病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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心臓の働きが悪くなったときの状態
「心不全」
●急性心不全と慢性心不全
心臓の役割は、血液を全身に送り出して酸素を供給することにありますが、心臓の働きが悪くなったときの状態を「心不全」と呼びます。この状態が急激に起こった状態を急性心不全といい、徐々に心臓の機能が悪くなっていく状態を慢性心不全といいます。
誰かが急に亡くなった場合の死因として、急性心不全と公表されることがありますが、これは前述のような厳密な意味での心不全の場合だけでなく、死因が特定しにくい場合にも用いられることがあるようです。
心不全になると、心臓から血液を送り出すことができないばかりでなく、心臓へと戻るはずの血液が全身に残ったままになってしまいます。手足がむくんだりするのは、このことによります。
また、左心室の手前にある肺に血液がたまり、肺水腫(はいすいしゅ)[肺うっ血]の状態になると、突然息苦しくなって呼吸の回数が増え、ピンク色の泡状のたんが出たりします。
慢性心不全になると、体を動かすたびに息切れがし、むくみや胸水(きょうすい)が見られるようになります。胸水とは、肺を包むように存在している胸膜(臓側胸膜)と胸壁の内側にはりついた胸膜(壁側胸膜)の間にたまった液体成分のことです。胸水が増えると、胸に違和感が出るようになり、痛みを感じるようになります。
また、慢性心不全に罹(かか)った場合、軽いせきをするようになりますが、これはかぜの症状と似ているため、気付かないこともあり得ます。そのうち、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸をするようになり、心臓喘息(ぜんそく)の状態に移行していきます。
心不全の薬には、利尿剤が効果を発揮することがあります。先述のように、心臓が弱まると体中に水分がたまっている状態になりますので、それを排出させることが必要になるわけです。
それに加えて、心筋の収縮力を強める強心薬や、血管を広げて心臓への負担を減らす血管拡張剤などが用いられることになります。
体に相談しながらではありますが、心不全に罹っても適度に運動することは大切なこととされます。また、かぜを引いたりすると心臓に負担がかかりますし、長時間お風呂に浸かるのもよいこととはいえません。
喫煙や飲酒、肥満など、心臓への負担を軽減することに気を配るのも、心不全の症状を進行させないことには重要になってくるでしょう。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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