東洋医学には「未病」という概念があります。未だ病気には至っていない、病院に行くほどでもないけれど、なんとなく不調という状態。それは体が発した、重要なサインかもしれません。
「肌が弱くなりました。唇の皮がカサカサでよくむけてしまい...」。そんな悩みを持つのが『毎日が発見』の読者、A・Kさん(68歳)。
この症状は、どのような"体からのサイン"であると考えられるのでしょうか。東洋医学専門医の上田ゆき子先生に解説していただきました。
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肌は体の先端部。潤いを届けるには...
生まれたばかりの赤ちゃんは見た目もみずみずしくぷくぷくとしていますが、人間は年を重ねるとともに潤いが減り、外見もハリを失ってきます。赤ちゃんのような肌の老人がいないのは、自然の摂理に従い体内での分泌物が減ってくるためで、肌は乾燥しやすく弾力が失われ、ダメージに弱くなります。それらの症状がうんとつらい場合には漢方薬で緩和させるという方法もあり、例えば潤いを補うなら「麦門冬(ばくもんどう)」などがあります。
体に水分があっても、うまく巡らせることができずに、肌が乾燥している場合もあります。
肌は体の中心部から最も離れた先端部です。そこまで水分を送れなければ、肌は乾燥してきます。巡りを滞らせる大きな原因の一つは、「冷え」です。冷たいものを飲み過ぎていませんか。暑い季節には冷たい飲み物でひと息つきたくなりますが、体の中心部が冷え過ぎると体が混乱して調節機能が働きにくくなり、巡りは低下してしまいます。冷えたものを取った瞬間は清涼感が得られますが、少し長い目で見るとかえって体の調子が崩れてしまうのです。
口のまわりのトラブルは胃腸の調子も要チェック
唇のカサつきが気になるようですが、口内炎や舌のぴりぴり感、口の脇の荒れなどを含めて、口のまわりのトラブルは「消化器官」のトラブルと考えられます。消化器官とは、食べ物を入れる口から食道、胃、腸などから排出する肛門までのひと続き。まずは胃や腸に負担をかけていないか、食生活を振り返ってみましょう。「深夜の食事」「甘いものがやめられない」「お嫁さんが孫に作る揚げ物を一緒に食べる」など、思い当たりませんか?
一方、子どもが巣立った後は調理が面倒で、お菓子で食事を済ませている人も意外と多くいます。しかし食べたもので私たちの体の細胞一つ一つが作られます。日々、新陳代謝を繰り返して細胞は入れ替わっているのです。1、2カ月間、食習慣を変えるだけで肌の調子がよくなる人もいます。
現代は、おいしそうなものがあふれ、食でストレスを解消する人もいるでしょう。無理に節制するのは大変なので、平日は「体の資本の食事」、週末は「楽しみの食事」などと意識するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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上田ゆき子(うえだゆきこ)先生
日本大学医学部附属板橋病院総合診療科(東洋医学部門)。ねりま西クリニック 漢方・内科外来。旭川医科大学医学部卒。同大学麻酔科、北里研究所東洋医学総合研究所を経て現職。著書に『女子漢方』(共著、法研)など。