梅雨で湿度の高い時季には、お酢やかんきつ類で風味付けした酸っぱい料理がおいしく感じられますね。でも、食後に酸っぱい液体が口の方へ戻ってくると不快でしょう。このような症状が続くときには、逆流性食道炎の可能性があります。胃酸が食道に逆流することで、胸やけやげっぷなどさまざまな症状につながるのです。逆流性食道炎について、東京医科大学病院消化器外科・ 小児外科派遣准教授の立花慎吾先生に伺いました。
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逆流性食道炎の原因は生活習慣や加齢など。患者数は増加傾向に
食道は、身長にもよりますが、喉から胃の入り口まで約30cm、食道壁の厚さは4mmほど。胃壁の約7mmと比べて非常に薄い構造です。熱い飲み物を飲むと、胸の辺りがキューッと感じることがありますね。それは、熱さで食道の粘膜がダメージを受けている証しともいえます。
「熱い食べ物や、強いアルコール度数のお酒などが食道を通ると、食道の粘膜は軽いやけどを負ったような状態になります。それを繰り返すと粘膜の細胞が変性し、食道がんになる可能性が高くなるのです。逆流性食道炎で繰り返し胃酸が逆流することでも、細胞が変性しやすいといえます」と立花先生。
脂っこい食事を取ると、それを消化するために胃酸がたくさん出ます。胃の入り口も緩みやすく、たくさん生じた胃酸が逆流してしまうのです。食べてすぐに横になっても、胃の入り口は緩みます。胃に対する腹圧とも関係し、ウエストのきつい衣類を着て胃を圧迫する、あるいは、おなか周りにたくさん脂肪がついているような場合でも起こるのです。
胃の働きは、自律神経にも関係しているため、ストレスで自律神経の働きが乱れたときにも、胃酸の逆流は生じやすくなります。気になる症状がある場合には、消化器科を受診しましょう」と立花先生はアドバイスします。
内視鏡検査で逆流性食道炎と診断された人は、国内で1980年代後半には1%前後でしたが、2005年には7%以上に増えたとの報告があります。放置すると重症化する可能性があるので、少しでも違和感を覚えたら早めに医療機関を受診しましょう。
食道ってどこにあるの?
食道は背骨の手前に位置しています。直径は2~3cmで、長さは約30cm。喉から始まり、左右の肺の間にある縦隔(じゅうかく)という部分を通り、胸とおなかの境にある横隔膜を貫いて胃につながっています。
「逆流」してしまうのはなぜ?
下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)が働いている
下部食道括約筋が働いていない
胃の入り口は、食べ物が入ってくると筋肉(下部食道括約筋)の働きで縮まって胃酸の逆流を防ぎます。しかし、胃の入り口が緩んでしまうと胃酸が食道の方へ逆流します。生活習慣や加齢などで胃の入り口は緩みやすくなり、胃酸の量が多いと逆流しやすくなります。
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取材・文/安達順子 イラスト/堀江篤史
立花慎吾(たちばな・しんご)先生
東京医科大学病院消化器外科・小児外科派遣准教授。戸田中央総合病院外科消化管部長。東京医科大学卒。米国留学、愛知県がんセンター中央病院などを経て2018年より現職。食道がんのロボット支援下手術など、最先端医療に取り組んでいる。