2021年の新刊から不朽の名著まで、定期誌「毎日が発見」連載陣ら11人が推薦する「年末年始に読みたい良書33選」。今回は、作家のインタビューや書評、対談など多数の企画を担当されているライターの瀧井朝世さんが薦める「老後や家族のあり方を思う本3選」をご紹介します。
【前回】美容研究家の小林照子さんが薦める年末年始に読みたい「自分を愛したくなる本」3選
【最初から読む】医師、作家の鎌田 實さんが薦める年末年始に読みたい「生き方を見つめなおせる本」3選
瀧井朝世さんが薦める「老後や家族のあり方を思う本」
(1)2021年刊『にぎやかな落日』
朝倉かすみ/著 光文社 1,760円(税込)
人生、最晩年の物語
(2)2021年刊『神さまのいうとおり』
谷瑞恵/著 幻冬舎 1,650円(税込)
(3)2021年刊『かすがい食堂』
伽古屋圭市/著 小学館文庫 638円(税込)
ことしの新刊小説から3冊選びました。
(1)の主人公は北海道で一人暮らすおもちさん、83歳。
大らかでマイペースな彼女はカラオケ大会に行ったり、空き地に畠をこしらえたりと、楽しく暮らしている。
でも糖尿病が悪化して...。
読みながら親の老後、自分の老後に思いをはせる作品。
(2)は、田舎に引っ越した家族の話。
父親は会社を辞めて主夫となり、母親と娘は都心に通勤&通学、息子は地元の小学校に転校。
バラバラになりかけた一家が、古い習慣やおまじないをいまでも大事にする曾祖母と暮らしながら、少しずつ、お互いへの信頼と愛情を再確認していく。
「そういえば、こんなおまじないがあった」と、自身の小さい頃を思い出す人は多いはず。
(3)は、小さな子ども食堂の話。
祖母が営んでいた駄菓子屋を受け継いだ25歳の楓子は、常連の子どものなかに、食事代わりにお菓子を買う子がいることに気づき、店の奥の台所でその子に食事を提供しようと思い立つ。
やがて、他にも、さまざまな事情を抱える子がやってきて...。
一人一人と真剣に向き合う楓子の様子を時にコミカルに描きながら、"食"とは何かを考えさせてくれる連作短篇集です。
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美)