もし、あの現場に自分がいたら...名もなき作業員が戦い続ける映画『Fukushima 50』の魅力

2011年3月11 日、想定外の津波を受け、未曾有の危機に瀕した福島第一原発。制御不能となった発電所内に残り、必死の作業を続けたのは、多くが地元・福島出身の作業員でした。海外メディアから「フクシマフィフティ」と呼ばれた彼らに焦点を当て、あの日、現場で何が起きていたのかを克明に描き出した映画『Fukushima 50 (フクシマフィフティ)』が3月6日(金)に公開されました。

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地元福島出身の名もなき作業員たちが戦い続けた行動と思いとは...?

メガホンをとったのは映画『沈まぬ太陽』など骨太な人間ドラマにも定評のある若松節朗監督。

映画の中心になるのは、1・2号機当直長の伊崎利夫(佐藤浩市)と、メディアでも広く知られた吉田昌郎所長(渡辺謙)。

作業員たちとともに予断を許さぬ状況に向き合う伊崎と、混乱する官邸や本店からの指示に苛立ちながら、社員を守ろうとする吉田。

二人の置かれた状況を軸に、誰も経験したことのない切迫した事態が描かれます。

「事故を風化させないために」という思いによって作られた本作は徹底してリアリティを追求。

原子炉建屋のオープンセットをはじめ、発電所内の施設を再現するために巨大セットが組まれました。

中央制御室内は、計器に至るまで、発電所で働いていたスタッフも驚くほどの再現性だったといいます。

撮影は時系列に沿って進められ、それによって作業員を演じるキャストからも演技を超えた極限状態が滲み出ることに。

詳しくは佐藤浩市さん・渡辺 謙さんのインタビューも確認してください。

あの日の事故を踏まえ、私たちはどんな選択をすべきなのか。

事故から9年。

大切な場面で咲く一面の桜並木を見ながら、いま一度、考えさせられます。


story
東日本大震災によって想定外の津波にのまれた福島第一原発は、地震発生から約1時間後の午後3 時40分、全交流電源喪失という非常事態に陥る。

このままでは原子炉の冷却装置が働かず、メルトダウンを起こしてしまう。

原子炉格納容器の圧力が上がり、爆発しかねない状況下、政府から吉田昌郎所長のもとに、格納容器の圧力を抜く作業「ベント」の指示が出る。

電源が失われ、手動でベントを行うしか方法はない。

高い放射線量を浴びながら行う危険な作業に、1・2号機当直長の伊崎利夫は作業員たちと向かうことになる――。


文/多賀谷浩子

 

「この50人の男がいたことを語り伝えたい」若松節朗監督

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福島第一原発と戦い続けた50人の男たちを通してあの日を回想し、考える瞬間を体験してほしい

若松節朗監督のインタビューでは、撮影現場の話をお聞きしました。

リアリティーを追求しないといけない映画なので、静岡の発電所を取材させていただきました。 写真撮影禁止だったので、スタッフで分担してメモをとって、徹底的に再現しました。1号機と3号機の爆発もほぼ忠実に再現しています。このシーンが撮影初日でしたが、粉じんだらけで壮絶な現場でした。皆が『これは大変な映画になる』と初日に実感できて、監督としてはありがたかったですね」

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「佐藤浩市さんと渡辺謙さん、2人のリーダーシップがすごいんです。 中央制御室の場面では、ほぼ順撮りだったので、メイクで疲れた顔を作る必要もないくらい、日に日に皆の表情が変わっていきました。 だから、例えば、緊迫した状況の中で『ひとまず危機回避に成功した!』となると、出演者の皆の喜びが"本物"なんです。 こちらの大きなカットの声が聞こえないぐらいの歓声でした(笑)。
そういう瞬間に立ち会えていることが、監督として素晴らしいなと。芝居を超えた、生ものでしたから。ここまで俳優の芝居を見るのが楽しみな現場はまれです。 皆がスクラムを組んで、まさに"ワンチーム"でした」

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構成/吹春規子 取材・文/多賀谷浩子 撮影/松本順子(KADOKAWA)

■詳しいインタビュー内容はこちら
「この50人の男がいたことを語り伝えたい」若松節朗監督インタビュー/映画「Fukushima 50」 

「若い頃なら、やらなかった作品」佐藤浩市さん

主演の佐藤浩市さんは、撮影現場の話もしてくださいました。

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「実際に現場にいた方々と同じ気持ちになるなんて到底できませんが、物語の時系列に沿って撮影したので、日に日に皆の切迫感が増して顔つきが変わっていって。そこは計算では出せないものだったと思います」

「若い頃なら、今回のような作品はやらなかったかもしれないなと思うんです。もっと断定的に是非を描くべきなのではないかという気持ちが働いて。でも、60も間近になったいまだから、断定するより、見てくださる方に投げかける方が意義があるように思えたのかなと。この映画を見て、当時のことを思い出して気分が悪くなる方もいると思うんです。それぐらい痛みの伴う描き方をしていますから。でも、事故を風化させないためには、そういう表現をする必要があったんですよね」

撮影/中村嘉昭(LiNQ)

■詳しいインタビュー内容はこちら
「若い頃なら、やらなかった作品」佐藤浩市さんインタビュー/映画「Fukushima 50」

「浩ちゃんを本当に尊敬しました」渡辺 謙さん

吉田所長を演じた渡辺 謙さんは、佐藤浩市さんへの思いも語ってくださっています。

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「(印象に残ったシーンは)浩ちゃん(佐藤浩市)が桜を見上げる場面ですね。この作品を全部背負って立っている男に見えて、本当に尊敬しました。彼のことは信じていますから。覚悟を持って臨まなければならない作品に、歩みを揃えて出られて、うれしかったです。

撮影/吉原朱美

■詳しいインタビュー内容はこちら
「僕らは過去を検証できているのだろうか」渡辺 謙さんインタビュー/映画「Fukushima 50」

 

渡辺 謙(わたなべ・けん)

近年の映画出演作に『怒り『』追憶の森』(16『)ベル・カント とらわれのアリア』(18) 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)など。昨年はブロードウェイで15~16年に上演されたミュージカル『王様と私』の日本公演も。

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『Fukushima 50』

(配給:松竹 KADOKAWA)

2020年3月6日(金)全国ロードショー
出演:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎、安田成美ほか
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
原作:門田隆将『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫刊)
配給: 松竹 KADOKAWA ©2020『Fukushima 50』製作委員会

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『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』

(門田 隆将/角川文庫)

映画『Fukushima 50』の原作。

あの時、何が起き、何を思い、どう闘ったのか。原発事故の真相が明らかに! 2011年3月、日本は「死の淵」に立った。福島県浜通りを襲った大津波は、福島第一原発の原子炉を暴走させた。日本が「三分割」されるという中で、使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いを展開した男たちがいた。

この記事は『毎日が発見』2020年3月号に掲載の情報です。

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