タバコさえなければ半数に減少!? 禁煙で「肺がん」予防/やさしい家庭の医学

タバコさえなければ半数に減少!? 禁煙で「肺がん」予防/やさしい家庭の医学 pixta_11564127_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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気管支から肺胞に発生するがんの総称
「肺がん」

●死亡者数第1位のがん

人が呼吸をするとき、空気は鼻や口から入り、その先はのどから気管を通って気管支、肺胞(はいほう)に達します。この流れによって酸素が体内に取り入れられ、二酸化炭素が吐き出されることになるわけですが、気管支から肺胞に至る部分が肺と呼ばれ、ここに発生するがんのすべてを「肺がん」と呼んでいます。

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つまり、厳密にいえば、肺がんとは気管支にできたがんと考えることができるでしょう。
肺がんの要因として考えられているのは、何といっても喫煙です。タバコを多く吸う人ほど肺がんに罹かかりやすいともいわれ、喫煙指数(1日の本数×喫煙年数)が600以上の人は要注意といわざるを得ません。一般的に、喫煙者の肺がんによる死亡の危険度は非喫煙者の4~5倍ともいわれています。
 
そのほかにも、肺がんになってしまう要因としては大気汚染や欧米化した食事などにもあるともいわれます。
 
肺がんによる死亡者数は年々増え続けており、1998年にそれまでトップだった胃がんを追い抜き、1位になってしまいました。中高年、とくに男性に多い病といわれますが、これは戦後に多くの男性がタバコを吸っていたことによるもので、彼らが年齢を重ねたことにより、データとして表れているものと見られます。
 
肺がんは治療方法によって、小細胞がんと非小細胞がんに大別されます。小細胞がんは病状の進行が早いため、ある程度進行した状態で発見されることも多く、手術が行なわれることはありません。そのため、放射線療法や抗悪性腫瘍(しゅよう)薬などによって治療がなされます。せきやたん(血痰(けったん))、声のかれ、首や顔のむくみなどが見られたら注が必要です。
 
非小細胞がんは腺(せん)がんや扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がんなどの総称といえ、健診やCT、胸部X線写真などで発見されることがあります。腺がんは肺の末梢(まっしょう)に発生するがんで、喫煙者でなくても発症する場合があります。また、肺がんのうちの約60%がこの腺がんともいわれています。
 
ただし、腺がんに罹るはっきりとした原因は特定されていないのが現状で、早期に発見された場合は手術によって、また、病状が進んでいる場合は放射線治療などが施されます。
 
肺がんの予防としては、やはり喫煙を見直すことが挙げられるでしょう。がん研究会によれば、タバコが存在しなければ理論的には男性で70%、女性で26%(男女合計で58%)の肺がんが減少するともいわれているほどです。また、健診を定期的に受けることによって、早期に発見することも大切です。早期に肺がんとわかれば、手術を受けられる確率も高くなるのです。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)


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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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