痩せているのに、コレステロール値が高くて血管が詰まる...。原因のひとつ「第3の脂肪」とは?

たった3日間、脂っぽい食事をしただけなのに

BMIと脂肪肝(異所性脂肪)の割合を国別に調べると、BMIが28を超えた肥満型の米国人と、理想的な体型である23くらいの日本人とで、脂肪肝の有病率がほとんど変わらないとする研究結果があります(22)。

60%が脂質でつくられた高脂肪食を食べ、その前後で筋肉細胞内の脂肪を測定した研究では、なんとたったの3日間で、骨格筋の異所性脂肪が30~40%増加し、糖尿病の原因として重要なインスリン感受性が約7%も悪化したという、驚くべき結果でした(23)。たった3日間、脂っぽい食事をしただけでここまでリスクが高まるとは、本当にビックリです。

忘年会シーズンなど、3夜連続の宴会で飲み過ぎ食べ過ぎなんてよくあること。しかしそれだけでも、危険な異所性脂肪は静かにしのび寄ってきます。

近年は、CT撮影で心臓のまわりにある異所性脂肪がよく観察できるようになりました。その量が多いほど、冠動脈にプラークができたり、心筋梗塞のリスクが高くなることがわかっています(24)。

一般に心臓周囲脂肪は肥満とともに増加しますが、心筋梗塞の患者さんの一部には、痩せているのに心臓周囲脂肪が多い人がいます。痩せていても心臓周囲脂肪が多い人は、注意して食と運動を見直し、生活習慣病がある場合は、より厳格にコントロールしてください。

22) "Everhart JE, et al: Fatty liver: think globally. Hepatology 51: 1491-1493, 2010."
23) "Saori Kakehi , Yoshifumi Tamura ,et al. Increased intramyocellular lipid/impaired insulin
sensitivity is associated with altered lipid metabolic genes in muscle of high responders to a highfat
diet.Am J Physiol Endocrinol Metab. 2016 Jan 1;310(1):E32-40."
24) "Konishi M, et al: Association of pericardial fat accumulation rather than abdominal obesity with
coronary atherosclerotic plaque formation in patients with suspected coronary artery disease.
Atherosclerosis 2010; 209:573-578."

 

大島一太

医師・医学博士。大島医院院長、東京医科大学循環器内科学分野、東京医科大学八王子医療センター循環器内科兼任講師、日本看護協会看護研修学校非常勤講師、日本循環器学会心不全療養指導士実務部委員、日本心臓病学会特別正会員・フェロー・心臓病上級臨床医、Japan Cardiology Clinic Network理事など。平成8年東京医科大学卒業、同大学院修了。聖路加国際病院循環器内科、東京医科大学八王子医療センター循環器内科、東京医科大学病院循環器内科に勤務。日本循環器学会や日本心臓病学会、日本不整脈心電学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会など、多くの学術集会で教育講演を行い、シンポジスト、座長、査読委員などを歴任。医学系専門誌への執筆は100編以上、その他、健康誌、スポーツ誌など多数執筆。

※本記事は大島一太著の書籍『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版)から一部抜粋・編集しました。
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