病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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感染によって体に症状が現れること
「感染症」
●手洗いやマスクの着用で予防を
細菌やウイルス、カビ(真菌)、寄生虫、クラミジア、リケッチアなど、自然界にはさまざまな微生物が生息しています。微生物の中で人や動物に病気をもたらすものを「病原体(病原微生物)」と呼びますが、微生物のすべてが病原体になるわけではなく、人や動物の体内に常にあって健康を維持するのに役立っているものもあります。
感染とは、この病原体が体内に侵入して増殖する状態をさします。感染により、体に症状が引き起こされた状態を「感染症」といいます。
なお、病原体が人から人へ、直接的ないし間接的に伝播(でんぱ)し、重い症状を引き起こす感染症は「伝染病」と呼ばれることもありました(1999年以降、感染症という名称に変更)。
人が病原体に感染し、症状が現れるまでの間を「潜伏(せんぷく)期」といい、感染しても症状が軽くて気付かない場合(あるいは症状が認められない場合)は「不顕性(ふけんせい)感染」と呼んでいます。病原体を体内に保持している人を「キャリア(保菌者)」といいます。
病原体が人や動物の体内に侵入する経路(感染経路)は、直接的なものと間接的なものの二つがあります。 直接的な感染経路としては、皮膚の傷口や性行為などによって感染する場合[直接接触感染。破傷風(はしょうふう)など]、せきやくしゃみなどで病原体が飛沫(ひまつ)とともにまき散らされ、口や鼻などから体内に侵入して感染する場合[飛沫感染。風疹(ふうしん)、インフルエンザなど]、キャリアの妊婦から胎盤(たいばん)を通して感染する場合[母子感染。先天性風疹症候群など]が挙げられます。
間接的な感染経路としては、せきやくしゃみによってまき散らされた飛沫が空中で蒸発してできる飛沫核を吸い込むことによって感染する場合(空気感染。結核、麻疹など)、病原体を持ったダニや蚊などによって感染する場合(マラリヤ、ペストなど)、排泄(はいせつ)物や分泌物(鼻水、たんなど)、食器、ドアのノブなどを介して感染する場合(間接接触感染)などが挙げられます。
感染症の予防としては、これらの感染経路から考えると、手洗いやうがい、マスクの着用、衛生的な食品の取り扱いなどが挙げられますが、そのほか、予防接種もあります。ワクチンは人の体に病原体に対する免疫をつくることを目的とするものですが、すべての病原体に対してワクチンが用意されているわけではなく、また、予防接種を受けたあとに副反応という好ましくない変化が起こることも予想しておかなければなりません。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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