2021年の新刊から不朽の名著まで、「毎日が発見」連載陣ら11人が推薦する「年末年始に読みたい良書33選」。今回は角川武蔵野ミュージアム館長で編集工学研究所所長の松岡正剛さんが薦める「知的好奇心を満たす本」3選をご紹介します。
【前回】多摩美術大学非常勤講師の野村重存さんが薦める年末年始に読みたい「芸術に触れたくなる本」3選
【最初から読む】医師、作家の鎌田 實さんが薦める年末年始に読みたい「生き方を見つめなおせる本」3選
松岡正剛さんが薦める「知的好奇心を満たす本」
(1)2021年刊『寝るまえ5分のパスカル「パンセ」入門』
アントワーヌ・コンパニョン/著 白水社 2,090円(税込)
名文家パスカルの思想に迫る
(2)2021年刊『グレゴワールと老書店主』
マルク・ロジェ/著 東京創元社 2,200円(税込)
(3)2021年刊『私のいない部屋』
レベッカ・ソルニット/著 左右社 2,640円(税込)
わかりやすく、かつ読みごたえのある斬新な3冊を選んだ。
それぞれ翻訳もうまい。
(1)はフランスの哲学者がラジオで話しかけたパスカル入門。
ぼくも何度も読んできた『パンセ』の名言を次々に啄んで、見事に読みくだいた。
たとえば「靴のかかと」の大事さを説いて、人生の「かかと」に言及する。
(2)は小説だが、すばらしい読書案内になっている。
本に無縁だった介護施設の青年グレゴワールが、本だらけの居室の老人の面倒をみているうちに、だんだん名作読書にめざめ、ついには二人で下水道の配管を通して発禁本を朗読して、施設内のみんなに聞かせてしまうという話だ。
辞書の活用の仕方、ベストセラー本との付きあい方、難解な哲学書の読み方もわかる。
(3)はサンフランシスコを拠点とした売れっ子の気鋭フェミニストが、女性が陥らされていく場面や局面を捉え、そこにどんな「いじわる」が待っているのか、どのようにそこを切り抜ければいいのか、そもそも女性はジェンダーをどう考えればいいのかなどを、大変いきいきと綴った。
いまアメリカでは男をはねのけるような女性運動が話題になっているが、実はソルニットのような見方や考え方が、いちばん大事なのである。
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美)