病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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手のじん帯が、部分断裂ないし断裂する
「突き指」
●「RICE処置」を知っておく
バスケットボールやバレーボール、野球など、スポーツを経験していた人ならば、1度はなったことがあるのが「突き指」でしょう。
突き指は、ボールが指に垂直にぶつかったり、指が壁などに当たるなど、外力によって起こる症状で、手のじん帯が部分断裂ないし断裂した状態のことをさします。突き指は主にスポーツをしているときに起こる症状のため、スポーツ外傷に分類されます。
自分の指を見てみるとわかりますが、指には三つの関節があります(親指のみ二つ)。医学的にいうと、いちばん上にある関節を「DIP関節」、真ん中の関節を「PIP関節」、いちばん下の関節を「MP関節」と呼んでいます。
突き指をすると、関節の腫(は)れや痛みが見られます。これは単なる突き指ですが、重症になると伸筋腱(しんきんけん)という指を伸ばすための腱が断裂したり、脱臼(だっきゅう)、骨折に至る場合もあります。
突き指をしたときは指を引っぱるとよいといわれますが、脱臼や骨折をした場合は逆効果になりますので、整形外科を受診して適切な診断を受けるようにしましょう。
突き指をした場合、応急処置として考えられるのが「RICE(ライス)処置」です。RICE処置とは、スポーツ障害の応急処置の基本ともいえるもので、打撲などの際に用いられるものです。RはRest(安静)、IはIce(アイシング)、CはCompression(圧迫・固定)、EはElevation(挙上-きょじょう)のこと。圧迫・固定は、テーピングや添(そ)え木をして指の関節が動かないようにすることで、挙上は、患部を心臓よりも高い位置に上げることを意味します。
ただし、RICE処置のうちでもっとも大切なのはIのアイシングと考えられますので、圧迫・固定はアイシングによる処置の次の段階と捉えるとよいと思います。
アイシングには小型の氷のうが便利ですが、ない場合はビニール袋に砕(くだ)いた氷を入れ、少量の水を入れるとすばやくできます。氷のうの準備がすぐにできそうにない場合は、水道水をかけ続けるだけでも効果があるでしょう。
応急処置が遅れたり、何度も突き指を繰り返していると、指の関節が太いまま固定されたり、関節の可動範囲が狭(せば)まったりします。これはその後に痛みを伴うことは稀(まれ)ですが、後遺症ともいえる症状ですので、突き指が起こってしまったらすばやく処置することが大切といえます。