『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』 (石黒成治/KADOKAWA)第1回【全3回】
現在、日本では65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。認知症になるリスクを減らすために重要なのは、食事、運動、睡眠などの「生活習慣」に気を付けることですが、見逃しがちな要因もあります。それが『慢性ストレス』。日々の「不安」「イライラ」が脳にダメージを与えているかもしれないのです。 書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』(KADOKAWA)は、消化器外科医/ヘルスコーチである著者・石黒 成治氏が、医学的根拠と、過去に健康に悩んでいた自身の実践をもとに、「ストレスに屈しない」思考法や、運動、食事、生活行動など、生活習慣の予防法を網羅しています。 今回はその本の中から、石黒氏自身が実践してきた「ストレス」をはねのける方法をご紹介します。
※本記事は石黒 成治著の書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』から一部抜粋・編集しました。
腸内環境を改善する
大学病院に勤めていたときはいつもストレスにさらされていたと思います。毎日の手術の緊張感、手術後の患者さんの容態、学生や若手医師に対する指導、学会発表や論文執筆などの締め切りなどが、いつもいつも頭の中をぐるぐる回っていて、ストレスを受け続けていました。しかし実際には日常においてストレスというものを定量的に測定する方法などありません。代わりにさまざまな身体症状や精神症状という形で表に現れてきます。
僕の場合は体の疲れが抜けないとか、異常に入眠までの時間が短いとか、顔や背中、頭皮の発疹などがいつも出ているなどでした。「術後の人が、大きなトラブルになるのではないか?」という考えや、「金銭や人間関係の不安」や「自分はがんになるのでは?」という心配が急に頭の中に浮かんだり、いつもイライラしていたので、何か気に入らないことがあると声を荒らげるようなことも珍しくありませんでした。
当時は思考が硬直しており、自分の考えが常に正しい、それ以外の正解はあり得ないと思っていました。ほんの些細なことであっても、自分の行動や言動に対する反発と受け取ると、相手を打ち負かすまで徹底的に言葉で論破していました。
今にしてみると、当時の僕は相当嫌な人と思われていたに違いありません。ですが、現在では自分でもびっくりするくらい温厚だと思いますし、家族からも「変わったね」と言われます。これは意識的に変えようと思ったわけではありません。5年ぐらいかけて、自然に穏やかな考え方をする思考になっていきました。
特別なカウンセリングを受けたり、自己啓発の書籍に出合ったわけではなく、健康的なライフスタイルを送るようになってから、自然と変わっていきました。ストレスに対する反応は、腸内環境の影響を多分に受けます。大学病院勤務時代の僕の食生活は、チョコレートなどのお菓子、揚げ物やサンドイッチばかりを食べる状態で、排便も3日に1回程度でしたから、かなり悪い腸内環境だったはずです。
そこから食事を変えていくにつれて、体調が変わると同時に、メンタルがどんどん安定していきました。
医師として病院で勤める以外の働き方もしてみたいという積極的な気持ちや、新しいことを学ぶ意欲が復活してきました。そして、人間関係に対する取り組みも自然と変わり、さまざまな学びを得るにつれて、その考え方を言語化できるようにもなってきました。
ストレスを過剰に感じないようにするために、物事に対する自分自身の考え方を変える、ずらす手法を心理学で「リフレーミング」と呼びますが、僕が自然と身につけたリフレーミングの考え方を、健康スクールでお話しすると、多くの生徒さんからストレスの減る経験ができていると報告を受けました。僕の考えるストレスを生まない考え方について少しお話ししたいと思います。