注意! 胃酸の逆流を放置すると、食道がんリスクが高まる

注意! 胃酸の逆流を放置すると、食道がんリスクが高まる pixta_37693784_S.jpg梅雨で湿度の高い時季には、お酢やかんきつ類で風味付けした酸っぱい料理がおいしく感じられますね。でも、食後に酸っぱい液体が口の方へ戻ってくると不快でしょう。このような症状が続くときには、逆流性食道炎の可能性があります。胃酸が食道に逆流することで、胸やけやげっぷなどさまざまな症状につながるのです。逆流性食道炎について、東京医科大学病院消化器外科・小児外科派遣准教授の立花慎吾先生に伺いました。

前の記事「胃に入った食べ物が逆流するのはなぜ? 逆流性食道炎のしくみ(2)」はこちら。

 

胃酸の逆流を放置すると、食道がんリスクがアップ

逆流性食道炎の有無は、内視鏡検査で調べることができます。がん検診や人間ドックの胃内視鏡検査を受けて見つかる人もいます。でも、胃がん検診を受けている女性は全国で4割に満たず、内視鏡検査を受けていない人が多いのが現状です。
「逆流性食道炎では、胃酸によって食道に炎症を起こすだけでなく、食道が胃の細胞に変化するバレット食道、胃の一部が食道の方へ飛び出てしまう食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニアへ移行することもあります」と立花先生。

逆流性食道炎の段階では、胃酸を中和し分泌量を抑え、食道の粘膜を保護するなど、薬による治療と生活習慣の改善が有効です。でも、放置してバレット食道に進行すると有効な治療法はありません。食道がんになるリスクが高いため、定期的な検査が欠かせなくなります。

また、食道裂孔ヘルニアも薬の治療と生活習慣の見直しが基本ですが、症状によっては手術が必要なこともあります。
「逆流性食道炎の症状が軽い段階で、適切な薬の服用と生活習慣の見直しをすることが、食道がんのリスクも下げます。そして、逆流性食道炎の治療後も、再発を防ぐことが必要。適切な生活習慣を続けていただきたいと思います」

胃の入り口からの胃酸の逆流を防ぐには、胃酸が増えやすい食事を見直すことが大切になります。年を重ねると脂っこい食事が苦手と感じやすくなりますが、熱いお茶が好きな方はいますね。濃い味付けを好み、トウガラシなどの辛い薬味を使用する方もいます。でも、食道を守るには、熱い飲み物や熱い料理、刺激物も避けることが無難です。さらに、お酒の飲み過ぎもよくありません。

体内でアルコール分解されて、アセトアルデヒドという毒素に変わりますが、これを分解する酵素が少ない人が日本人には多い。お酒を飲んで顔が赤くなるタイプの人です。このようなタイプの人がお酒を飲むと食道がんの発症リスクが高まり、喫煙と合わさることで約35倍にもなると報告されています。禁酒・禁煙は、逆流性食道炎の患者さんの生活習慣の見直しの上で、とても重要です」と立花先生は説明します。

生活習慣の見直しで食道を守ることが、重篤な病を防ぐためにも大切です。病気を退け、快適な毎日を!

 

【逆流性食道炎の主な治療薬】

薬の種類:胃酸分泌抑制剤
作用・特徴:胃酸が出過ぎないようにする。プロトンポンプ阻害剤(PPI)、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)などがある。

薬の種類:消化管運動亢進(こうしん)薬
作用・特徴:食道に逆流した胃酸を胃に戻す。胃酸分泌抑制剤と併用されることが多い。

薬の種類:制酸剤
作用・特徴:食道に逆流した胃酸を中和する。胃酸分泌抑制剤と併用されることが多い

 

 
●知っておきたい達人のツボ1

バレット食道とは?
食道の粘膜は扁平上皮(へんぺいじょうひ)、胃や腸の粘膜は円柱上皮(えんちゅうじょうひ)といって、食道と胃や腸の粘膜の構造は異なります。ところが、食道の粘膜が胃の入り口から円柱上皮に置き換わってしまうのが、バレット食道です。逆流性食道炎で炎症を起こした食道の粘膜が、胃と同じ粘膜に置き換えられるのです。レット食道は、食道がんに関係する細胞を含んでいるため、食道がんの発症リスクが非常に高いといわれています。

 

●知っておきたい達人のツボ2

食道裂孔ヘルニアとは?
胃の入り口の一部が食道の方へ飛び出す、あるいは、食道と胃のつなぎ目が、胸とおなかを隔てる横隔膜を貫いて飛び出すことを食道裂孔ヘルニアといいます。60歳以上で発症しやすく逆流性食道炎との関連が深いのですが、自覚症状はほとんどありません。

 

次の記事「逆流性食道炎にならないために。気を付けたい食生活&生活習慣(4)」はこちら。

取材・文/安達順子

注意! 胃酸の逆流を放置すると、食道がんリスクが高まる
<教えてくれた人>
立花慎吾(たちばな・しんご)先生

東京医科大学病院消化器外科・小児外科派遣准教授。戸田中央総合病院外科消化管部長。東京医科大学卒。米国留学、愛知県がんセンター中央病院などを経て2018年より現職。食道がんのロボット支援下手術など、最先端医療に取り組んでいる。

 
この記事は『毎日が発見』2018年6月号に掲載の情報です。

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