 雨粒ひとつ ふたつ百"」

こんなふうに、時間を惜しまず辞書や本を手に取り、心の畑を耕すように俳句と向き合う中田さん。

「友人にバースデーカードを贈るときに、私の句を添えることも習慣になりました。相手の方に合うものを選んで書くんですよ」

それは一時のトレンドを超え、いまや生涯続けていきたいと思う大切な存在。

暮らしになくてはならないライフワークとなっています。

「続けるほどに奥深さを知ります」女優・中田喜子さんが語る「俳句の魅力」 2003p107_02.jpg柳と桜、流水。句にふさわしい柄のきもので。草色と鳥の子色(卵の殻色で日本の伝統色の一つ)をぼかした縮ちり緬めん地のきもの。柳と桜、流水柄が染められている。

取材・文/飯田充代 撮影/齋藤ジン 

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中田喜子(なかだ・よしこ)さん

女優。18歳でデビュー。以来、テレビドラマや舞台で活躍。20年以上続くTBS系ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』では三女・文子(ふみこ)役を好演。ほかにも出演ドラマは100本を超える。TBS系番組『プレバト!!』では、自作の俳句を披露し話題を呼んでいる。

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この記事は『毎日が発見』2019年3月号に掲載の情報です。

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